FJPSとは? 富士通がモノづくりノウハウを丸ごと提供へ:製造マネジメントニュース
富士通は、ラインの自動化や解析、生産性評価などのモノづくりのノウハウを丸ごと外販するサービスをスタートする。自動化とプロセス革新で日本のものづくりを支えるという。
富士通は2012年5月8日、同社の生産方式やノウハウ、各種ツールを外販するサービスを発表した。サービスのコンセプト名称は「ものづくり革新隊」。
具体的には「ものづくりエキスパートサービス」「ものづくりツール」「ものづくり受託サービス」の3つを提供する。3つのサービスはそれぞれ次の通り。
1. ものづくりエキスパートサービス
自社が持つ現場改善のプロを派遣するサービス。分野ごとに複数のテーマを設定している。「設計革新エキスパートサービス」では、3次元CAD図面上でのレビューと課題つぶし込みや仮想試作を利用した組み付け検証などを行う。「生産革新エキスパートサービス」では、仮想製造ラインシミュレーターを利用した製造ライン評価などを行う。また、「設計/生産連携エキスパートサービス」では、生産の効率化を念頭に置いた設計を推進する。
上記3サービスは2012年10月から提供する。これに加え、2013年にはマーケットニーズ情報と設計情報の連携に関するエキスパートの派遣も行う予定。
2. ものづくりツール
ソフトウェアだけでなく、製造装置などのハードウェアも富士通独自のカスタマイズを付加したものを提供していく。
自動化設備、生産ラインの構築、保守サービスおよび、ポータブル端末を利用した製造現場最適化製品を2012年10月から提供する。2013年には生産設備関連の機器を拡大する予定。
3. ものづくり受託サービス
「ものづくり受託サービス」では、解析業務(EMC解析、熱解析など)の受託や工場のビジネスプロセス最適化(BPO)、機器の保守やGP4によるシミュレーション業務の代行を行う。
解析や品質検査などの専門業務の受託を2012年10月から開始する。副資材購買などの工場運用のシェアードサービスは2013年1月から提供予定。2013年以降で随時受託業務を拡大するとしている。
モデル工場で練り上げたプロセスと富士通生産方式の提供
富士通は企業向けITシステムを構築するITベンダーである一方で、モノづくり企業としての側面も持つ。スーパーコンピュータやUNIXサーバ機器、携帯電話端末、ラップトップコンピュータなどのエレクトロニクス製品の製造ノウハウを多く蓄積している。
生産方式については、「当社全体で、2004年からトヨタ生産方式(TPS)を導入している。TPSをベースに自社ソフトウェアツール類も活用し、独自に『富士通生産方式(FJPS)』を構築しており、その経験を生かしたコンサルティングサービスを進めていく」(富士通 民需ビジネス推進本部 本部長 安楽孝氏)としている。
同社では設計開発部門向け、製造部門向けにソフトウェアツールを持っている。自社製品の設計・製造で使用しているデジタルモックアップツール「VPS」や生産工程シミュレータ「GP4」、PLMシステム「PLEMIA」などのソフトウェア製品やグローバルでの統合PSI管理ソフトウェア「GLOVIA Enterprise」などの製品ラインアップがある。
サービス提供に際しては富士通社内の現場改善ノウハウを持つ技術者がコンサルティングを行い、最適な組み合わせで製品提供を進めるとしている。
「場合によっては、既存他社システムとの連携を推奨することも考えられる。他社製品との連携機能は既に自社内で検証中」(富士通 ものづくり推進本部 本部長 岩渕敦氏)
今回のサービス立ち上げに際して、複数の工場を「モデル工場」に設定、各工場で標準化されている業務プロセスをベースにした改善提案を行っていくという。
現在モデル工場に設定されているのは、次の3工場で、それぞれ特性が異なる。今後随時モデル工場を拡大していくとしている。
富士通ITプロダクツ サーバ機器、プリント基板ユニット、京などのスーパーコンピュータ製品の製造。TPSをベースにした生産性革新を推進。RFIDを利用した「ピンポン玉かんばん」やスマートフォンを利用した現場改善システムの運用を行っている。
富士通周辺機器 スマートフォン、スレートPC、ディスプレイ装置などを製造。開発部門と製造部門が共同で製造ラインの自動化を推進している。適切なポイントでの自動化を進めており、「国内工場ながら中国工場と同等レベルの運営コストを実現している」(安楽氏)という。
富士通 産業ソリューションビジネスグループ長 執行役員常務 花田吉彦氏 「サプライチェーン、エンジニアリングチェーン全体を通して、一貫して自社製品として提供できるのは富士通だけ。自社での運用実績やノウハウがある強みを生かして日本のモノづくりを支える」とコメント
島根富士通 「出雲モデル」のノートPCの基幹工場。TPSをベースにした生産性革新を進めている。プリント基板の自動実装を実現。現在は間接部門の改善を推進しており、同社のBPOサービス展開のベースとなるプロセスを構築している。
同サービスの対象は国内準大手以上の組み立て系製造業全般としている。TPSを基にした生産性革新は広く適用できるものだとしているが、現在のモデル工場がエレクトロニクス系中心であることから「まずはエレクトロニクス系メーカーにアプローチしていきたい」(富士通 産業ソリューションビジネスグループ長 執行役員常務 花田吉彦氏)としている。
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