【DSJ2011】ディスプレイ技術の革新で発展するデジタルサイネージ:組み込みイベントレポート(2/2 ページ)
2011年6月9〜10日に幕張メッセで開催された「デジタルサイネージ ジャパン 2011(以下、DSJ2011)」では、デジタルサイネージに関する最新ソリューションが多数披露された。その中から特に注目したい製品・サービスを紹介する。
自家発電や電子ペーパーで省エネ化
DSJ2011では、東日本大震災を受けて省エネ性を訴求する展示が増えると思われたが、意外に少なかった。その中でストレートに省エネ性を打ち出していたのがパナソニックグループのピーディーシーだ。同社は、太陽光発電パネル、蓄電池を組み合わせた「ソーラーサイネージ」と、蓄電池単体を組み込んだ「蓄電サイネージ」を訴求していた。
ソーラーサイネージは、発電量が200Wの太陽電池パネル(4枚)をサイネージ筐体の上部に搭載し、筐体内部に蓄電量1.6kWの蓄電池セルを最大5つ搭載する。そして、充放電を制御するエネルギー管理システムを組み込んでいる。「晴天時なら自家発電で47V型ディスプレイを中心としたサイネージ部を余裕を持って動かせ、余剰電力は蓄えて夜間に利用する」(説明員)。東日本大震災のような災害時に通信や系統電力が停止することを想定し、地上・BSデジタルアンテナを装備するのに加え、蓄電池からPCや携帯電話へ給電する機能も持たせている。
イシダサイネージテクノロジーの「Dot Matrix Signage」も省エネ型のデジタルサイネージといえる。Dot Matrix Signageは、解像度320×192ドットの表示デバイスにブリヂストンが開発した電子ペーパー技術「QR-LPD」(ブランド名:AeroBee)を採用する。帯電性を持つ電子粉流体を表示に使うQR-LPDは、電力なしで表示を保持(メモリ)するため、無線通信で表示を書き換えるときしか電力を消費せず、コイン電池のみで駆動する。「表示の更新頻度にもよるが、電池交換は数年に1回で済む」(説明員)。現行は、表示デバイスが小型なため、主に生産・物流の現場で作業指示書などを電子化する目的で使われるが、「今後はQR-LPDを活用した大型表示デバイスを開発し、コイン電池で長期間駆動する特長を生かしたサイネージを開発していきたい」(説明員)としていた。
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多機能化を促すインテル+マイクロソフトの基盤
デジタルサイネージ分野では、インテルプロセッサとWindowsの組み合わせがプラットフォームに使われることが多い。その両社の“特設ラウンジ”では、小売り店頭のエンド什器をデジタルサイネージ化したコンセプトモデルが展示されていた。同モデルには、視聴者解析に応じたコンテンツ表示、モバイルアプリ連携といったおなじみの機能の他、ジェスチャーによる画面操作、RFIDを利用して実際にユーザーが手に取った商品に応じたコンテンツを表示するなど目新しい機能も盛り込まれていた。
特設ラウンジでは、綜合警備保障が2009年から提供するデジタルサイネージ機能を持つ自律走行型ロボット「An9-PR」も展示されていた。An9-PRは、位置マーカ認識用カメラ、各種センサーの情報と地図データを突き合わせながら自律走行を行い、頭部を取り巻く360度電光掲示板、19V型×1、15V型×2の液晶ディスプレイ、全方位スピーカーを使って周囲に情報を発信。特に19V型はタッチパネルで対話型コンテンツも表示可能だ。その他にも、顔認識やパンチルトに対応したカメラ、RFIDリーダ、赤外線通信などの機能を持つ。
エンド什器のコンセプトモデルやAn9-PRの多機能ぶりを見ても、インテルプロセッサとWindowsをプラットフォームとするデジタルサイネージは、今後もますます複合機能化していきそうだ。
CPU/GPUの高性能化により、汎用PCでも大規模なマルチディスプレイが制御可能となっている。例えば、Fujitakaの「Digital Art Board」は60V型ディスプレイを6台並べたマルチディスプレイでフルHD表示も可能だが、「市販のグラフィックスボード6枚を搭載したPC1台で制御しているため、トータルコストが抑えられている」(説明員)。また、エーキューブが実演していた24面マルチディスプレイも、1600基のストリームプロセッサを搭載し、6画面出力に対応したAMDの高性能3Dビデオカード「ATI FirePro V9800」を4枚搭載したPC1台で制御していた。絶え間なく進化するCPU/GPUが今後もデジタルサイネージの可能性を高めそうだ。
続々と登場するScalaソリューション
トップクラスのシェアを誇るデジタルサイネージソフトウェア「Scala」を擁するSCALAのブースでは、パートナー企業がScalaソリューションを訴求していた。
SCALAのパートナー企業の1社であるITTOCANは“空間演出ビデオインスターレーション”と称するデジタルサイネージシステム「REACT」を実演していた。カメラ/センサーの情報をリアルタイム解析し、設定したモーションパターンで空間演出ビデオを再生するもの。人の動きに合わせたインタラクティブな映像を映し出すことも可能だ。コンテンツの制作・管理・再生にScalaを使うが、「REACT用テンプレートをScalaの設計ツールでカスタマイズできるのでコンテンツ制作は簡単」(説明員)という。
日立製作所はScalaを活用したクラウド型サイネージサービス「サインチャンネル」を訴求していた。ユーザー自身が専用PCソフトウェアでデザイン素材と天気予報などのWebサービスを組み合わせたコンテンツ・プレイリストを作成し、サーバへアップロードする。後は、Linuxベースの専用タブレット端末でコンテンツ配信を受けるという月定額サービスである。「サーバ運用が難しい中小企業に向いている」(説明員)。今後は、デジタルサイネージとクラウドサービスとの連携が進みそうだ。
以上、DSJ2011で目に付いた製品・サービスを紹介した。今回の取材を通じ、デジタルサイネージは技術革新の余地がまだまだ大きいという印象を受けた。1年後の「DSJ2012」が今から楽しみである。
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