試作レスが加速――現実とCGを融合「MRシステム」キヤノンが発売:製造ITニュース
キヤノンが、独自映像技術を活用した設計・製造業務ソリューション「MRシステム」を発売する。現実と仮想(CG)を違和感なく融合させるこの技術を製品設計に活用することで、試作レスや開発期間短縮に貢献するという。
キヤノンは2012年6月18日、現実と仮想(CG)を違和感なく融合させる映像技術「MR(Mixed Reality:複合現実感)」を用いた設計・製造業務ソリューション「MRシステム」を2012年7月下旬から発売すると発表した。
MRは同社が1997年から研究開発を進めてきた技術。位置・姿勢センサーやビデオカメラを備えたHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を体験者が装着することで、現実の映像と仮想CG映像をシームレスに合成する。HMDに使われている自由曲面プリズムは同社のレンズ設計・加工技術が応用されているほか、体験者視線とカメラ視線の光軸一致技術、リアルタイムで高精度な位置合わせ技術など、同社独自の光学技術が生かされているという。
目の前に自分の視点に応じたCG映像が現れ、近づいたり遠ざかるといった現実の動作に対応して製品映像が大きくなったり全体像が見渡せるほか、製品を回り込んで見るといったことも可能。CG映像は実スケールでの立体映像表示が行えるため、自動車や航空機といった大きなサイズの製品でも現実世界との融合が容易に行えるという。
MRシステムの主な特徴は以下の3つ。
(1)実寸大の臨場感(コスト削減効果)――現実のスペースにあたかもそこにあるように仮想世界(情報)を重ね合わせることが可能(例:仮想のモックアップを実寸感覚で体験するなど)
(2)体験者の自由な視点に追従(開発期間短縮)――現実世界と仮想世界の位置を正確に重ね合わせるため、体験者は姿勢を変え、自分の見たい角度から仮想物を観察することが可能
(3)インタラクティブな体感(直感的な判断)――現実と仮想が相互に作用することで、操作性、表現力を高め、直観的な判断が可能になる
同社では製品のライフサイクル短縮化が進む近年の製造業に向け、設計時のMRシステム活用を提案する構え。「ユーザーの姿勢の変化や動きに瞬時に対応する実寸大の3次元CGを用いて、製品のデザインや操作性の評価などが可能。これにより試作回数を削減でき、開発期間の短縮に加えてコストや環境負荷の低減に貢献できる」(同社)。
当初のターゲットとしては、製造業(設計・製造CG・CAD)のほか、建築・土木や情報サービス(イベント、展示会)となど、3次元データを利用する同社の業務販売パートナーを中心に訴求していく構え。国内市場では、キヤノンITソリューションズが主体となって販売するという。
なお、2012年6月20〜22日に東京ビッグサイトで開催される「第20回 3D&バーチャルリアリティ展(IVR)」の同社ブースで、MRシステムが出展される予定。
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