ブレーキシステムの問題解決アイデアを出そう:災害未然防止のための設計とTRIZ【活用編】(2)(3/3 ページ)
自動車のブレーキシステムの改善をテーマに、どのように工学的矛盾を定義し、解決アイデアを出していくのか解説する。
発明原理を使ってアイデアを出してみよう!
では、先のブレーキシステムの問題解決についてアイデアを考えてみましょう。まず、アイデアを考える前に、一度席を立って背伸びをしながら深呼吸をします。そう、酸欠状態では脳は働きが悪くなりますからね。そして、机の上にはアイデアを書き込むための名刺サイズ以上のふせん紙と、それらを張り付けるための模造紙(A3程度の紙でもいいです)を準備したら完璧! 早速、アイデアを出しましょう。
……っと、ここでつまずいてしまうことが、ままあります。せっかくTRIZを使うのだから「誰もが驚くようなアイデア」を出さなければいけないというプレッシャー。いえいえ、そういうプレッシャーは、技術者の思考力を妨げて、せっかく生まれそうな斬新な視点を殺してしまいます。まずは気楽な気持ちで取り組むことを心してください。また、ふせん紙にはできるだけ「ポンチ絵」というか「イメージ図」で書くようにしましょう。その方が、後で振り返るときに直観的に分かりやすいからです。ただ、ここでは記事の関係上、一行見出し的なアイデアを例として挙げるに留めます。
例えば……。
- 「分離原理」:例えば、パッドでディスクを挟み込む部分と、放熱する部分を分けられないか?
- 「ダイナミック性原理」:パッドをもっと柔らかい素材で作れないか?
- 「アバウト原理」:自動ポンピング動作することで、発熱量を抑えられないか?
- 「排除・再生原理」:発生した熱を回収して、車のエアコンなどに使えないか?
- 「不活性雰囲気利用原理」:パッドの周りを冷却ガスで覆いこむことはできないか?
- 「先取り作用原理」:あらかじめ(常に?)パッドを冷やしておく。
- 「機械的振動原理」:常に一定の力でディスクを締めずに、振動を与えて停止させる、など。
文字情報だけでは、なかなか発想が浮かばない場合も多いでしょう。そのために先のGoldfire Innovatorでは、それぞれの発明原理のイメージ図と実際の特許事例を図示してくれますから、それらを使うのも1つの方法だと思います。
いかがですか? このような思い付き程度のアイデアを出しながら徐々に思考のレベルを上げていくことが、優れたアイデアを生み出すコツなのです。GEを興したエジソンいわく「優れたアイデアは、生まれてくるのではなく探すものであり、育て上げるものである」。まさに、1%のひらめきと99%の努力ということですね。
次回3回目は、TRIZのもう1つの柱である、他分野の知恵を借用して考える方法について書く予定です。それまで、皆さんも先の発明原理に沿って、どのようなアイデアが出てくるかお試しくださいませ。
Profile
桑原 正浩(くわはら まさひろ)
熊本県生まれ。1985年鹿児島大学卒業。KYB(カヤバ工業)株式会社、オムロン株式会社で研究開発や商品開発に勤務後、技術問題解決コンサルタントとして独立。現在は、株式会社アイデア、コンサルティングセンター長。実務型TRIZコンサルタントとして、国内外企業の技術開発テーマの創造的問題解決のコンサルティングに携わる一方、大学や産業振興財団の中小企業支援育成事業、日科技連の次世代TQM構築PJなどでも活躍中。「TRIZで日本の製造業を元気にする」が合言葉。
著作物に「効率的に発明する:ロジカルアイデア発想法TRIZ」(SMBC出版)、「使えるTRIZ」(日刊工業新聞社「機械設計」連載)、韓国では「TRIZによる論理的問題解決:アイデアレシピ」(韓国能率協会出版)がある。ブログ「TRIZコンサルの発明的日常閑話」
Twitterアカウント:@kuwahara_triz
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