全体最適を目指すグローバルPLMのグランドデザイン:グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(4)(2/3 ページ)
「国内予選」で疲弊している場合じゃない! グローバルで最適な調達・製造を実現する基盤「グローバルPLMのグランドデザイン」とは
2. あるべき姿を目指したグローバルPLM改革
1)現状改善型でなく、トップダウン型のアプローチ
これまでの日本の製造業は、ボトムアップ的な現状改善型のアプローチが主流であることを説明しました。従来ありがちな、部門や拠点別に3次元CADツールやPDMシステムを導入するといった意思決定のやり方やアプローチ方法がその典型です。
現在のように急速に変化するビジネス環境下では、現状改善で少しずつ効果を刈り取る、といった方式では事業戦略上の必要な達成時期や効果の獲得度合いが合わなくなってきています。
スピーディーに改革を実現するためには、現状改善型ではなく、トップダウン的に「あるべき姿」を描き、それを実現するための改革のアプローチが必要になります。
しかし、現在の日本の製造業は、過去に構築した情報システムやコード体系、業務プロセスが邪魔になり、容易に改革を実行しづらい状況にあります。だからこそ、あるべき姿と現状のギャップをあらためて認識し、現状の制約を踏まえて、企業としての進むべき道を探るべきであると考えます。
2)改革コンセプトを基にした業務モデリング
あるべき姿は改革コンセプトとして、数枚のイメージにまとめます。現状(AS-IS)とあるべき姿(TO-BE)が対比できるようにし、業務プロセスが現状に対しどのように変化し、それによりどのような効果が得られるのか、を端的に説明したものです(本稿の3で例を説明)。
改革コンセプトを考えるのは容易ではありませんが、ITベンダやコンサルタントから提案を受けるのも一つの方法です。その業種では一般的でなくても、他業種ではすでに実施されているものもあり、リファレンスになる情報は多くあります。他社や他業種で実績があり、成功しているソリューションや事例のことをベストプラクティスと呼びます。
当然、現状とあるべき姿にはギャップがあり、そのギャップを埋めるための施策を考案する必要があります。これを考案する際に、現状の組織、業務プロセス、情報体系、改革プロジェクトの制約(期間やリソースなど)を踏まえて、最適な施策を選択します。
業務モデルとは、改革コンセプトを業務レベルにブレークダウンしたもので、理想的な業務のやり方を抽象的に表現し、業務プロセスフローや業務要件などとしてまとめたものです。
業務要件とは、新業務を成立させるために必須となる要求のことで、5要素(インプット、アウトプット、処理手順、支援ツール、制約)で記述するのと、ヌケモレを防止できます。
最終的に業務要件を支援するためのシステム機能要件としてまとめる、といった手順で、改革コンセプトをブレークダウンし、具体化していきます。
3)グローバルPLMグランドデザインの改革コンセプト例
グローバル開発・製造を指向した、技術情報プラットフォームのあるべき姿・改革コンセプトの一例をご紹介します。
この例は、技術情報プラットフォームとして、グローバルで統一されたBOM(部品表)システムを採用して、世界同時開発マネジメントを実現することを改革コンセプトとしています。グローバルで部品コード体系も統一されていますので、世界中の製造拠点から同じ情報にアクセスできます。従って、製品のBOMがこのシステムに登録さえされていれば、どの製造拠点でも生産計画を立案し、生産を行うことができます。また、世界中の生産工場における部品調達コストも一元管理されていますので、同じスペックの電子部品を調達するのに、どこから調達し、どの製造拠点で生産すれば、世界最安値で生産できるかをシミュレーションすることも可能になります。しかし一方、業務プロセスは、製品開発部門別に異なる業務プロセスを採用することを許容しています。
技術情報プラットフォームとしてのBOMシステムはグローバルで統一しますが、それにアクセスする業務アプリケーションは、製品や事業別により最適なものを活用する、全体最適と個別最適の両方を取り入れた柔軟な考え方です。
上記は、あくまでの一つの改革コンセプト例ですので、この要領で企業ごとの戦略に合わせたあるべき姿や改革コンセプトを策定していくことが重要です。
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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