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成果を求め過ぎると失敗する! 町工場2代目共同体マイクロモノづくり 町工場の最終製品開発(11)(2/2 ページ)

大手企業の下請けを忠実にこなすのみでは未来はない。町工場の2代目リーダーを集めて共同体を結成し奮闘し続ける。

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発電会議が生まれた理由

 OGNの仲間でいろいろと話し合いをする中、「新たなお客さまを開拓するためには、新たなお客さまの言葉を理解し、それを受け止めることが必要と感じるようになった」と石原氏は言います。

 従来のお客さまなら、図面に基づいて会話することができましたが、新たなお客さまの中には、図面を用意していない場合もあります。そうすると、抽象的な表現の会話からお客さまが望まれていることを理解していき、具体的なイメージを提案するということが必要になってきます。

 一方、仲間内で単に話をしているだけでは、新たな発想が生まれません。「ユニークな発想の方との会話についていけない……」と実感していく中、何とかしなければいけないという思いが石原氏に募ってきました。

 そこで、「製造業以外の方との交流を深め、意見交換できるような場を作ろう」という発想が生まれ、「発電会議」という場を生み出すに至りました。この発電会議では、メンバーの知り合いの方で、製造関係ではない方(大学生、商社勤務、メディア関係者など)にも声を掛けるようにしています。

 実際参加された方々同士で対話しやすいよう、チームを作り、ワークショップを進めて発表するといった形式にしています。業界を越えての対話が生まれて、交流も深まるという体験もできるのです。われわれenmonoも会に参加していますが、その面白さや楽しさを実感しています。

ソーシャルメディア活用と被災地支援

 OGNとenmonoでは現在、被災地向けの製品開発ボランティアに取り組んでいます。被災地で実際に活動するボランティアからenmonoに「復興支援に協力してもらえないか」と問い合わせがきたことからスタートしました。

被災地向けの製品開発ボランティア
被災地向けの製品開発ボランティア

 その夜のうちに、enmonoと石原氏とで、Skypeを使ったミーティングを行い、「cacoo」というクラウド上で作図ができるツールを使って簡単な概念図を作りました。また、Facebook上に被災地向けの製品アイデアを集約するグループも作り、仲間内で議論を始めました。

 しかし、日々現地のニーズが変わってくるため、現地のニーズをリアルタイムに集約することはいったん止めて、石原氏がその当時受講していたマイクロモノづくりのセミナー(enmono主催)で企画・マーケティングをした製品開発にシフトしました。

 また、それとは別の被災地支援策として、東北地方在住で実際に被災された経験を持っているのエンジニアを東新製作所で採用し、一緒に製品開発に取り組むということも企画し、Webサイトで情報発信したところ、メディアにも取り上げられました。

 しかし残念ながら現地の雇用ニーズとはマッチングしていなかったようで、応募がありませんでした。そこで、実際に石原氏が現地に入り、採用活動をする予定になっています。

 ボランティアの方とお話しし、現地のニーズを探っていくと、物資やお金の支援以上に、「仕事を生み出し雇用を作る」といった支援が求められつつあることが分かりました。復興は先が長く、夢を持って生きて行くためにも、仕事を一緒に作り出していくというような支援がいいのではないか、という考えにいまは落ち着いているとのことでした。

 実際、東新製作所含め、中小企業は、震災の前から事業は苦しい状況でした。そして、何とか仕事を作り出していかなければ……、ということで石原氏はさまざまな挑戦をしてきました。その経験を生かし、被災された地域の方々とも手を組んで、新しい仕事創出に挑戦していければと、石原氏、そしてわれわれも強く思っています。

 そして、被災経験を基に開発された、本当に必要で役に立つ、そのような製品を作り出し、日本だけではなく世界中へ展開したいという夢もあります。

 夢実現のために、Facebookなどで知り合う人を増やし、議論を深められる方々と、発電会議で実際にお会いし、製品開発へとつなげる活動をする。そのようなことも可能になってきています。

これからの町工場は、マーケティングや企画力が武器

 ここで今回の石原氏の事例について、マイクロモノづくりのフレームワークに当てはめて整理してみましょう。

マイクロモノづくり
マイクロモノづくりにおけるバリューチェーン(enmono社資料より)

 まず企画がなく、いきなりかわいい猿のイラストをレーザー加工機でカットするなどして、製品を作ってしまいました。資源確保、製造に関しては自社で担うことができるため、このような事態になってしまったのです。そして、マーケティング、販売に関しては、やり方が分からないということもあり、ほとんどど行っておらず、結果として販売に至らない、という結果に。

 石原氏自身は、この経験を反省し、企画とマーケティングに力を入れる必要性を感じ、先述のセミナーを受講。大田区の助成金を活用しながら、セミナーの中で実際に企画からマーケティングを学んで、試作品作りにも挑戦しました。セミナーで事業計画まで作り上げているので、後は試作品の反響を確認しながら、営業を進めるだけです。

 もともと町工場は、ダイレクト感やスピード感があるので、企画やマーケティングを身に付けると、それが強い武器になります。

 発電会議については、石原氏のアイデアにより実施してきた内容をenmono(われわれ)とともにさらにブラッシュアップしつつ、今後は毎月開催していく予定です。そして、その中で生まれた交流から、実際の製品開発につなげていくことを企図しています。

 「何かを生み出したい」。そういうクリエイティブな人たちが集まる場となり、そこから何か製品を生み出し、販売までつなげていく。これがOGNやenmonoが目指すところなのです。

 そして、この発電会議のような仕組みが日本中に広がっていけば、日本中の中小企業が活性化するのではないでしょうか。明るい未来を目指して、これからも発電会議は開催されていくでしょう。

 とにかく、まずは「何かを生み出したい」人に集まっていただきたいと思いますので、読者の皆さんもご興味あれば、Facebookのグループページもご覧になっていただき、気軽に参加してみてください。さて、ここからどんな製品が生まれてくるか、いまから楽しみです。


Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan



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