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CAEは70年代末から! 部門別で使い方それぞれ踊る解析最前線(4)(1/2 ページ)

CAEを長年活用する重工業メーカー IHIは、航空・宇宙、産業機械、船舶……と、携わる業種・分野が幅広い! それぞれ最適なCAEの使い方を模索する。

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 IHI(アイ・エイチ・アイ/IHI Corporation)は、日本を代表する重工業メーカーである。その事業フィールドは広範に広がり、製品もまた膨大多岐にわたる。特にわが国の宇宙開発の最初期から参画してきた航空・宇宙分野のターボポンプやガスジェット装置、あるいは産業・社会の根幹を支えるエネルギー分野の発電用ボイラー、そして多様なプラント、産業機械、船舶などの開発製造においては、技術・実績ともに本邦産業界を牽引する存在であり続けている。そんな同社だけに、開発設計業務への解析技術の導入も早かった。具体的には、日本に構造解析という新技術が紹介された1970年代後半には、これをいち早く導入。実務における活用を開始していたのである。


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IHI ものづくり改革推進本部 企画管理グループ 部長 笠 俊司氏

 構造解析の専門家として同社に長く勤務し、現在はものづくり改革推進本部で部長を務める笠 俊司氏は語る。「わたしがIHIに入社したのは1988年ですが、1970年代末ころには実務での活用が一部始まったと聞いています。日本に構造解析が紹介された当初、その技術を導入された先生方とともに“構造解析を学んだ技術者たち”が数多く当社へも入社し、解析技術の展開の基盤を築いてくれたんですね」。

 いわば日本の工業界における解析技術活用の黎(れい)明期からこれに取り組んできたIHIだが、現在もなお、解析技術の運用において、規模、実績共に業界トップクラスの充実ぶりを示している。笠氏と同じく、ものづくり改革推進本部で主査を務める呉 宏堯(くれ ひろたか)氏は、長く航空宇宙関連の設計工学を専門としてきた技術者であり、解析についても軸振動などを中心に行ってきた。そんな呉氏に同社の設計部門における解析活用について聞いてみた。

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IHI ものづくり改革推進本部 製品競争力強化グループ 主査 呉 宏堯氏

 「当社で設計業務を行っている部門は、航空宇宙事業本部以下、総計12セクターほどあります。各セクターの解析の活用の度合いは部門ごとに異なり、また部門内でもプロジェクト内容によって変わってきます。しかし、例えばジェットエンジンの設計など、解析を実務に本格的に組み込んで活発に利用している分門では、解析の専門部隊だけではなく、設計部門の中で解析を行うスタイルが多くなっています。つまり設計者が自分の手元で、CAEと設計をシームレスに活用できる体制を整えているわけですね」。逆に、それほど解析を多用しない設計部門の場合は、外部関連会社や別部門の専門家に解析業務を委託するケースも多い。すなわち、情報システム部が統括する関連会社の解析専門部隊や、より高度で複雑な解析の場合は技術開発本部に属する基盤技術研究所などに委託しているのである。また、12セクター中最大の規模を持つ航空宇宙事業本部にも技術開発センターがあり、ここにも高度な解析を担う専門家集団が配置されている。

 「基本的に手元で解析を行っている部門でも、解析関連の作業量が大きく増えてくれば、例えばメッシュ切り作業だけ他部門や関連会社の専門家に委託することもあります。また、より高度な解析、先進的な解析が必要な場合は、技術開発部門が行うことも少なくありません。つまり、状況や開発内容に合せて、現場ではこれらを柔軟に使い分けているのです」(笠氏)。このようなIHIの組織構成は、一見複雑に入り組んでいるようにも見えるが、実は徹底して設計者の使いやすさを考慮した設計/解析連携体制となっている。こうした体制が編み出され、活発に運用されていることからも、長年実務で解析を使い続けてきたIHIの運用ノウハウの豊富な蓄積をうかがうことができる。

 「IHIで現状のような体制が確立されたのは、ここ数年のことです。CAEの精度向上に加えて、性能向上・信頼性向上・試作レスなどお客さまからの要求が急速に高度化し、これに応えるために解析が設計業務にどんどん取り入れられるようになったのです」(呉氏)。――では、同社の開発設計は具体的にどのような流れで進み、その中で解析はどんなふうに生かされているのだろうか?

日常的に使う解析から最先端のマルチフィジックスまで

 前述のとおり、IHIの事業フィールドは非常な広範囲に広がり、開発製品も極めて多岐に渡っている。当然、開発設計手法や解析の活用についてもさまざまなパターンがある。基本的に同社では“量産モノ”も多く取り扱っているが、“1点モノ”も多い。この中には開発の過程で試作機の製作を最小限にとどめるケースもあり、これが同社の開発の大きな特徴となっている。

 そして試作機の代わりになるのが解析である。もちろん、試作機を作らないからといって解析の結果だけに判断を委ねるわけではない。解析も盛んに使用するが、それ以上にエンジニアリングを重視しているのだ。つまり、多角的な解析の結果も含め、豊富に蓄積した設計知見によって総体的に判断することで、必要な性能なり仕様なりを確保できるノウハウがあるのだ。少なくとも解析結果だけを見て“要らない”と判断する設計者はIHIにはいない。同社において、解析はあくまで必要な時に必要な個所に使うべきサポートツールなのである。

 「仕様をどうするのか判断していくうえで、試作での実証ばかりが方法ではありません。例えば、過去の開発例との類似性という観点から類似評価する。あるいは要素試験の組み合せで考えたり、要素試験と解析の組み合せで見ていったりすることもあるでしょう。つまり、類似性と要素試験と解析のさまざまな組み合せを駆使していく。そこには当然、エンジニアリングの評価も入ってくるわけです」(笠氏)。いうまでもないことだが、重工業メーカーとして長い歴史を持つIHIでは、解析という技術が一般化する以前から多種多様なモノ作りを行ってきた。つまり“解析を使わないモノづくり”に関しても数十年に渡る豊富な蓄積があるのだ。この豊かな資産に基づいた堅固なエンジニアリング基盤が、解析を尊重しつつも無闇にそれに頼らない、効率的かつバランスの良い設計開発スタンスを育てている。

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