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「うるさい」と思われつつ、使ってもらえるサービスにヒントあり電気自動車 トヨタが考える次世代環境車(2)(2/2 ページ)

ガソリン車がPHV、EVに置き換わっていくと、車の付加価値も変化する。第1回ではPHV、EVが社会システムに貢献するエネルギー管理について取り上げた。第2回は、ユーザーとつながるために必要なソフトウェアサービスについて聞いた。

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レクサスの経験を生かす

MONOist ユーザーとディーラー、メーカーのつながりを緊密にするために、プライベートな内容を扱うSNSを使って、ユーザーに受け入れられるのか。

友山氏 プライベートだからこそ、SNSを使いたい。このように考える理由は、「レクサス」の経験があるからだ。当社はレクサスのユーザーに対して、「コンシェルジェサービス」(総合サービス)を提供している。

 例えば、レクサスを駐車し、離れる際にドアロックを忘れたとしよう。すると「うっかり通知」サービスが、メールをユーザーの携帯電話機に送る。便利なサービスだ、いや、ドアロックのたびにメールを送るのは過剰なのではないかなど、賛否両論があったものの、サービスを始めてみると、予想以上にユーザーが受け入れている。

 ドアロック以外にも、防犯のため、自動車のエンジンをかけると「エンジン始動通知」を送る。この他にもいろいろある。メールを多数送るため、「うるさい」というユーザーの声はあるものの、99%以上のユーザーがサービスを解除せず、使い続けている。自動車とつながっている気がするといって、喜ばれている。

 そこで、レクサスのサービスを現在のSNS世代に向けて拡大してみようと考えた。自動車自身がSNSの中でつぶやくという発想は、salesforce.comの会長兼最高経営責任者マーク・ベニオフ(Marc Benioff)氏が言い始めたことだが、これを応用した。

 自動車がつぶやくことを気にするか、気にしないかはユーザーの判断にまかせ、もし気に入ったときは次の段階に進めるようにするというのが、ユーザーとつながる適切な形ではないか。当社のセンターが情報を提示するのではなく、自動車自身がつぶやくという形の方が受け入れられやすいのではないかということだ。トヨタフレンドの発想の基盤はここにある。

 トヨタフレンドの次の段階としては、当社が2011年1月にインターネット上のサービスとして立ち上げた「バーチャルオペレーター」があり得るだろう。トヨタフレンドはSNSであり、文字ベースのサービスだが、今後、次第に音声認識や音声合成が入っていく。ユーザーの許容度を見ながら段階を踏んで進めていくつもりだ。

MONOist トヨタフレンドをデザインする際、何が重要なのか。

友山氏 今後のテレマティクスサービスはプッシュ型でなければならないということが前提にある。プッシュ型で肝心なのはタイミングと手法だ。本当に必要な教えたい要素がそろったうえで、タイミングを決めることだ。手法としては、SNSが非常によい。

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図3 トヨタフレンドの利用例 PHVの充電残量や充電プラグの状態、PHVの利用時間などのデータをトヨタスマートセンターで取得する。トヨタフレンドと連携して、つぶやきの形で、ユーザーのスマートフォンに表示する。出典:トヨタ自動車

 私自身は自動車は友達だ、と思われるように作っていきたいと考えている。例えば「プリくん」が「電池が残り少ない」「腹が減った」などとつぶやくことが、自然だと感じる(図3)。自動車に命令して、自動車が従うだけという形ではなく、SNSを通じてコミュニティーができて他のユーザーとつながることもできる。

 さらに、自動車のつぶやきをディーラーも聞かなければならないかもしれない。当社もつぶやきを聞いて自動車が想定通りに使われているかどうか、予期した機能が使われているか、問題はないのか、分かっていた方がいい。次期製品の開発に反映したり、品質管理のスピードを上げたりするためだ。ユーザーのクレームという形になる前に、自動車を作った責任として自動車のつぶやきを聞いていなければならない。そういうこともトヨタフレンドの究極的な姿だ。


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