「ハンドパワーじゃない」、空中浮遊マジックの正体とは?:カーエレ展/EV・HEV展
Mr.マリックばりの空中浮遊デモンストレーションを行ったのは、車載ネットワーク設計ツールを展開するベクター・ジャパンだ。
金属球が空中に浮いている……。「第4回国際カーエレクトロニクス技術展(カーエレ展)/第3回EV・HEV駆動システム技術展(EV・HEV展)」(2012年1月18〜1月20日)に出展したベクター・ジャパンが行ったデモの1つである。
このMr.マリックばりの空中浮遊術。種明かしをしてしまうと、磁性を持つ金属球を電磁石で引っ張り上げているだけのことである。そう聞くと、大したことがないと思うかもしれない。しかし、単純に電磁石に電流を流すだけだと、金属球が電磁石に吸い付くだけで終わってしまう。もし電磁石に流す電流が小さければ、発生する磁力が弱いので金属球は一切動かない。
金属球が空中に浮いているように見せかけるには、以下のような制御が必要になる。まず、金属球が吸い付く程度の磁力が発生するレベルの電流を電磁石に流す。金属球が浮いたら、電流の値を小さくして電磁石の磁力を弱めて金属球が吸い付かないようにする。このとき、電磁石の磁力が弱くて金属球が落下しそうになったら、電流の値を大きくして電磁石の磁力を強める。そして、金属球が吸い付きそうになったら磁力が弱める、金属球が落下しそうになったら磁力が強める……このサイクルを短時間で繰り返せば、あたかも金属球が空中に浮いているように見せられるわけだ。
このデモでは、電磁石の中に組み込んだ磁力センサーで金属球と電磁石の先端部の距離を検知している。この距離に合わせて、電磁石に流す電流の値をPID(比例/積分/微分)制御して磁力を調整する。ただし、金属球が空中に浮いているように見せるには、PID制御のフィードバックサイクルを高速にしなければならない。この高速のPID制御を実現しているのが、同社の車載ネットワーク設計ツール群なのだ。
空中浮遊デモのシステム構成 右下にある黒いモジュールが「VN8900」。その下にある小型のモジュールが「VX1060」である。これらのモジュールや電磁石が設置されている台の中にシステム全体を制御するECUが組み込まれている。左側にあるノートPCに組み込んである「CANape」により、ECUのパラメータを確認できる。
具体的なシステム構成は以下の通り。全体の制御は車載システム向けのECU(電子制御ユニット)で行う。高速のPID制御については、Intelのプロセッサ「Atom」と「Windows XP Embedded」を搭載する車載ネットワークインタフェースモジュール「VN8900」でバイパス処理している。PID制御のフィードバックサイクルは2ms(500Hz)である。ECUのパラメータは小型の計測モジュール「VX1060」で計測しており、計測結果は測定ツール「CANape」を使ってPCで確認できる。
ベクター・ジャパンはこの他、車載システムのアーキテクチャ設計ツール「PREEvision」などを展示していた。2012年3月末までに国内市場に投入されるPREEvisionの最新バージョンは、自動車向け機能安全規格ISO 26262に対応する機能や、The MathWorksの「Simulink」モデルを管理する機能が追加されている。
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