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韓国と日本で、車や家電の違いを比べてみた機械設計者から見た韓国(2/2 ページ)

日本の常識が通用しない! 韓国製品の数々。機械エンジニアが韓国に旅立ち、その街中にある家電や自動車について、じっくり観察・考察した。

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韓国の自動車

 韓国の代表的な自動車メーカーには、ヒュンダイ(現代自動車)、韓国GM(GM Korea。旧Daewoo:GM大宇自動車技術)、キア(KIA:起亜自動車)、ルノーサムスン(RSM:ルノー三星自動車)などがあります。

 世界的に販売台数を伸ばしている韓国製の自動車といえども、日本国内で見かけることは少ないといえます。かつてHyundaiは日本で乗用車を販売していましたが、販売不振により2009年に日本から撤退しています。

 韓国国内を走っている自動車を見ていると、海外らしさをあまり感じることがありません。その理由の1つに日本人の感覚でも受け入れられるデザインの自動車が増えているからだと思います。

 あくまでも個人的な意見ですが、代表的な韓国ブランドのイメージは下記の通りです。

  • ヒュンダイ:“無難”なデザインで万人受けするものが多く韓国国内ではトップシェアを持っています。「GENESIS」ブランドは、トヨタのLEXUS(レクサス)やメルセデスのEクラス、BMWの5シリーズに対抗し競争できるデザインと質感を備えています。
ヒュンダイ
ヒュンダイのフラッグシップブランドの「GENESIS」
  • 韓国GM:以前はDaewoo(デウ)ブランドで小型車を得意としていたメーカーですが、チープな自動車というイメージがありました。今回、韓国国内でシボレーのマークを付けた自動車を多数見掛け、「アメリカ製の自動車がシェアを伸ばしているのか」と誤解していたのですが、韓国GMとしてシボレーブランドで販売展開しているとのことです。
  • ルノーサムスン:デザイン的にはおとなしいイメージを持つ車が多いように思います。日産と提携していたこともあり、「あれ?日産車じゃ?」と思う車が多いといえます。
  • キア:以前は、良くも悪くも韓国車らしいデザインで、若干チープ感のある自動車というイメージを持っていました。近年、アウディのチーフデザイナーをデザイン部門のトップにしたことで、世界に通用する力強く個性的なデザインを実現しており、世界的にもシェアを伸ばしている成長株のメーカーです。

 今回、個人的に興味を持ったキアブランドで気になるデザインの自動車をソウル市内で撮影してきましたので紹介します。「K5」はコンパクトな車体に精悍なマスクを盛っており、至るところで見掛けることができます。またソウル中心部では黄色く塗られたタクシーにも使われています。

KIA
キアの「K5」

 「K7」はK5をさらに洗練させて高級感を持たせたデザインです。

KIA
キアの「K7」

 「Sorento」も、SUV車としてK5やK7のDNAを引き継いだデザインです。

KIA
キアの「Sorento」

 自動車のデザインの嗜好(しこう)は人によって異なるため、上記に紹介したKIAの3車種が優れているかどうか判断することはできませんが、韓国車はグローバルな展開にあたりデザインを重視したモノづくりに挑戦していることがよく分かります。

 韓国人エンジニアをはじめ、韓国に滞在している日本人エンジニアでも、韓国の自動車について「品質は日本車と遜色ない」と口をそろえます。今後、日本国内で韓国製の自動車がシェアを伸ばす可能性は低く脅威になり得ないと筆者は考えていますが、ウォン安を武器に世界的なシェアはますます伸びていくと予想できます。

 欧米に行くと都市部の大きな看板には必ずといっていいほど韓国企業の広告が見られます。もちろん世界的に活躍している日本企業の看板もたくさんあるのですが、相対的に韓国企業の方が広告に莫大な資金を投資していると感じます。

 製造業においては、BRICsの台頭によって中国やインドの市場や生産活動に注目が集まりがちで、最近は韓国の産業や製品戦略についてあまり焦点が当たりません。しかし、その間にも韓国製品はグローバルに浸透し、日本ブランドよりも有名になり販売シェアを増やしていることは事実です。

 多くの日本人が抱いている「日本製品は品質も信頼性も世界一で、韓国製品はまだまだ2流品」という感覚で製品開発をしていては、ますます“ガラパゴス化”が進み、日本だけがグローバルなトレンドに乗り遅れていくことになります。

 既に海外においては、品質や信頼性の真の実力よりも、企画力やブランド力によって日韓製品のブランドの価値が逆転していることを認識しなければいけません。日本人エンジニアは積極的に海外に足を運び、肌でグローバルな感覚を養うことが重要であると確信します。


Profile

山田 学(やまだ まなぶ)

1963年生まれ。ラブノーツ代表取締役、技術士(機械部門)。カヤバ工業(現、KYB)自動車技術研究所で電動パワーステアリングの研究開発、グローリー工業(現、グローリー)設計部で銀行向け紙幣処理機の設計などに従事。兵庫県技能検定委員として技能検定(機械プラント製図)の検定試験運営、指導、採点にも携わる。2006年4月、技術者教育専門の六自由度技術士事務所を設立。2007年1月、ラブノーツを設立し、会社法人(株式会社)として技術者教育を行っている。著書に『図面って、どない描くねん!』『読んで調べる 設計製図リストブック』(共に日刊工業新聞社刊)など。



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