メンターが組み込みソフトウェアの製品展開を拡大、主軸はオープンソース:GNUツールのCodeSourceryを買収
EDAツールの大手ベンダーとして知られるメンター・グラフィックスが、組み込みソフトウェア製品の事業展開を拡大中だ。2011年5月には、CodeSourceryのGNUツールをベースにした統合開発環境「Sourcery CodeBench」を発表している。
メンター・グラフィックスは2011年9月14日、東京都内で記者会見を開き、同社の組み込みソフトウェア製品の事業戦略について説明した。
メンター・グラフィックスは、ICの設計に用いるEDA(Electronic Design Automation)ツールや、プリント基板の配線設計ツールなど、主に電子機器向けハードウェア設計ツールの大手ベンダーとして広く知られている。現在、同社は、電子機器を動作させる上で、ハードウェアとともに必要となるソフトウェア関連の事業展開にも注力している。主力製品となるのは、組み込みOSである「Nucleus」や「Mentor Embedded Linux」と、ユーザーインタフェース(UI)開発ツール「Inflexion UI」などの組み込みソフトウェア開発ツールである。
現在、同社の組み込みソフトウェア事業では、LinuxやAndroid向けにオープンソースソフトウェアを活用した取り組みが主軸となっている。その先駆けとなったのが、2009年7月に行った組み込みLinuxの開発ツールを手掛けるEmbedded Alleyの買収である。その後、2009年12月にはTexas Instrumentsのプロセッサ向けのAndroid開発ツールを、2010年6月にはFreescale SemiconductorやNetLogicのそれぞれのプロセッサ向けに特化したLinux開発ツールを発表している。さらに、2010年12月には、GNUツールと関連サービスを展開するCodeSourceryを買収した(図1)。
同社でシニアプロダクトマーケティングマネジャーを務めるAnil Khanna氏(図2)は、「当社の組み込みソフトウェア事業は、組み込み機器向けLinuxディストリビューションの開発を行っているOpenEmebeddedやGNUのC言語ライブラリであるEmbedded GLIBC(EGLIBC)の立ち上げに関わるなど、オープンソースコミュニティーと深い関わりを持つ。また、Power Architecture向けのLinuxの開発を主導するなど、組み込みソフトウェアに関する高い技術力も備えている。そして、200人以上の組み込みソフトウェアの技術者による充実したサポートも提供している」と語る。
2011年5月には、買収したCodeSourceryの開発ツールをベースとする統合開発環境(IDE)「Sourcery CodeBench」が発表されている。アカデミックエディションを含めた4つの商用版と併せて、Sourcery CodeBenchを構成するコンパイラやデバッガなども無償で提供される。メンター・グラフィックスでビジネスデベロップメントディレクターを務めるBrian Barrera氏(図3)は、「CodeSourceryは、オープンソース開発ツールのリーダー的存在だ。特に、コンパイラについては、ARMやMIPSだけでなく、IA(Intel Architecture)、Power、ColdFire、SuperHなど広範囲のプロセッサアーキテクチャに対応している。この高品質な開発ツールの商用版の場合では、当社による充実したサポートが提供される。日本市場でも、日本法人のサービス部門を中心とした日本語によるサポートを行う予定だ」と説明する。
Sourcery CodeBenchの商用版で最上位となるプロフェッショナルエディションでは、解析ツールである「Sourcery System Analyzer」が新たに追加された。同ツールを用いることで、開発している組み込みソフトウェアや、組み込みソフトウェアを搭載したシステムの動作を詳細に解析することができる。「例えば、マルチコアプロセッサ上である組み込みソフトウェアを動作させる際に各プロセッサコアの負荷を可視化する機能や、システムのパフォーマンスと消費電力を最適化する機能など、組み込み機器の開発に役立つ機能を備えている」(Barrera氏)という(図4)。
今後、メンター・グラフィックスは、同社が展開する有力なハードウェア設計ツールと、組み込みソフトウェア関連製品の連携を進めていく方針である(図5)。Khanna氏は、「ホストPC上でSourcery CodeBenchを用いて開発した組み込みソフトウェアを、JTAGを介して検証プラットフォームの『Veloce』に接続することにより、ハードウェアへの実装開発をより容易にするための取り組みを進めている。実際に、Veloce、ESL(Electronic System Level)開発プラットフォームである『Vista』、そしてSourcery CodeBenchを連動させられることは確認している。現在、どのようなサービスを提供できるのかを検討しているところだ」と述べている。
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