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インタビュー

「コンセプトモデル」が次代の製品を創造する――シチズンのモノづくり麻倉怜士のモノづくりジャパン(1/3 ページ)

展示会を賑わす「コンセプトモデル」は、モノづくりにおいてどんな位置付けなのだろうか。長年モノづくりの現場を見てきたデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏が、GPS腕時計「SATELLITE WAVE」などコンセプトモデルを意欲的に発表しているシチズン時計を取材。“シチズンのモノづくり”を探る。

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コンセプトモデル「Eco-Drive SATELLITE WAVE」

 スイスのバーゼルで本日2012年3月8日から世界最大の時計見本市「BASEL WORLD(以下、BASEL)」が開催される。世界中の時計ファンが注目するこの展示会だが、昨年2011年のBASELでは、シチズン時計(以下シチズン)が出展したコンセプトモデル「Eco-Drive SATELLITE WAVE」が大きな話題を呼んだ。

 SATELLITE WAVEは地球を周回する24基のGPS衛星のうちの1基から日付信号と時刻信号を受け取り、自動的に正確な時刻に修正する。60度間隔となる6種類の軌道を周回するGPS衛星群によって、地上からは常に6個以上のGPS衛星が見える。光を動力に変換するエコ・ドライブを搭載したSATELLITE WAVEは「“光が注ぐ限り”地球上のどこにいても正確な時を刻み続ける」というわけだ。2012年3月5日にはセイコーウオッチも同様の商品を発表(→EE Times Japanの記事を参照)するなど、GPS腕時計の市場がにわかに立ち上がってきている。

 シチズンは2012年3月8日に開幕したBASELで、同社のプロダクトポリシー「技術と美の融合」を象徴とした女性用コンセプトモデル2モデルを発表した。「Eco-Drive Luna(エコ・ドライブ ルナ)」は、文字盤に配された60粒のダイヤモンドの中の1粒が光ることで秒を示す。また「Eco-Drive Nova(エコ・ドライブ ノヴァ)」は、光が球面ガラスの表面に沿って時計の内側から浮かび上がることで時刻を表示する。両モデルとも、同社独自の光発電技術「エコ・ドライブ」に、自らも光を発することで時を知らせるという演出を組み合わせることで、今までのコンセプトモデルにはない光の表現を提案している。

エコ・ドライブ コンセプトモデル 2012

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 シチズンはここ数年、こういったコンセプトモデルを意欲的に発表している。そして特徴的なのはそれを単なる“コンセプト”に終わらせず、実際の製品へと具現化している点だ。例えばSATELLITE WAVEは、2011年3月のBASELの発表から半年後の同年9月に発売している。それ以前のBASELで発表したコンセプトモデル群も、お披露目から数カ月〜2年後ぐらいには製品化されているものが多い。

 コンセプトモデルとは、シチズンのモノづくりにおいてどんな位置付けなのだろうか。モノづくりの現場を長年見てきたデジタルメディア評論家の麻倉怜士氏がSATELLITE WAVEの開発者へインタビューを実施。このコンセプトモデルを紐解くことで“シチズンのモノづくり”について探ってもらった。話をうかがったのは、シチズン時計 技術開発本部 開発センター 時計開発部 システム開発課 課長の八宗岡正氏(ムーブメントのシステム関係、アンテナ、回路などの技術担当)、マーケティング本部 第一商品企画部 商品企画課 グローバル企画グループ アートディレクターの杉浦智司氏(商品企画担当)、技術開発本部 開発センター 商品開発部 商品開発課 開発グループの齋藤明洋氏(外装担当)だ。

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麻倉氏: SATELLITE WAVEの開発のきっかけになった最初の発想は? 商品企画の立場から教えてください。

杉浦氏: 1989年に電波時計の技術開発に取り組み、1993年にファーストモデルを発表するなど、シチズンは電波時計を長年ずっと手掛けてきました。電波時計では市場をリードしてきましたので、そろそろ次のジェネレーションの時計をやろうじゃないか、というところが企画の発端です。BASELではここ数年、デザイン志向のコンセプトモデルを展開してきました。

麻倉氏: 確かにBASELに出展される時計メーカー各社のコンセプトモデルはデザイン志向で、とにかく人目をひこうというものが多いですね。シチズンはかなり以前からBASELには参加していますが、デザインを意識し出したのは最近ですか?

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マーケティング本部 第一商品企画部 商品企画課 グローバル企画グループ アートディレクターの杉浦智司氏(商品企画担当)

杉浦氏: BASELには長年出展していますが、2009年ぐらいからデザインに力を入れるようになりました。それまでの「BASELはお客さんを呼んで商談するという場」ととらえていたのですが、もっとブランドを発信する場としていこう、と考えたのです。スイスのどの時計ブランドをみても、BASELは「自社のブランドをアピールし、ブランド力を高める場」と考えていますね。

麻倉氏: BASELでのシチズンブランドの評価も近年高まっていますよね。

杉浦氏: はい、2009年に最初にデザイン志向のコンセプトモデルを出したときには「あのシチズンが面白いことをしている」と話題になりました。世間が持つシチズンのイメージは「真面目そうだけど地味」だったので「あのシチズンが」となったのでしょうね。ただ2009年当時、技術面の縛りが「エコ・ドライブ」というだけで、デザイナーはまっさらなところから自由にデザインしたので正直現実離れしたところがあり、これをコンセプトモデルとして具現化するのには現場でものすごい苦労がありました。

麻倉氏: 突拍子のないデザインをモノ(時計)として作り上げるために修正するのが大変だった、ということですか?

杉浦氏: 突拍子のないものを無理なく作れるようにアレンジしたというよりも、突拍子ものないものを突拍子のないカタチのまま作ったというところに苦労があったのです。そのため、SATELLITE WAVEではデザインだけでなく技術もしっかりとタッグを組んで開発していこうということは当初から決まっていました。GPSを時刻修正に活用するという発想は、技術開発本部で長年温めてきたものです。

麻倉氏: SATELLITE WAVEではGPS活用技術とデザインが融合したというわけですね。デザインと、もう1つ、技術という流れを作ろうとしたときに、以前から温めてきたものにうまく流れたと。

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