バイオマス由来の合成ゴムを味の素とブリヂストンが開発、2013年度に事業化を判断:旨み成分は入っていません
味の素とブリヂストンがバイオマス由来の合成ゴムを製造する技術を開発した。2013年度中に事業化判断を行う計画である。
味の素とブリヂストンは2012年5月31日、バイオマスを発酵させて製造したイソプレンを使って、タイヤ用合成ゴムに用いられる高シスポリイソプレン(IR)を合成するための基礎技術を開発したと発表した。今後は、基本生産プロセスの構築や特許出願を進めた上で、2013年度中に事業化を判断する計画だ。
バイオマスを発酵させてイソプレンを製造するプロセスは味の素が、この発酵イソプレンを精製し、重合触媒を用いてIRに合成するプロセスはブリヂストンが担当した。今回の発表では、バイオマスに含まれている糖質を原料として発酵イソプレンを製造している。味の素によれば、「今回は研究室レベルでの開発成果であり、バイオマスそのものを発酵させてイソプレンを得たわけではない。別途開発中のバイオマスを発酵させるための技術と融合することで、バイオマスから発酵イソプレンを生産する技術を実用化できるようになる」という。
味の素は、アミノ酸の生産などで高度な発酵技術を有している。一方、ブリヂストンは、世界最大のタイヤ供給メーカーであり、重合触媒を用いたポリマー合成で高い技術を持つ。両社は2011年6月に、それぞれの技術を活用した、新しいゴム原料およびそれを用いた合成ゴムの開発に関する共同研究契約を締結している。約1年間で基礎技術を確立したことになる。
タイヤの原材料であるゴムは、主に天然ゴムと合成ゴムに分けられる。ゴムの木の樹液に含まれるポリイソプレンを主成分とする天然ゴムに対して、合成ゴムは石油から精製するナフサを原料としている。世界的な自動車市場の拡大に合わせてタイヤ需要も増加しているが、天然ゴムの生産量には限りがあり、石油由来の原料を使う合成ゴムも将来的に安定供給が可能とはいえない状況にある。発酵イソプレンを使ったIRを実用化できれば、ゴムの木と石油以外に、バイオマスもタイヤ用のゴム原料として選択できるようになる。
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