トヨタ自動車がIT企業と提携、EV事業の加速を狙う
トヨタ自動車が、IT企業との事業提携を拡大している。2011年4月に米Microsoft社、同年5月に米salesforce.com社との事業提携が矢継ぎ早に発表された。
トヨタ自動車が、IT企業との事業提携を拡大している。2011年4月に米Microsoft社(写真1)、同年5月に米salesforce.com社(写真2)との事業提携が矢継ぎ早に発表された。これらは、2012年末までに市場投入を予定している電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の事業を加速させることを狙ってのものだ。
Microsoft社との提携では、同社のクラウドコンピューティング用プラットフォーム「Windows Azure」を用いて、トヨタ自動車向けの次世代テレマティクスサービスのプラットフォームを共同で開発する。このテレマティクスサービスのプラットフォーム開発は2段階に分かれている。まず、トヨタ自動車は、2012年から市販する予定のEVとPHEVのテレマティクスサービスに、Windows Azureを採用する計画である。その後、2015年までに、独自の次世代テレマティクスサービスのプラットフォームを共同で構築するとしている。なお、この次世代プラットフォームは、全世界で利用可能なものを目指していることから「グローバルクラウドプラットフォーム」と呼ばれている。
現在、トヨタ自動車は、スマートグリッド(次世代送電網)に関する取り組みの一環として、個人、自動車、家庭におけるエネルギー消費を統合的に制御するシステム「トヨタスマートセンター」の実証実験を国内で行っている。グローバルクラウドプラットフォームを活用することで、トヨタスマートセンターのグローバル展開を図っていくとしている。
一方、salesforce社との提携では、同社の企業向けソーシャルネットワークサービス「Chatter」をベースに、自動車、トヨタ車ユーザー、販売店などをつなぐソーシャルネットワークサービス「トヨタフレンド」の構築を目指す。グローバルクラウドプラットフォームと同様に、2012年に予定しているEVとPHEVの市販開始時期に同サービスも開始する予定だ。
トヨタフレンドでは、EVやPHEVの電池残量が少ない場合に、車両に搭載された車載情報機器が「Twitter」を用いて、ユーザーのスマートホンに充電を促す情報を送信するなどのサービスが検討されている。
トヨタ自動車は、グローバルクラウドプラットフォームを、EVやPHEV、充電インフラなどのスマートグリッドと連動させるためのシステムとして活用する方針である。これに対して、トヨタフレンドは、Twitterや「Facebook」など外部のソーシャルネットワークサービスとも連携したオープンなプラットフォームとして構築する計画だ。車載情報機器だけでなく、スマートホンやタブレット端末からアクセスすることにより、家族や友人とのコミュニケーションツールとして利用できるようになるという。
トヨタ自動車、Microsoft社、salesforce社の3社は、トヨタ自動車の顧客向け情報サービス子会社であるトヨタメディアサービスに対して増資を行う。現在、トヨタメディアサービスの資本金は1億5050万円(トヨタ自動車が100%出資)。10億円の増資が行われ、資本金は11億5050万円となる。増資の内訳は、トヨタ自動車が4億4200万円、Microsoft社が3億3500万円、salesforce社が2億2300万円。トヨタ自動車の出資率は51.5%となる。今後、トヨタメディアサービスは、グローバルクラウドプラットフォームを構築する業務をトヨタ自動車から請け負うことになる。
非接触充電技術でも提携
トヨタ自動車は、EV/PHEVの事業化を加速する上で、IT企業以外との提携にも積極的な姿勢を示している。2011年5月には、非接触充電技術の開発で米WiTricity社との提携を発表した。今後両社は、EV/PHEVの充電インフラとして、磁界共鳴方式を用いた非接触充電技術の実用化に取り組む。磁界共鳴方式は、送電側と受電側の距離が長い場合でも高い効率で送電できるという特徴がある。
(朴 尚洙)
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