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激変する携帯電話業界とAndroidの登場金山二郎のAndroid Watch(1)

EE Times Japanの人気連載「Embedded Android for Beginners(Android基礎講座)」の筆者である金山二郎氏が@IT MONOistに!! 記念すべき第1回では、Androidの登場に至るまでの動向を振り返る。一緒にAndroidの世界をウオッチしよう!

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――皆さん、こんにちは。EE Times Japanにて約1年間、初心者向けAndroid技術・ビジネスに関する解説記事「Embedded Android for Beginners(Android基礎講座)」を担当させていただきました金山二郎です。このたび、誌面を@IT MONOistに変えてAndroidをテーマにした連載記事を担当させて頂くこととなりました。あらためてよろしくお願いいたします。

 さて、今やおなじみの「Android」が登場して、約6年が経過しました(米Android社を米Google社が買収してから)。その間、Android自身はもちろんのこと、IT業界も、そして世の中全体も大きく変わってきました。その変化は多岐に渡り、落ち着きを見せるどころか年々激しさを増しているようにも思えます。

 連載スタートに当たり、第1回では、Androidの登場に至るまでの携帯電話業界の動向を振り返ってみたいと思います。

IT業界をリードした携帯電話業界

 まず、Androidの登場した舞台である携帯電話の市場を振り返ります。日本と世界とでは随分話が違いますが、今回は世界の動向をベースとします。Androidがワールドワイドの携帯電話において戦略的に登場しているためです。

 世界の携帯電話の動向を端的に表すのが契約者数の推移です(図1 世界の携帯電話契約者数)。ご覧の通り、10年間その勢いはとどまるところを知りません。世界人口の8割に迫る勢いです。ちなみに、携帯電話網の人口カバー率としては9割に達しています。

図1 世界の携帯電話契約者数
図1 「世界の携帯電話契約者数」。世界の携帯電話契約者数の推移(ITU調べ)。世界人口の80%に迫る現在でも、その勢いは衰えを見せない

 日本では、このような傾向を意外に感じられる方も多いことと思います。契約者数について、日本では、新規契約者数の頭打ちやMNP(Mobile Number Portability)による既存契約者の争奪戦といった話題が以前からテレビのニュースにもなっていました。IT業界に身を置く方ともなれば、年々厳しさを増す携帯電話関連ビジネスを肌で感じてきたことでしょう。しかし、ここが世界と、“ガラパゴス”と称される日本との大きな違いです。確かに日本の携帯電話の契約者数は2000年ごろには既に頭打ちといわれました。実際にはその後もジリジリと拡大を続けていますが、開発費の掛け方はかつてのようにはいかなくなりました。

 一方、世界にはまだまだ携帯電話の及ばない地域がたくさんあり、先進国に続いて新興国、そして、発展途上国においてインフラの整備と新規契約が着々と進んでいるのです。

携帯電話業界の変化

 確かに携帯電話業界は継続性と拡張性を持つ強い業界ですが、そのプレーヤーと力関係は徐々に移り変わりを見せています(図2-1〜2-3:携帯電話業界の構成の推移。複雑化していく様子が見て取れる)。

もともとの携帯電話業界の関係図
図2-1 「もともとの携帯電話業界の関係図」

10年前の携帯電話業界の関係図
図2-2 「10年前の携帯電話業界の関係図」

現在の携帯電話業界の関係図
図2-3 「現在の携帯電話業界の関係図」

 まず、携帯電話が普及を見せ始めていた時期には、まだまだその構造は単純で、通信事業者がひたすらインフラを拡大し、移動機メーカーもひたすら電話を作り続けていました。このころの携帯電話は電子メールのようなサービスも行われておらず、まさに携帯できる電話という名が体を表していました。電話番号をアドレスとしてP2Pのテキストメッセージのやりとりなどができるようになっていましたが、通信方式はまちまちで、そのようなサービスには互換性がありませんでした。

