設計トラブルの98%が「トラブル三兄弟」:甚さんの「想定内だぜぃ!トラブルは」(1)(1/2 ページ)
今回の事件をきっかけに、設計品質についてあらためて考える。メディアでは、「想定外」という言葉がよく使われたが……。
当連載の登場人物
根川 甚八(ねがわ じんぱち)
根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん
国木田良太(くにきだ りょうた)
ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。80年代生のイマドキな若者。機構設計者。通称、良君
編集部注* 本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
「9.11」――これは、2001年9月11日に起きた「アメリカ同時多発テロ事件」です。そして、2011年3月11日に発生したのが「東北地方太平洋沖地震」でした。「3.11」と簡易に呼ばれるには長い年月がかかりそうです。
前者の原因は明らかに人間(テロ)であり、その再発防止には、技術者というよりも、国家の、いや、世界中の組織体におけるセキュリティ強化が問われることになりました。つまり、「1000年に一度の災害」ではなく、あくまでも、「テロ」と呼ばれる明らかな発生原因を抑制すれば済む事件です。あえて、技術者に望む第一の技術は、検査装置の強化でしょう。
しかし、後者は、「1000年に一度の災害」であり、その発生原因を抑制することはできません。人類は一度、その事件を受け入れなくてはならないのです。技術者に望む第一の技術は、その許容力です。
許容力とは、耐震性、多重安全、自動復帰など多くの設計品質を含んでいます。
テレビでは、「想定外」の言い訳を繰り返す関係者や、福島第一原発の住所も知らない一部の学者が連日登場しています。かつて、平穏時の原発施工者や現場作業者と会うことなく、一度も親睦会に出席したことがない人たちのコメントよりも、今回の事件をきっかけに、たった1つのキーセンテンスを甚さんに解説していただくことにしましょう。
それは、……「全てのトラブルは想定内」です。
べらんめぇ! 「1000年に一度の大災害」だとぉ。「想定外」だと? あん? ギャンブルやってんじゃねぇんだよ。ヒトサマが死んでんだよ! 「福島第一原発は、人災だ」っていっているんだよ、オレサマは、あん?
甚さん、甚さん。その話は現段階ではまずいですよ。しかも、いくら甚さんが優秀な下町の職人でも、今、個人の推定は控えるべきです。発言するなら、それは、「デマ」と同じです。僕は怒りますよっ!!
なんだテンメェは? あん? 生意気になったじゃねぇかい。しっかしよぉ、確かにそうだ! この前もオレサマは自分で、『1年間でいい、「個」を捨てろ!』と命令したよな。許してくれ。
甚さんのそういうところが僕は好きです。今回は、僕からリクエストしていいですか? 甚さんは、かつて、社告・リコール企業をののしっていましたよね? 「想定外のトラブルなんてねぇぞ!」と。
べらんめぇ! よく覚えているじゃねぇかい。
でしたら、今回の事件をきっかけに、原発ではなく、僕らでも理解できて、身の回りの商品設計に役立つ「匠のワザ(1)」を教えてください。
オメェのこと、実力のねぇ院卒かと思ってたけどよ、人を説得するのには長けているなぁ。あの総理大臣と交代しろ! そんじゃ、始めっかぁ!
甚さんのレクチャーの中から、この前僕が宣言したように、仲間を募って、若き技術者ができる「What」「How」を模索します!
なんだか知んねぇけどよ、張り切っているじゃねえかい? もしや、オメェ、エリカちゃんと……。ンゲフンッ、まぁ、いいかぁ……。まずはよぉ、トラブルってやつはよぉ、ここに隠れてんのよ。それは、よぉ、「トラブル三兄弟」だよ。
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