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太陽電池市場とその動向小寺信良のEnergy Future(2)(1/3 ページ)

小寺信良氏が発電/蓄電/送電の3つをテーマに次世代エネルギーについて語る新連載。第2回は太陽電池の市場とその動向について紹介。

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 最近ではTVコマーシャルなどの影響もあって、家庭の屋根に取り付けるソーラーパネルも認知度が高まってきている。菅直人首相がヨーロッパで「2020年までに1000万戸にソーラーパネルを設置する」と勝手に約束してきたことには唖然(あぜん)としたが、実際に電車に乗って高架から家々の屋根を見下ろしても、日本ではまだそれほど見かけない。

 一方ヨーロッパでは再生可能エネルギーの利用が進んでおり、家庭用ソーラーパネルの設置も特別なことではない。一つの不動産的な扱いとして、中古ソーラーパネル設備の売買市場もあるという。

 日本でソーラーパネルの導入がなかなか進まないのは、元が取れるまでが長いからである。一般家庭への導入コストは、一軒につき約240万円程度。製品価格もさることながら、導入に対する補助金制度、余剰電力の買い取り価格などの条件によって、何年でこの初期投資が回収できるかが変わってくる。現時点での日本の制度では、この損益分岐点は約15〜20年といわれている。

 15年は長い。そもそもいまの日本の経済状況では、そんなに長く同じ家に住み続けられるか、という心配をしなければならない年数だ。一方ヨーロッパでは補助金や中古設備売買市場の存在により、損益分岐点は大体8年前後だという。約半分だ。それなら検討に値するだろう。

 中古市場があるということで気になるのが、製品の寿命である。原理的にシリコン系太陽電池の寿命は、半永久だ。ただ現実には保証期間は10年、実効動作期間は20年以上、というのが通説となっている。どこが劣化するかというと、シリコンセルそのものではなく、ガラス接着している接着剤の劣化、ガラス面の割れ、パネルフレームの変形といった、製品としての作り込み部分である。

 まだソーラーパネルは、特性劣化による大量廃棄といった事例が存在しておらず、寿命や廃棄の問題は先送りされているのが現状だ。もっともシリコンは元の石や砂などに返っていくだけなので、環境負荷も少ないと見積もられている。

 その一方で、昨年世界最大の太陽電池メーカーに躍り出た米ファーストソーラーのものは、「化合物薄膜太陽電池」と呼ばれ、有毒なカドミウムとレアメタルのテルルの化合物で製造されている。製造コストがシリコン系に比べると1/2から1/3ということで初期導入コストが安くなるため、ヨーロッパでの採用も増えている。こちらの方は、廃棄時にはメーカーが引き取る形で決着したようだが、引き取った後どのように処理していくのか、あるいは廃棄するときまで会社がちゃんとあるのか、といったところの不安も拭い切れない。

下克上アリアリの業界ピラミッド構造

 どの業界でも高コスト高品質なものを頂点に、低コスト低品質なものへ向かってピラミッド構造を形成する。太陽電池業界もまたしかりで、大きく分けると現時点では4段階のピラミッド構造になっている。

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太陽電池産業のピラミッド構造

 トップの階層は高効率だが値段が高い単結晶シリコンで、業界では「太陽電池のスーパーカー」などと呼ばれており、三洋電機、シャープ、米サンパワーが製造している。第2層は多結晶シリコンの高効率のもので、シャープ、京セラ、三菱電機などがここに入る。国内で多く導入されているのは、この階層のものだ。

 第3層は多結晶の効率がそれほど高くないもので、ここは多くの中国メーカー、インリーグリーンエナジー、JAソーラー、サンテックパワー、トリナソーラーなどがひしめき合っており、最も価格競争が激しい部分だ。一番下は薄膜アモルファス系で、価格は安いものの変換効率が低いため、広大な面積が用意できる発電産業用とされてきた。しかし最近は変換効率が10%を超え始めており、家庭用としても注目されている分野だ。

 いま大きく注目されるのはこの第3層の部分で、価格で競争力があるため、知名度さえ上がれば一気に市場を席巻(せっけん)する可能性を秘めている。国内メーカーは低価格競争に巻き込まれないよう、さらに高付加価値、高効率で上の層に逃げていくしかないというのが実情だ。

 価格競争という点では、前出の化合物系も大きな広がりを見せている。ファーストソーラーだけでなく、日本では昭和シェルの子会社ソーラーフロンティアが、銅、インジウム、セレンなどを使った「CIS薄膜系」のセルを製造、今年(2011年)春には宮崎県国富町に1000億円を投じた超巨大工場が稼働した。生産能力としては、単一工場として世界一の規模だそうである。

 ソーラーフロンティアに関しては、国富工場が筆者の実家から車で20〜30分ぐらいの場所なので、いずれ取材する機会もあるだろう。そのときにまたあらためて詳しくレポートしてみたい。

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