戦略と戦術は似て非なるもの。その違いと連続性を整理しよう:リサーチペーパーでひも解くS&OP(1)(2/3 ページ)
「せっかく戦略を立てたのに一向に実現しないじゃないか!?」という悩みは多くの企業が抱えている問題。それは戦術に失敗しているからなのです。
3.S&OPとBSCの連携
3.1 BSCの基礎と戦術マネジメントの関係は?
BSCは、米国の管理会計学者であるロバート・キャプラン教授と経営戦略コンサルタントのデビット・ノートン氏により1992年に発表されたマネジメント手法です。
BSCは、戦略マネジメントシステムとして、次の特徴を持っています。
- 4つの視点(財務、顧客、業務プロセス、学習と成長)からバランス良く業績を評価する
- 従来のマネジメントシステム(予算管理・業績評価制度・報酬制度)と戦略との整合を図る
- 企業の戦略を業務活動へと明確に落とし込むための企業を変革する枠組みを提供する
しかし、BSCにおいても、経営と業務のギャップ解消という点は、同様に克服すべき課題となっていました。そこで、キャプランとノートンは、2008年の著書(「戦略実行のプレミアム」)の中で、「戦略計画と業務計画とのクローズド・ループ・マネジメント・システム」を発表し、この課題に対する解決策を提示しました。
「戦略計画と業務計画とのクローズド・ループ・マネジメント・システム」では、まず組織に展開・連携された戦略を具体的に業務に落とし込むための仕組みとして、一連のマネジメント・サイクルを提唱しました。
戦略の策定→戦略の計画→組織の展開と連携→業務の計画→実行→モニタリングと学習→戦略の検証と改造
また、マネジメント・サイクルを構成する6ステージのうち、後半3ステージ(「戦略の組織への展開と連携」「業務の計画と実行」「モニタリングと学習」)に関する主要な構成と評価プロセスを定義しています。
しかし、前項でもお話した「戦術マネジメント」については「戦略計画と業務計画とのクローズド・ループ・マネジメント・システム」では明確な位置付けがなされていません。
そこで今回は、特に「業務の計画」「モニタリングと学習」における戦略面(策定/見直し)と戦術面(戦略の実行)との役割やつながりに着目して、下図の「戦略と戦術の統合マネジメントシステム」を基に説明を進めます。
3.2 BSCを補い、戦術レベルの情報共有と意思決定を担うS&OP
「戦略と戦術の統合マネジメントシステム」のうち、「戦術の計画」「戦術のモニタリング」において、特に重要な役割を果たすと考えられるのが、S&OPです。
S&OPは、トップマネジメントと機能部門のミドルマネジメントが参画して、製品/サービスの需要と供給とを継続的にバランスさせる戦術レベルの情報共有と意思決定プロセスです。
S&OPは、戦略と業務とをつなぐ「戦術マネジメント」の役割を果たしています。
- 主に「戦略の計画」、「組織の展開と連携」「(戦略の)モニタリングと学習」「戦略の検証と改造」といった「戦略のマネジメント」を担うBSCとは、互いに補完し合う関係にあります。
- 中期レベルの需要供給計画を、短期の業務スケジュールに展開します。また業務活動実績を受け入れ、必要な場合には戦略へフィードバックを行います。
では、経営と業務との連携を図るため、S&OPは、具体的にどのような仕組みを持っているのでしょうか?
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