設計・製造の一貫対応でFPGAソリューションを推進する:組み込み企業最前線 − システック −(2/2 ページ)
静岡県・浜松市に拠点を置くシステックは、中核事業の受託設計・製造においてPLD(FPGA)ソリューションに力を入れる。“柔らかい”デバイスであるFPGAの利点を生かす、設計から製造までの一貫対応に強みを持つ企業だ。
ソリューションの一部となる独自IPコア
システックのPLDソリューションでは、設計・製造の一貫対応に加え、高速I/O系の独自IPコアも光る。その主力製品は、ザイリンクスのハイエンドFPGA「Virtex-5」に対応するPCI Express DMA(Direct Media Access)コントローラ「SYPCIE」で、Virtex-5標準のPCI Express エンド ポイントブロックを使用し、DMAの読み書きを高速に行う。同じく、Virtex-5に対応するDDR2/DDR3-SDRAMコントローラもIPコア化している。DDR3向けは標準規格のDFI(DDR PHY Interface)2.1に準拠して転送速度1066Mbpsを実現するという。
これらの分野は海外製IPコアが強く、無償製品もあるが、同社 ソリューション事業部 開発部長の坂田全弘氏は「われわれのIPコアはお仕着せの既製品ではなく、カスタマイズ可能なのが特長。しかも、日本語サポートが付き、IPコア単体のみならず、基板製造までトータルに支援できる。この辺りの付加価値を評価してもらっている」と話す。実際にSYPCIEは、ザイリンクスのFPGAを搭載するTED製「PCI Express評価プラットフォーム」に標準採用され、DDR-SDRAMコントローラは、一部メーカーの薄型テレビ最上位機種に採用されているという。
ASIC時代から培ってきた豊富な画像処理技術も強みだ。各種の画像補正、画素・解像度変換、2値化処理などだ。これら画像処理技術をFPGAで実現し、幅広い組み込み機器に適用している。例えば、画像合成手法の1種「クロマキー処理」をザイリンクスのFPGAに実装、アミューズメント機器に組み込んだり、カメラ映像をリアルタイム処理する検査装置向けにFPGA評価プラットフォームを開発したりしている。
最近では、無線通信ソリューションを強化するザイリンクス製品を用い、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)やFIR(Finite Impulse Response:有限インパルス応答)など信号処理機能をFPGAに実装するケースも増えている。ザイリンクスの「MicroBlaze」に代表されるソフトコア・プロセッサを活用したFPGA開発の実績も豊富だ。
「7シリーズ」でマーケティング指向に転身
システックは今後、順調に育ってきたPLDソリューションをさらに進化させる考えである。坂田氏は次のように語る。
「受託設計・製造といっても、顧客から声が掛かるのを待つ“受け身”ではなく、ニーズを先取りし、ソリューションを提案していく。つまり、マーケティング指向を目指す。ザイリンクスから28nmプロセスにより性能、ロジックセル集積数、低消費電力性が大幅に向上させ、FPGAの従来概念を変える力を持つ『7シリーズ』が出荷され始める。7シリーズをどう活用していくか、顧客へ積極提案していきたい」。
柔軟な受託設計・製造にマーケティング指向が加われば、上流から下流までの一貫対応はさらに強化される。システックは会社規模こそ大きくはないが、だからこそ、国内の“モノづくり”の実態に即したPLDソリューションを提供し続けそうだ。
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