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“新市場で大ヒット”はこう作れ! 脱・縦割り型開発グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(5)(3/3 ページ)

新商品が売れない理由はガチガチの縦割り業務分担のせい!? 日本的デザインレビューの慣習を超えて「ステージゲートモデル」の開発プロセスを実現するためのヒントを紹介します。

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2)組織間のコラボレーションと商品コンセプトの具現化を支援するプロダクトマネジャー制

 組織を横断した協調開発がやりづらい問題や、商品コンセプトの首尾一貫性が保てない問題に対して、「プロダクトマネジャー制」で対応する考え方があります。これは商品コンセプトやブランド価値の重要性や、ハードウェア・ソフトウェアの複雑な連携開発が必要とされる製品や業種において、採用されているケースが見受けられます。

 商品コンセプトやブランド価値に関する首尾一貫性が重要である理由は、次の自動車開発の事例研究で説明されています。

 「外的首尾一貫性は、製品の機能、構造、ネーミング等がユーザー側の目的、価値観、生産システム(ユーザーが製造企業の場合)、ライフスタイル、使用パターン、自己の個性等とどれだけ適合しているかということである。そして、これらの一貫性を確保するために、部門横断的に権限が及ぶ重量級プロダクト・マネジャーの役割が重要になってくる」(参考文献3)

 開発組織を組織機能視点とプロジェクト視点で類別した体系を図5に示しました。

 (1)(2)(3)(4)の順に機能別組織からプロジェクト型組織の傾向が強くなっています。日本の製造業のほとんどの開発組織は(1)または(2)です。

 (2)は、プロダクトマネジャー(PM)は存在するのですが、各部の部長(FM)よりも権限が弱く、どちらかというと調整役のような存在です。

 (3)の重量級プロダクトマネジャーは、各部の部長と同格かそれ以上の権限を持っており、商品コンセプトや開発プロセスにおける多くの意思決定を行うことができます。

 (4)はさらにプロジェクト型組織の特徴を強くしたもので、各部のリーダーはプロジェクト専任となり、プロダクトマネジャーと協調してプロジェクトチームを形成し、新商品のコンセプト企画から市場導入までの責任を負います。

 プロダクトマネジャーやプロジェクトチームが、「ゲート」における客観的かつ明確な意思決定を行います。

 このように、プロダクトマネジャー制は、ステージゲートモデルによる新商品開発プロセスを実施するための前提条件であると考えることができます。

図5 製品開発組織の4つのタイプ
図5 製品開発組織の4つのタイプ
出典:藤本・クラーク『増補版 製品開発力』(ダイヤモンド)

3)製品プラットフォーム戦略により、最小の製品開発で最大のアウトプットを出す

 最後に製品プラットフォーム戦略プロセスについても触れておきます。製品プラットフォーム戦略は、製品バリエーションに対して変動しない部分を固定部位・準固定部位とし、顧客の仕様や競合と差別化する部分を変動部位として、明確に分離し、多くの製品バリエーションを効率的に開発する手法です。

 この開発手法のメリットは、開発工数を大幅に削減できること、部品集約により部品調達コストを削減できること、モジュラー化が促進できるので水平分業がやりやすくなること、などです。

 図6は、複合機(複写機)における製品プラットフォーム例ですが、複写速度だけによる変動部分を製品プラットフォームとし、それ以外の構成部品を仕様に合わせて変動させて製品バリエーションや競合に対する差別化を図っています。変動部分だけを開発することで、最小の開発で最大のアウトプットをねらうことができるということです。

図6 製品プラットフォーム戦略
図6 製品プラットフォーム戦略

 今回は、新興国で売れる新商品開発プロセスとはどうあるべきかについて考察してきました。次回は、この新商品開発プロセスを支援するための、ITインフラコストを最小化するための考え方や動向についてご紹介していきます。


参考文献

  1. 宮正義著「ステージゲートプロセス成功の勘所」『日経ビズテック』(No.003)
  2. 榊原清則「技術革新型企業創生プロジェクト(ルネッサンスプロジェクト)『10・15シンポジウム』資料(慶応大学、)
  3. 長沢伸也・木野龍太郎、「自動車企業におけるプロダクト・マネジャーの役割と知識に関する実証研究」『立命館経営学』(2001年9月)
  4. 藤本隆宏/キムB.クラーク、『増補版 製品開発力』、ダイヤモンド社


筆者紹介

三河 進(みかわ すすむ)
NECコンサルティング事業部
http://www.nec.co.jp/service/consult/services/07.html
NCPシニアビジネスコンサルタント
システムアナリスト(経済産業省)
全能連認定マネジメントコンサルタント
PMP(米国PMI)

精密機械製造業、PLMベンダー、外資系コンサルティングファームをへて、現職。
専門分野は、開発設計プロセス改革(リードタイム短縮、品質マネジメント、コストマネジメント)、サプライチェーン改革(サプライヤマネジメント)、情報戦略策定、超大型プロジェクトマネジメントの領域にある。
自動車・電機・ハイテク・重工などのPLM・SCMに関する業務改革プロジェクトに従事中。
論文「モジュール化による設計リードタイムの大幅短縮」で平成20年度の全能連賞を受賞。

おことわり

本記事は執筆者の個人的見解であり、NECの公式見解を示すものではありません。



世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



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