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Objet社のプリンタ、ABSライクな部品が造形可能にオブジェット社の3次元プリンタ用新材料発表

オブジェットは同社の3次元プリンタ専用の新樹脂材料を発表。ABS樹脂に近い物性を持つ材料など。現在は樹脂のみの造形だが、将来は金属や木材も同社で対応する可能性があるのかも尋ねた。

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 オブジェットジオメトリーズ(Objet Geometries Ltd:以下、オブジェット)は2011年5月18日、同社の3次元プリンタ用新材料に関する発表会を行った。

 新規材料として、純透明(透過)色の樹脂「Objet VeroClear(オブジェット ベロクリア:以下、VeroClear)」を発表。VeroClearは、寸法安定性が高く、かつ高い透過率で部品が造形可能で、LEDライト用のカバーなども造形可能。耐熱温度は50℃まで保証している。対応機種は、ConnexシリーズおよびEdenVシリーズ。2011年7〜9月ごろには、全Edenシリーズに対応予定とのことだ。

VeroClear
VeroClearの造形サンプル

 「Connex500」用の新しいデジタルマテリアル(装置内で2種の材料を混合するもの)としては、「Objet ABSライクデジタルマテリアル(RGD5160-DM)」が登場。じん性があり、ABS樹脂に近い物性となっているとのことだ。耐熱温度は65℃だが、オーブン処理をすることで90℃まで高まり、リアルなABS樹脂により近い物性になるとのこと。こちらは、ほかのConnexシリーズ機種にも対応予定。

ABSライク
ABSライクデジタルマテリアルの造形サンプル

 2011年7〜9月ごろには、新しい耐熱材料「RGD525」を発表予定。耐熱温度は65℃としているが、オーブン処理をすることでさらに80℃まで耐えるとのことだ。対応機種は、ConnexシリーズおよびEdenVシリーズとなる予定だ。

デスクトップ型3次元プリンタと新材料

 同社は2011年2月3日に、デスクトップ型3次元プリンタ新製品「Objet24」および「Objet30」をリリースした。2機種は、従来機種「Alaris30」の後継(2機種に枝分かれ)という位置付けとなる。

objet24-30
デスクトップ型3次元プリンタ Objet:2機種の外観は同様

 積層ピッチ(Z軸)は、28μmで、精度は約0.1〜0.2mm(形状や寸法などで異なる)。プリンティングヘッドは2ユニット。

 本体寸法は2機種とも同じで、825×620×590(単位は「mm」。X、Y、Z)、重量は93kg。スペックの違いは主に以下の通り。

  • Objet24:造形サイズは234×192.6×148.6(mm)まで。材料はVeroWhitePlusのみ対応。
  • Objet30:造形サイズは294×192.6×148.6(mm)まで。VeroWhitePlusほか4種の材料に対応。

*サイズ(mm)は、X、Y、Z。詳細なスペックは同社代理店のWebサイトで確認可能。

 新材料の白色の樹脂材料「Objet VeroWhitePlus(オブジェット ベロホワイトプラス:以下、VeroWhitePlus)」については、その2機種で先行して採用したが、このたび同社の3次元プリンタ全機種に対応したとのことだ。

 VeroWhitePlusは、半透明硬化樹脂「Objet VeroWhite(オブジェット ベロホワイト:以下、VeroWhite)」の改良版で、寸法安定性を高め、吸湿性を大幅に抑えた。「これまでのVeroWhiteは、例えば長時間外気にさらすと、湿度や温度により変形してしまうことがあったが、その点を大幅に改善した。また従来材料『Objet VeroGray(オブジェット ベログレイ)』は、オブジェットの材料の中では比較的耐熱性が高く、かつ強度も高かったが、その機能も踏襲した」(オブジェット アジアパシフィックジャパン 日本担当リージョナルマネージャー 殿岡敬久氏)。

オブジェット社と材料開発

 オブジェット社は、2010年にワールドワイドな顧客に対して自社調査を実施。その結果が以下の図だ。

オブジェット社顧客調査
オブジェット社の実施した顧客調査結果(2010年調査。全世界対象)

 日本でも同様な調査をしたが、ほぼ同じ結果だったという。今回発表した新材料についても、上記の顧客調査に基づき優先順位を決め、開発を進めたとのこと。2011年中に、新材料をオブジェット社各機種に順次対応させていく。

 同社は、イスラエル本社の近くに材料専用の工場を備え、そこで独自開発を行う。「同業他社は材料開発を外部に託すケースが多い」(殿岡氏)。本社における材料専門の開発者も大幅に増員したということだ。

殿岡敬久氏
オブジェット アジアパシフィックジャパン 日本担当リージョナルマネージャー 殿岡敬久氏

 樹脂以外の、例えば金属も材料として採用される可能性があるのか、殿岡氏に尋ねてみたところ、次のように回答があった。「光(UV)硬化型の金属粉末のようなものができれば、それは当然可能。果たしてそれが、現段階の技術で実現ができるのか? という点は、まだ何ともいえないが……。金属に限らず、何か特殊な物質が造形できるかどうかは、基本的に、インクジェットのノズルから液体が吐出でき、かつそれが光で瞬時硬化できるかどうかがポイントになる」。このポイントさえクリアすれば、例えば木材も造形できる可能性もあるという。ただし、たとえ技術的には可能であっても、同社機種の造形材料として採用されるかどうかは、今後の顧客ニーズによるところだ。

 同社の3次元プリンタ導入実績は、経済不況の影響はあまり受けず、順調に右肩上がりをキープしているとのことだ。

 日本国内ではこれまで300台近く(200社程度)導入されたという。従来は自動車、工業機械関連の導入が多かったが、ここ数年では、さまざまな分野に広がってきており、特に大学や高等専門学校などの教育機関、医療系で導入が増えているとのことだ。

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