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溶接レスで自動生産する“俺自転車”マイクロモノづくり〜町工場の最終製品開発〜(6)(3/3 ページ)

俺仕様にカスタムできる自転車の商品化の裏側に迫る。従来の自転車にはなかった構造故に、苦労した分、メリットも

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収益を出すための重要事項

 1つ重要なのは、この自転車が“日本で生み出されたコンセプトとデザイン”であるということで、必ずしも、“日本での製造”にはこだわっていない点です。

 いまの時代、高いデザイン性を売りにしているPC製品の多くが、中国で製造されています。しかしそうだとしても、多くの人がその価値を感じて購入しています。mindbikeに関しても、同じだとわたしは考えています。

 一方で、ここまでの立ち上げで協力してくれた国内の製造業の関係者、他業種の協力者たちに対しては、「日本で製造することにより利益を得てもらう」ということではなくて、次世代スタンダードとなるだろうこの自転車が、世界に大量に出回ることによって生み出されるロイヤリティを彼らに分配するような利益シェアの形を模索しているとのことです。

 また、日本人が産み出した製品を海外で量産して収益を上げようと考えた場合、重要になってくるのは知財管理であると角南氏はいいます。

 自転車という製品の性質上、どこかの機構をブラックボックス化して製品をリリースすることはまず難しい。製品が市場に出回った段階で、似通った製品が出てくる可能性が非常に高いので、知財管理がキーになると考えているのです。ただ現状では、すべての意匠や特許を権利化しようとした場合、かなりのコストが掛かるために、知財の専門家がプロボノ(Pro bono:ボランティアの公益事業、または公益の法律家活動)としてプロジェクトに参画してもらえるように候補者を探しているとのことでした。

 特に意匠権や、構造に関する特許をできるだけ多く確保することで、仮に製品が世の中に出回っても、自分たちのグループの権利をきちんと主張できるように考えているとのことです(すでに意匠および特許出願済)。

 このことからも、マイクロモノづくりにおいて、知財の管理をすることは極めて重要なことであり、大きな収益源にもなることが、この事例からよく分かります。苦労して開発した製品が簡単にコピーされてしまうことを、少なくとも、国内や先進国においては防ぐことができるからです。

マイクロモノづくりの「燃料」とは

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輪行バックから取り出して組み立てる前のmindbikeと角南氏

 これまで紹介してきた事例に、共通して感じられることがあります。それは、マイクロモノづくりの中心人物となるモノづくりプロデューサーたちが、「お金だけのために動いてはいない」ということです。もちろん、第4回の「スカラバイク」の事例も、同じです。

 当然、会社を背負ってプロジェクトを引っ張るということは、結果として売り上げ、利益につながることを追求していかなければなりませんが、「お金だけ」で動いている人は皆無だということです。

 マイクロモノづくりの方法論では、プロデューサーとは必ずしも、その分野の専門家である必要はないと考えています。熱い思いを持ち、かつその思いを継続させることができる人間こそ、プロデューサーになるべきであると定義しています。「思い」こそ、手弁当で参加する企業や個人的な協力者を集合させるマイクロモノづくりの原動力である。角南氏の事例は、それを強く感じさせてくれました。

 このmindbikeは受注生産方式で生産を行う予定で準備中であり、先行予約で台数が見込めた段階で順次発売をしていく予定とのこと。

 角南氏は今後、マイクロモノづくりで最もハードルが高い「販売」というステージを迎えることになります。一人のデザイナの思いが、ここまで協力者を集められたことに、ぜひ注目していただきたいと思います。

関連リンク:
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MONOist×enmono 合同企画記事

Profile

三木 康司(みき こうじ)

1968年生まれ。enmono 代表取締役。「マイクロモノづくり」の提唱者、啓蒙家。大学卒業後、富士通に入社、その後インターネットを活用した経営を学ぶため、慶應義塾大学に進学(藤沢キャンパス)。博士課程の研究途中で、中小企業支援会社のNCネットワークと知り合い、日本における中小製造業支援の必要性を強烈に感じ同社へ入社。同社にて技術担当役員を務めた後、2010年11月、「マイクロモノづくり」のコンセプトを広めるためenmonoを創業。

「マイクロモノづくり」の啓蒙活動を通じ、最終製品に日本の町工場の持つ強みをどのように落とし込むのかということに注力し、日々活動中。インターネット創生期からWebを使った製造業を支援する活動も行ってきたWeb PRの専門家である。「大日本モノづくり党」(Facebook グループ)党首。

Twitterアカウント:@mikikouj



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