隣の人は何するものぞ:3次元って、面白っ! 〜操さんの3次元CAD考〜(1)(2/2 ページ)
長年にわたりCADベンダでCADやPDMに携わり、いまではデザイン・製品開発の事務所を構える筆者が、3次元に関わるすべての人々にエールを送る! 面白コラム(編集部)
でも、最近は変化していたり
とはいえ、そんな悲観的な話ばかりがあるわけでもありません。
筆者が事務所を置いているアキバの「3D-GAN(3次元データを活用する会)」にいると、最近は、その変化を感じることが多々あります。
というのも、3次元CGを使っていた人たちと、製造業の中小企業のニーズがマッチングしてきた様子も見受けられるのです。
いまや日本の強みとなった、キャラクターなどのコンテンツホルダーは、映像以外の二次利用による新たなビジネスチャンスを探りたい。逆に、製造業の方はリーマンショック以降には、需要は減るし、開発は海外に出て行ってしまうしで、新たに作るものが必要になってきたのです。
もちろん、いうほど簡単ではありません。
これまで製造業に関わったことのない人には、さまざまな製造要件などよく分からないし、例えばファイルもSTLくらいなら分かるけれど、IGESとかいうのが必要で、それは一体どのようにしたら作れるのかよく分からない――そんなふうに途方にくれてしまう、という話も聞きます。
確かに、CADデータからSTLなどを作るのは、単なるデータのエクスポートですが、その逆は、あまり聞きませんね。なぜ、これが難しいのかは、また別の機会に譲るとして、要するにデータが持っている情報の量と質によるところがあります。
さて、逆に製造業側も、モノづくりに詳しくない人が図面を持ってくるわけもなく、持ってくるのはポリゴンデータ(CGデータ)のみ。というわけで、それを何とか形にしなくてはなりません。
とはいえ、そこに果敢にチャレンジする企業も出てきているのです。
ポリゴンによるモデリングの自由さを生かした形状を削るべく、自信のある加工業者はポリゴンから直接切削を進めているし、さらには自ら有名なコンテンツのコンテンツホルダーから版権を買い取って、キャラクターなどの物販の事業化を進めている会社すらあります。
3D-GANの事務所にも設置されている、複数のRP(ラピッドプロトタイピング)機も、“形にする”際に活躍します。
CG作家など映像系の人たちにとっても、それはインパクトがあることです。なにしろ自分のデータがリアルなものになるのですから。自分のCGデータが初めてリアルな物体になったときの驚きは、彼らにとって純粋に心に響くものではないでしょうか。
そして、そこから、自分が持っている3次元データの価値とその用途に思いをはせることができるようになるのです。
そして、その手伝いをできるのが、もともと製造業に関わっている人たちといえます。
おっと、CGの人たちがCADを使うメリットもありますよ。人間など柔らかい形状は、ポリゴンの方が作りやすいのですが、メカものなら圧倒的にCADが向いています。
何をいいたいのかというと、業界ごとで、使うツールが分かれていた時代に、そろそろ終わりを告げた方がいいようだ、ということです。
「かつてのような製造業は、日本には戻ってこない」といいながら、いざ現場で、3次元CADでモデリングをやろうとすると、その人材は不足しているのです。でも、CGなら3次元を使う人材はもっと多いのです。
このような人材をコンバートすれば、人の流動性は増し、現場では人手不足を解消でき、一方で雇用も生まれます。
普段は画像や動画を扱っている人も、本当は、リアルなモノを作れることが嬉しいというケースは、決して少なくないのではないでしょうか(シリコンバレーのIT長者の皆さんが、EVに投資をするのも、本当はみんな車を作りたかったのだろうと筆者は考えています)。
いずれにしても、CGだろうとCADだろうと、3次元は3次元。どっちでも映像も作れれば、リアルなモノも作れるのです。
そろそろ、「隣りの人が何をやっているのか」、覗き込むだけでなくて、双方入り交じればよいのです。
3次元を通して、いままでモノづくりに縁のなかった人が関わることでもっと面白いことが起きてくるに違いないでしょう。
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さて次回は、この続きでデータの形式とツールの相関関係について考えてみたいと思います。
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