第11回 Google I/Oに見る今後のAndroidの動向:Embedded Android for Beginners(Android基礎講座)(2/3 ページ)
今回はGoogle主催の開発者向けイベント「Google I/O」における発表を軸に、iPhone/iPadと比較しながら今後のAndroidの動向について考察します。
HoneyCombの新リリース3.1、Ice Cream Sandwich
Google I/Oのキーノートでは、続いてAndroidのリリースについて触れられました。間違いなく、参加者が最も聞きたかったニュースでしょう。
HoneyCombの新リリースとなる3.1において、Androidの方向性がより鮮明に示されることになりました。目玉は周辺機器接続の強化です。Android端末と接続するUSBハードウェアの規格であるAndroid OpenAccessoryを定め、リファレンス開発キットも用意しました。このため、USB接続機器メーカーは容易に自身の製品をAndroidデバイスに対応させることができるようになりました。ご存じのとおり、USBはPCでは最も一般的な接続インタフェースで、歴史も長いため対応機器の数も膨大です。しかし、有線による周辺機器の接続を良しとしなかったアップルはUSBをiPadに搭載しませんでした。このような両者のポリシーの違いが、獲得するユーザー層や用途にも影響すると考えられます。
なお、少し前の話題になりますが、インタフェースという点では、非接触近距離無線通信技術の1つであるNFCも見逃せません。携帯電話を中心に広く普及すると見られていますが、特にAndroidデバイスでの採用を見込んで、Open NFCというオープンソースのNFCプロトコルスタックが登場しています。同じく近距離無線ですが実効速度375Mbpsという高い転送率が特徴のTransferJet、センサーネット向けの無線通信技術であるZigBeeなども今後ある割合で一般家庭に普及すると見られます。トータルバランスのような話題は別にありますが、そういったいくつもの新しい技術に対するスピーディーな対応という点でAndroidは勝っています。
図2 HoneyCombのオープンソースは公開されない?
Google I/Oにおいて、Ice Cream Sandwichのオープンソースは公開予定とされたが、現在非公開であるHoneyCombのオープンソースは最後まで公開されないかもしれない。
上述の通り、iPadをキャッチアップするためにAndroidは分枝せざるを得ませんでしたが、Ice Cream Sandwichはこの再統合を大きな目的としたリリースとなります(図2)。分枝自体が予定外であったわけですから、統合は新しいイベントというよりは分枝の後始末と捉えるべきです。また、Ice CreamSandwichのリリース時にはオープンソースの公開もなされる予定であるとのことでした(図3)。HoneyCombはおそらく過渡期のリリースとして扱われ、オープンソースは最後まで公開されないと思われますが、そうして見ると、GoogleはいまだiPadショックの真っただ中にあるといえます。
ようやく立ち上がったコンテンツ配信
意外とご存じない方が多い、というより忘れてしまっておられる方が多いと思うのですが、アップルはコンテンツに非常に強い会社です。といっても、元からそうだったわけではありません。確かに、グラフィックスやデザインへのこだわり方は創業当初から際立っていましたが、多くのコンテンツホルダーと契約し、オンライン音楽・映像配信事業をiTunes Music Storeという形で成功させました。また、音楽配信から始まったこの事業が、やがてアプリケーションの配信まで手掛けるようになり、上述の100億ダウンロードという巨大市場に成長しました。Googleとしては、アプリケーションについては負けていませんということをアピールしていますが、音楽・映像についてはやっとスタートにこぎ着けたというところです。
「トイ・ストーリー」「カーズ」などのCGを多用した人気映画を作っているピクサーといえば知らない方はまずいないでしょう。この会社はもともとはルーカスフィルムの一部門でしたが、アップルを退社したスティーブ・ジョブスらが買収しました。それからディズニーとの関係を深めていき、1995年公開の「トイ・ストーリー」に始まる大成功を収めるのです。そして、ジョブスが非常勤取締役という形でアップルに復帰するのが翌1996年です。アップルは2001年に音楽再生デバイスiPodを世に送り出しますが、それは単なるデバイス事業ではなく、ジョブスがピクサーで培った音楽・映像ビジネスに関する知見とコネクションに基づく、配信サービスを中心とした一大事業の一環でした。
Googleは今回、「music beta by Google」というクラウドベースの音楽配信サービスと、Android Marketにおける映画のレンタルサービスを発表しました(図4)。しかし、Googleにはジョブスが培ったほどのベースもなく、特にAndroidの場合はコンテンツホルダーが最も懸念するセキュリティについての問題が起こった経緯から、魅力的なコンテンツの取りそろえに課題があるという意見もあります。一方のアップルはクラウドベースの音楽配信サービスについても取り組みを始めており、メジャーレーベルとの契約が進んでいることを強調しています。この状況をどのようにばん回していくのかという視点で、Googleの動きを観察することが重要です。
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