車載ソフト開発プロセスの上流から下流まで網羅、dSPACEがデータ管理ツールを投入:ISO26262
dSPACEが発表した新ツール「SYNECT」は、車載ソフトウェアの開発に関わるさまざまなデータを管理できる。2012年9月末までにテスト関連のデータを管理する機能が利用可能になる。その後も順次機能を拡張する予定だ。
dSPACEは、東京都内で開催したユーザー会「dSPACE Japan User Conference 2012」(2012年6月8日)において、車載ソフトウェアの開発に関わるさまざまなデータを管理するツール「SYNECT」を発表した。まず、2012年9月末までに、車載ソフトウェアの各開発段階で行ったテストの測定結果や条件などを管理する機能が利用可能になる。2012年10〜12月には、モデルベース設計や適合プロセスなどで利用するパラメータを一括して管理する機能が追加される。2013年以降も、これらの他のデータを管理する機能を追加する予定だ。
SYNECTは、車載ソフトウェアの開発プロセスの上流から下流まで、関連する技術者が扱うさまざまなデータを一括して管理するためのツールである。dSPACEが2011年11月に永久ライセンスを取得した、スウェーデンのSystemiteが開発したデータ管理プラットフォーム「SystemWeaver」をベースに開発する。SystemWeaverは、既にある自動車メーカーで派生車種(バリエーション)開発時の情報管理に採用されており、10年以上の実績があるという。
dSPACEの車載ソフトウェア設計/試験ツール群の他に、The MathWorksのモデルベース設計ツール「Simulink」や「Stateflow」、要件設計/管理ツールであるIBMの「Doors」やPTCの「Integrity」といった他社ツールとのインタフェースも用意する。
最新の車載システムは、複数のECU(電子制御ユニット)をネットワークで接続して1つの機能を実現するなど、ソフトウェア構成が極めて複雑になっている。こういった複雑化した車載ソフトウェアを開発する場合、開発プロセスの上流に位置する自動車メーカーが決めた仕様変更を、サプライヤ側でのソフトウェア開発や実装の業務に対して素早く的確に反映することは困難であり、開発期間が長大化する原因にもなっていた。ECUの試験についても、仕様変更に合わせて試験条件を適切に変更しなければ、正しい試験を行えなくなってしまう。
さらに、自動車向け機能安全規格であるISO 26262に対応した車載ソフトウェアの開発プロセスを構築する際にも、仕様変更や、それに合わせた車載ソフトウェアの改変、テスト条件の変更を追跡するためのトレーサビリティを確保する必要がある。
これらの需要に応えてdSPACEが開発したのが、今回発表したSYNECTである。
dSPACEでHead of Product Managementを務めるRainer Otterbach氏は、「今後は、車載ソフトウェアの開発において、ソフトウェアモジュールや制御モデル、テストシナリオなどを再利用する機会が増えるだろう。そのためにも、車載ソフトウェアの開発に関連するデータをより効率的に管理する必要が出てくる。従来の車載ソフトウェア開発では、ファイルベースでデータを管理していたが、SYNECTはリレーショナルデータベースを使っているので、より効率的にデータが管理できるようになる」と述べている。
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