 その後、海外ではSMS、日本ではiモードなどのサービスが登場。また、3Gにより世界の移動通信システムの相互接続が可能になり、また高速データ通信により移動機向けコンテンツが一気に拡充されました。このフェーズにおいて、携帯電話は飛躍的な成長を遂げます。日本からも、NTTドコモはiモードを世界中に普及させようと大規模なキャンペーンを行い、移動機メーカーもこぞって海外に飛び出しました。

 そこまではある意味順調な展開だったのですが、Nokiaなどの台頭によって様相が異なってきました。Nokiaは低価格で魅力的な携帯電話をどんどん作り、一躍、世界トップシェアの移動機メーカーに成長しました。そして、携帯電話業界全体をリードする存在となっていったのです。

 今では考えられないことですが、かつては、通信事業者は絶対であり、移動機メーカーは契約もないまま携帯電話を開発することすらありました。移動機メーカーは、開発途中であろうが、あるいは完成したとしても、通信事業者が「いらない」といえば、その携帯電話をお蔵入りにしてしまうという状況での開発を強いられました。ただし、裏を返せば、それはそのようなリスクを抱えても得られるビジネスがあったということでもあります。そのような絶対的な関係が、Nokia、Samsung、LG、Motorola、Sony Ericsson、HTCといった携帯電話メーカーの成長と共に、徐々に崩れていきました。

 また、携帯電話のOSやアプリケーションプラットフォームが重要な話題になってきたのもこのころです。Nokiaの成功に貢献したSymbian OSの普及は携帯電話業界にとって大きな出来事でした。NTTドコモのように自らLinuxベースのOSを整備する通信事業者も現れました。アプリケーションプラットフォームとしてはJavaが広く普及しましたが、NTTドコモやSony Ericssonなどは独自の拡張を行いました。Flashもある割合での成功を収めました。そして、見逃せない事実として、数多くのソフトウェアベンダーが独自のOSやアプリケーションプラットフォームを構築し、結果的にはほとんどが失敗しました。

Androidの登場

 Androidは、このような状況の中で登場しました。Googleという広告をなりわいとする企業が携帯電話向けOSを手掛けるということは、もちろんかつてない試みであり、世界が注目しました。

 Androidは携帯電話としてのソフトウェアの機能を全て含んでいました。また、Java技術に基づいたデバイス全体のソフトウェアプラットフォームを実現しました。さらに、この巨大なソフトウェアスタックがオープンソースとして提供されました。これまで渇望されていながら誰も成し得なかった、夢に等しいこれらの願いが、Androidでいっぺんにかなえられたのです。

 HTCを筆頭に、多くの移動機メーカーが次々にAndroid搭載携帯電話を開発し、出荷し始めました。契約者数はグングン伸びてiOS、そしてBlackBerry OSを抜き去り、今やアメリカのスマートフォン市場において4割を超える圧倒的なシェアを獲得し、さらに成長を続けています。

アメリカにおけるスマートフォン向けOSのシェア
図3 「アメリカにおけるスマートフォン向けOSのシェア」。米国における2011年7月のスマートフォン向けOSのシェア(comScore調べ)。Androidが圧倒的なシェアを持っている様子がよく分かる

 しかし、契約者数という観点から見ると好調の一語に尽きるAndroidも、実にさまざまな問題を持っています。AndroidとAndroidをとりまく状況を理解する上で、これらの問題の正しい理解が欠かせません。GoogleというAndroidをけん引している特殊な企業の実態、アップルとの関係、特許問題と移動機メーカーとの関係は、特に重要です。また、動きが速いといわれるIT業界においても、携帯電話をめぐる動向の目まぐるしさは群を抜いており、さらに、その中でもAndroidに関する話題はついて行くだけで一苦労します。混迷の度合いは、今後も深まる一方だと見られています。本連載がその理解の一助になれば幸いです。(次回に続く)

著者プロフィール

金山二郎(かなやまじろう)氏

株式会社イーフロー 技術本部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidプログラムの開発で活用している。


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