「平常時の取り組みが災害時に役立つ」、通行実績情報マップの成果と課題が示唆:ITSの防災活用に向けて(3/3 ページ)
ITS Japanは2012年3月11日、ITS(高度道路交通システム)の防災活用に向けた会議を開いた。同会議で報告された、ホンダ、千葉国道事務所、国土地理院の東日本大震災における取り組みから、ITSを災害時に役立てるために必要な施策が見えてきた。
手作業が多過ぎる
最後に、ITS Japanで交通物流プロジェクトの担当課長を務める八木浩一氏が、自動車・通行実績情報マップの成果と課題を報告した。
先述した通り、ホンダは3月12日の10時30分に通行実績情報マップを公開している。実は、ITS Japanも、3月12日の1時30分にはプローブ情報の提供を民間各社に要請していた。
4社のプローブ情報を統合した自動車・通行実績情報マップを公開したのは3月19日の10時である。統合作業に約1週間かかったことになる。八木氏は、「1週間もかかったという批判もあるかもしれないが、各社で異なる形式のプローブ情報を1週間で統合できたことは、震災後の混乱の中ではかなり迅速な対応ができたと考えている。短期間で済んだのは、震災以前にプローブ情報の統合実験などの取り組みを行っていたからだ。災害時の対応では、こういった平常時に行っている取り組みをうまく活用することが重要になると実感した」と述べる。また、4社のプローブ情報を統合することにより情報の精度は飛躍的に高まったという。
自動車・通行実績情報マップは、国土地理院が集約した通行規制情報と併せて、さまざまな場面で利用された。八木氏は、「しかし、これらの情報を集約する際に、手作業が必要なプロセスが数多く存在した。これらをシステム化/統一化し、スムーズに情報共有できるようにしなければならない」と提案した。
4者の報告では、「平常時の取り組みがあってこそ、災害時にも活用できる」という点で共通している。ホンダのインターナビが通行実績情報マップを即時公開できたのは、東日本大震災以前の地震でも取り組みを行っていたからだ。ITS Japanが4社のプローブ情報を1週間で統合できたのも、それ以前の統合実験がなければより多くの時間を要しただろう。一方、千葉国道事務所や国土地理院の報告からは、通行規制情報の共有を十全でなかった理由が、情報共有のための体制、システム、人材が平常時から運用されていなかったためであることが分かる。
「通行規制情報については、日本道路交通情報センター(JARTIC)と契約しているホンダはインターナビ経由で配信できた。しかし、GoogleはJARTICと契約していないため、Googleの通行実績情報マップには通行規制情報を載せられなかった」(ホンダの今井氏)という指摘がある通り、壁はまだ数多く存在している。災害時の交通網に関する情報を迅速かつ広く共有できるようにするためにも、東日本大震災で得た教訓を無駄にしてはならない。
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