「シェアトップは必ず奪還する」、フリースケールが車載マイコンの国内展開を強化:日本法人トップが明言
フリースケール・セミコンダクタは、車載マイコンのトップシェア奪還に向けて、国内顧客向けの取り組みを強化する方針を打ち出した。
Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは2012年3月、都内で記者会見を開き、国内市場における車載ICの事業戦略を説明した。同社社長のディビッド M. ユーゼ氏は、「ルネサス エレクトロニクスに奪われた車載マイコンのトップシェアの座は、何年かけてでも奪還する。そのためにも、国内市場における車載マイコンの売上げ拡大は必須条件になる」と語り、国内顧客向けの取り組みを強化する方針を打ち出した。
会見の冒頭でユーゼ氏は、東日本大震災が発生して以降も車載ICの安定供給を継続し、顧客の生産活動に影響を与えなかった実績を強調した。同社は仙台に保有していた半導体工場でマイコンやアナログIC、センサーを生産していた。震災によって仙台工場は大きな被害を受けたものの、同工場の生産品目は米国アリゾナ州のチャンドラーと同テキサス州のオークヒルの半導体工場に移管され、顧客への安定供給を維持することができた。「仙台工場を2011年末までに閉鎖する予定だったことも、即座に生産移管を実現できた要因の1つになるだろう」(同氏)という。なお、被災した仙台工場は、当初の予定を前倒して2011年4月に閉鎖されている。
またユーゼ氏は、車載マイコンの世界シェアについて、「フリースケールは、2009年まで18年間連続でトップだった。しかし、2010年に合併によって発足したルネサス エレクトロニクスにトップの地位を奪われてしまった」と説明する。2010年時点でのシェアは、ルネサスの約40%に対して、フリースケールは20%強にとどまっている。同氏は、「世界の自動車の約30%を生産している国内自動車メーカーの車両に、当社のマイコンがほとんど採用されていないことがこの差を生んでいる」と指摘する。
しかし、東日本大震災を機に、国内自動車メーカーとの間で協力関係が深まっているという。ユーゼ氏は、「生産安定を目的とした複数購買の取り組みを国内自動車メーカーが加速させている。実際に、国内自動車メーカーの購買担当者が、日本法人や米国本社に直接来訪するようになった。このようなことは震災以前にはなかった。また、ある国内自動車メーカーとの間で十数年ぶりに取引を再開することができた」と手応えを感じている。
国内顧客向けの取り組みとしては、「安定供給」、「合理的なコスト」、「品質」、「パートナーシップ」という4つの施策を軸に進める。ユーゼ氏は、「私個人としては、10年後の日本法人の売上高を現在の3倍まで引き上げることを目標にしている。この目標を達成できれば、ルネサスとのシェアの差は大幅に縮まっているはずだ」と述べている。
関連記事
- モーター搭載ボディシステム向けの車載マイコン、新コア「S12Z」を採用
高集積のアナログ回路を有する車載16ビットマイコン「S12 MagniV」の第2弾製品である。「S12」をベースに機能を強化/拡張した「S12Z」をプロセッサコアとして搭載している。 - フリースケールがロボットカー競技会を国内開催、優勝チームは世界大会へ
全世界で約1万5000人の大学生が参加するロボットカー競技会「フリースケール・カップ」の国内大会開催が決まった。優勝チームは、各国代表と世界一を争うチャンピオン大会に出場する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.