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日の丸金型は東南アジアへ。再び世界一を目指す経済研究所 研究員は見た! ニッポンのキカイ事情(7)(2/4 ページ)

もう、既に日本の金型は世界一ではない……。国内の顧客にばかり目を向けず、海外にも飛び出そうと取り組む日本金型工業会の取り組みとは。

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2.日本の金型企業、生き残りへの問い

 なぜ、日本の金型産業は国際競争力を失いつつあるのでしょうか? この問いに対しては、「自動車などユーザー産業の海外展開」「円高による価格競争力の減退」「工作機械の発展による技術的な優位性の喪失」……といった外部環境の変化や技術革新に起因する回答が提示されています。その中でも、個々の金型企業の経営に密接にかかわる要因として、

「日本国内の顧客≒日本国内の市場に依存しすぎてしまった」

ということが挙げられるでしょう。

 日本は1億2000万人という世界でも指折りの人口を誇る国で、巨大な内需が存在しています。加えて、世界的な競争力を誇る完成品メーカーや部品メーカーが幾つも操業し、国内での量産を志向していたのです。

 これは、金型企業にとって、国内市場だけに目を向けていても、自社事業の維持が可能だったことを意味します。国内の顧客のみを相手にして、事業が成り立つのならば、わざわざ余分なコストやリスクを負担して、言語・取引慣行・法制度が異なる海外の企業と取引する必要もありません。従業員も少なく、経営資源に限りのある中小の金型企業ならばなおさらのことです。

 少々、皮相的な言い方をすれば、経営者によるこうした合理的な判断が結果的に国内市場への過度な依存を引き起こしたことを指摘しなければいけないでしょう。

 ところが、冒頭に述べた近年の経営環境の急激な変化は、金型企業の目をいやおうなく海外に向かせることになったのです。

 2008年に狭山金型製作所(射出成形金型:埼玉県入間市)の大場治社長が欧州最大の金型展示会「ユーロモールド(EuroMold)」を視察したことが、日本の金型産業が新たな一歩を踏むきっかけとなります。


海外展示会に参加する狭山金型製作所の大場治社長:JAPANブランドを想起する出展方法を常に模索されています

 大場社長はその展示会場で、

「中国や韓国の金型企業が集団で、1つのホールを借り切って展示している」

「その一方で、日本の金型企業は一社も展示会に出展していない」

ことにがく然とします。


狭山金型のモノづくり現場:ここから精度の非常に高い金型が生み出されています

 ちょうど、サブプライム問題とそれに続くリーマンショックが世界経済を震撼させ、日本でも戦後最長の好景気「いざなみ景気」が終わりを告げるなど、企業の眼前を暗雲が覆わんとしているときでした。

 こうした大場社長の強い想いに、国内の主要な金型企業で構成される日本金型工業会の若手経営者たちが呼応していったのです。工業会の活動を通して、金型企業の経営者の多くは常日頃から、公式・非公式の交流をもたれています。そして、後述する昭和精工(プレス金型:横浜市金沢区)の木田成人社長のように、業種や立場は異なれど、いずれも、

「今後、日本の金型産業・企業がどのように生き残っていくべきか」

ということに強い問題意識を持つ方たちでした。


昭和精工の木田成人社長

昭和精工の精密な金型づくりを支えるトライ用プレス

 加えて、同工業会には、2代目、3代目の経営者が多く、「失われた20年」と呼ばれる、父親の世代とは明らかに異質な経営環境の中で悪戦苦闘しつつも、自分たちが継いだ企業と金型づくりを次世代に継承しようと強く志向していたのです。

 そういった若手の経営者の方々が、

「自分たちの日々のつながりを土台に、今後の日本の金型づくりを考える“場”を作ろう」

「そのメインテーマの1つとして、海外市場参入を取り上げていこう」

という共通した思いを抱くようになったのです。

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