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“全世界生産停止”を防ぐサプライチェーン管理リスク対応で見る企業の“明暗”(1)(2/3 ページ)

東日本大震災から1カ月。災害後の復旧状況は各社各様ですが、この差はどこから生まれてきたのでしょうか。予期せぬサプライチェーン分断に、どう立ち向かうべきかを前例を交えて考えていきます。

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2. サプライチェーンの責任者(Chief Supply Chain Officer)の対応

 エリクソンとノキアの事例から、予期せぬ事態に対するサプライチェーンの強度、その対応プロセスの差が事業にとっていかに大きな問題であるか、理解いただけたのではないでしょうか。

 こうした環境に、いまサプライチェーンの責任者(CSCO)はどう対処しているのでしょうか。

 前述のように、IBMは、2009年に「Global Chief Supply Chain Officer Study」として、北米、西欧、およびアジア太平洋地域の企業のサプライチェーン戦略およびオペレーションを担当するシニアエグゼクティブ約400人を対象にインタビューを行いました。調査結果は、サプライチェーンとその管理に携わるエグゼクティブがサプライチェーンの運営に当たり、大きなプレッシャーを受けていることを物語っています。

 結果を見ると、担当エグゼクティブは、従来型のサプライチェーン戦略やサプライチェーン設計ではそれらの難題に対処することがますます困難になりつつあると感じていることが分かります。

 とはいえ、各社ともこれらの課題をおろそかにしてきたわけでは決してありません。今回の、同じ調査でも、サプライチェーンの改善プロジェクトが活発に行われていることは明らかです。しかし、今回の調査結果は、顧客起点あるいは可視化された効率的なサプライチェーンを構築するだけではもはや不十分であることを示唆しています。「リスクマネジメントは、サプライチェーン戦略の基礎をなす要素となった」と言っても過言ではないでしょう。

 この調査の中で「リスクマネジメント」は、サプライチェーン責任者にとって2番目に重要な課題として浮上した。世界では60%、日本では73%がリスク管理を重要な課題に位置付けています。これは一見、財務部門トップに対する調査かと見間違うような驚くほど高い順位です。顧客ニーズの高まりやコスト増加もさることながら、サプライチェーンにおけるリスクの増大にリーダーたちは神経を尖らせていることがよく分かります。

図1 世界と日本のサプライチェーン責任者の問題意識の比較
図1 世界と日本のサプライチェーン責任者の問題意識の比較

リスクシナリオも織り込んだ計画・管理を実践

 調査資料によると、リスクマネジメントが重要であるという点では一致しているものの、アプローチに関しては意見が分かれています。

 世界では92%、日本では87%の企業が何らかの形でリスクやパフォーマンスを管理をしていますが、正式なパフォーマンス監視にリスク指標が組み込まれている割合は世界で42%、日本ではたった35%に過ぎません

 サプライチェーンのグローバルリーダー(注)は計画自体にリスクマネジメントを組み込み、情報技術を駆使することで供給の途絶といった危険の監視・対処などの一歩進んだアプローチを取り入れています。

注:本調査では、AMR Research社のサプライチェーントップ25に選ばれたうち、回答を寄せた17社をグローバル・リーダーとしてベンチマークしています。


図2 パフォーマンス管理、リスク管理にどのように取り組んでいるか
図2 パフォーマンス管理、リスク管理にどのように取り組んでいるか

 では、いま私たちはどのようにリスク管理を進めていくべきでしょうか?


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大手だけでなく、独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。


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