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「IceCreamSandwich」はAndroidの将来を照らす光明となるか金山二郎のAndroid Watch(3)(2/2 ページ)

金山二郎のAndroid Watchの第3回。2011年はAndroidにとって混迷を極めた1年であったといえる。そんな中、さまざまな不安吹き飛ばす存在として、待望の「IceCreamSandwich(Android 4.x)」が登場した。今回は激動の2011年を振り返るとともに、ICSの全体像を踏まえた上で、2012年のAndroidの展望を占う。

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カタパルトとしてのIceCreamSandwich

 リファレンスターゲットの存在は、iOSとの一番の差別化ポイントです。アップル製品のラインアップはアップルが決めますが、GoogleはAndroid製品群のうち、特定の種類の製品にのみ関与しています。それは一言でいうならばAndroid Marketに接続できる製品です。

 これらは、ごく限られたメンバーによる輪の中において、機能と互換性とアップデートについての条件を満足するよう定められたAndroid製品仕様に基づくものです。この輪とは、具体的には、2011年5月のGoogle I/Oにて発表された、Android製品に対してAndroidのアップデートを保証する新しいプログラムを協議するメンバーであり、OHA(Open Handset Alliance)よりもずっと狭いものです。そして、製品の種類も全体からするとごく限られますが、ハイエンドのスマホとタブレットを含みます。すなわち、適切な言い方が思い浮かびませんが、ある意味「正規の」または「ごくまっとうな」Android端末であり、先進国および新興国で大量に出荷されるものです。別の言い方をすると、直接的にアップル製品の対抗となるものです。

 リファレンスターゲットは、そのような特別な端末の開発ではなく、Androidを使って製品開発したいと思う人のために用意されたものです。または、Android用の周辺デバイスの開発などのために用いられるものです。それらは以下の3種類に区分できます。

  • 大量に流通するAndroid製品
  • 大量ではないがビジネスに耐え得る形で流通するAndroid製品
  • Android製品の周辺製品

 大量に流通するAndroid製品とは、例えばZTEのエントリークラスのAndroid搭載携帯電話などを指します。そのような製品はごく大量に流通するケースが珍しくありません。現に、2011年第3四半期の携帯電話出荷台数において、ZTEは単独でアップルを追い越しています。アップル対Googleという大きな図式の中で、このような存在はアップルにとっては非常にやりにくいはずです。なぜならアップルの製品戦略上、そのようなラインアップはあり得ないからです。あり得ないといえば、例えばデジタルカメラなどもアップルの製品ラインアップに存在し得ない種類のデバイスです。しかし、世界中のデジカメメーカーは、やろうと思えばAndroidを搭載することが可能です。

 他にも、例えば医療などの分野での活躍が期待されます。医療デバイスの共通仕様を定義しているコンティニュア・ヘルス・アライアンスにソニーがメンバーとして参画しているのをご存じでしょうか。ソニーは自社が強力に推進しているNFC(Near Field Communication)技術をさまざまな分野に適用しようとしています。コンティニュア・ヘルス・アライアンスでは、まだNFCを医療用の通信手段として認めてはいませんが、携帯電話をはじめ、ごく広範に採用されることが確実であるため、近々採用されるのではないかと考えられます。一方、アップルはNFCをなかなか採用しませんが、Androidは“2.3”からNFCを標準サポートしています。

 また、タブレットなどの役割が明確化し、家庭や会社での位置が定まりはじめると、周辺機器の開発も本格化してきます。Androidは“3.1”からUSBホストを採用しており、このことが近々大きなアドバンテージになると考えられます。

 iOSもAndroidも黎明(れいめい)期を脱し、完成度を上げてきていますが、Androidの場合は拡張性に優れています。携帯電話以外の用途で大きな需要はいまだありませんが、Android搭載機器にガイガーカウンターをUSB接続するような試みが活発に行われていることは事実です。特定用途でも、ハマリどころが見つかれば桁違いの台数が出荷される可能性があります。

 震災で失ったものの大きさは計り知れず、傷はまだまだ癒えません。しかし、それでも時は過ぎ、震災後1年がもう目の前にきています。政府も民間も復興に取り組んでおり、1年後の成果を示さなければいけません。また、世界的に経済状況が悪化している中、スマホ関連産業は好調で、日本でもIPOが増加する見通しとなっています。Androidは世界経済をけん引する一翼であり、ICSが復興のアイデアを現実のものとするカタパルトとなることを期待しましょう。

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著者プロフィール

金山二郎(かなやまじろう)氏

株式会社イーフロー 技術本部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidプログラムの開発で活用している。


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