燃料電池をチップ上に実装、小型電池の置き換え狙う:スマートグリッド
固体酸化物形燃料電池(SOFC)はさまざまな燃料電池の中でも最もエネルギー変換効率が高く、燃料電池の欠点ともいえる貴金属触媒も不要だ。これまでは自動車用途などに向けた数cm〜数十cmのSOFCが開発されてきた。今回開発されたSOFCは数mmサイズであり、これまでにないさまざまな用途が開ける。
米Harvard Universityの研究グループは、145個の薄膜固体酸化物形燃料電池(SOFC)を搭載したウエハーを披露した。1つのチップ上に微小な燃料電池を作り込むことにより、小型の電池を置き換えることが可能になるという。
同大学の教授であり主任研究員を務めるシュリラム・ラーマナータン(Shriram Ramanathan)氏が率いる研究グループは以前に、固体酸化物形燃料電池に内蔵する薄膜を形成する技術を実証している。ただし当時は、寸法が小さすぎたために小型電池を置き換えるまでには至らなかった。しかし今回は、ボストンに拠点を置くプライベートエクイティ企業であるSiEnergy Systemsと共同で、この薄膜形成技術を改善することに成功し、デモを披露することができた。
同研究チームは、燃料電池チップの幅を100μから5mmに広げ、チップ上に厚さ100nmの薄膜を形成して、超小型の燃料電池を製造した(図1)。これにより、155mW/cm2という高い出力密度を得た(510℃の条件下)。
研究グループは今後、水素以外の燃料を利用できるナノ構造の燃料極(アノード)を開発する予定だ。同時に低温動作も狙う。この開発が成功すれば、小型電池を置き換える超小型燃料セルを実現できるという。
今回のプロジェクトは、米国立科学財団(NSF:National Science Foundation)と、NSFの国家ナノテクノロジー基盤ネットワーク(NNIN:National Nanotechnology Infrastructure Network)の参加メンバーであるHarvard University Center for Nanoscale Systemsから資金提供を受けている。
【翻訳 田中留美、編集 @IT MONOist】
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