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「スプーンから宇宙戦艦まで」目指す? 町工場マイクロモノづくり〜町工場の最終製品開発〜(10)(3/3 ページ)

「日本国内で将来、どういうモノづくりが必要とされるか」――そんな思いから「アナハイム計画」は始まった。

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「心技隊」

 緑川氏は「心技隊」というグループの隊長をしています。心技隊はもともと、町工場を主とした4社の集いから発足したもので、HPを見ると、「お金より先に心でつながることが大事だ」という言葉があり、利害ではなく理念でつながる連携グループなのです。

 この心技隊では、直接お金もうけにはならないけれど、今までにはない新たなモノづくりに取り組んで、町工場の可能性を追求しています。そしてこのようなユニークな取り組みをしているということが、メディアの関心を引きつけ、知名度アップにつながるという効果になっているようです。

 これからのモノづくり企業は、かつてない未来を自ら模索して作り出していかなければならない状況ですから、心技隊の試みはとても参考になるものではないでしょうか。

 また最近では、不景気や自粛という風潮で経済が回らないことを憂い、「チーム無駄遣い10%」という呼びかけもしていて、仲間を募っては、無駄遣いと称する経済活動をしています。ある意味、公共投資ともいえますね。

「チーム無駄遣い10%」概要(同社Webページより引用)

“低迷する景気を回復させるためには、日本人の預貯金のうち3%が市場に出回れば、あっという間に景気は回復するという試算がある。わずか3%、消費税率よりも低い。みなでその3%分、少し贅沢やちょっと無駄遣いをすれば経済は低迷せずにすむ。

景気が回復した後に、また貯めればいい。今はどんどん使うときだ。”(原文ママ)



 「自分だけが良ければいい」とか、「お金さえ儲かればいい」という価値観ではない、緑川氏の考えに共感して、チームメンバーは増えているとのことです。共感する方がいらっしゃれば、隊員募集もしているので応募してみてはいかがでしょうか? 日本中の皆がこのような考え方になり、手を差し伸べ合うような関係になれれば、日本の未来は明るいものとなるでしょう。

第三者の助けも借りたい

マイクロモノづくりにおけるバリューチェーン
マイクロモノづくりにおけるバリューチェーン(enmono社資料より)

 ここで今回の緑川氏の事業について、マイクロモノづくりのフレームワークに当てはめて整理してみましょう。

 まず企画に関しては、持ち込み企画が多いです。さまざまなお客さんの発案を受けて、緑川氏が資源確保、製造を担います。そして、Web販売も緑川氏ご自身が実施しています。緑川氏いわく、「正直言って成功したとまではいえない」。

 同氏はインタビューの中で、作り出した製品に関するマーケティングやブランディングが弱いのでは……、といっていました。販売が難しいというのは、町工場に共通する悩みです。

 ですが、製品ではなく、ケミカルウッドの材料販売に関しては、緑川氏の予想に反して、売り上げが伸びています。そして、売り上げが伸びる中で、お客さまがより利用しやすいビジネスへと転換させました。これは、Webでの顧客対応と、要望に応えるための切り分け加工などを同時進行できる、ミナロならではの特徴を生かしています。町工場はこのダイレクト感、スピード感が武器になります。

 前述の心技隊では、企画、デザイン、マーケティング、ブランディングを持つ、外部のリソースを活用しながら、挑戦的なモノづくりに取り組んでいます。年を重ねるごとに認知が広がり、ブランドも構築しつつあって、今後のビジネス展開拡大が期待できます。

 発案のとっ掛かりは、さまざまな外部のクリエーターさんたちですが、今まで付き合いのなかった方々との積極的なコラボにより、ユニークな製品が出来上がっているといいます。

現代美術家と組んだ作品
現代美術家と組んだ作品

 緑川氏自身が、新しいものに挑戦するという強い志を持っていて、その思いに呼応して仲間が集まり、人的なネットワークが緩やかに形成されています。そして、そのネットワークに可能性を見いだし、ユニークな企画が持ち込まれ、困難な課題に挑戦してモノづくりに取り組み、製品を作り上げていきます。その評判がまた、次の仕事につながるという流れに。

 そうして、ミナロのマイクロモノづくりはうまく回っているのです。


Profile

宇都宮 茂(うつのみや しげる)

1964年生まれ。enmono 技術担当取締役。自動車メーカーのスズキにて生産技術職を18年経験。試作メーカーの松井鉄工所にて生産技術課長職を2年務めた。製造業受発注取引ポータルサイト運営のNCネットワークにて生産技術兼調達担当部長として営業支援に従事。

2009年11月11日、enmono社を起業。現在は、製造業の新事業立上げ支援(モノづくりプロデューサー)を行っている。試作品製造先選定、部品調達支援、特許戦略立案、助成金申請支援、販路開拓支援、プレゼン資料作成支援、各種モノづくりコンサルティング(設備導入、生産性向上のためのIT化やシステム構築、生産財メーカーの営業支援、生産財の販売代理、現場改善、製造原価、広告代理、マーケティング、市場調査、生産技術領域全般)など多岐にわたる。

Twitterアカウント:@ucchan



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