個別受注生産型企業が図面文化から脱却するには: グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(3)(2/3 ページ)
個別受注生産企業の業務カイゼンはどうあるべきか。エンジニアリングチェーンから読み解くリードタイム短縮、競争力強化の処方箋を紹介する
3.目的別BOMとエンジニアリングチェーンマネジメント(ECM)
1)企画量産型製品と個別受注生産型製品のバリューチェーンの違い
企画量産型製造業と個別受注生産型製造業のバリューチェーン(エンジニアリングチェーンとサプライチェーン)の違いについて整理してみたいと思います。
企画量産型では、エンジニアリングチェーン(企画から生産準備完了までの連鎖)は調達プロセスでサプライチェーン(受注から出荷までの連鎖)と連携します。個別受注生産型の場合には、受注⇒設計⇒調達⇒製造となり、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンが一体となったシリアルプロセスになります。設計プロセスを短縮するために、モジュール設計を設計プロセスの前段階に位置付ける方式もあります。この方式をセミオーダー型と呼ぶことがあります(システムキッチンなどがこの方式)。
このようなことから、個別受注生産型製造業では、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンを個別に最適するのではなく、一体として最適化を図っていく必要があるのです。
2)受注〜納入リードタイム短縮のポイント
個別受注生産のリードタイムを短縮するためのポイントを4点ご紹介します。
a)標準スペックの適用による提案型営業
設計を標準化してモジュール化し、それを適用するためのスペックを事前に設定しておきます。営業段階では、できるだけ自社の標準スペックで受注できるように推進します。
この方式では、自動車のディーラーや、システムキッチンの見積もりで利用されるような受注コンフィグレーターを営業マンが利用できるようにしておくことが必要です。
顧客の要求する仕様どおりに受注すると、標準モジュールはほとんど活用することができず、個別受注設計を行い、案件対応の特注部品を多く設計・製造することになります。結果として、全体リードタイムが長くなることになります。
b)見積もりBOMを活用した部品の先行手配(フォーキャスト)
営業プロセスにおいて、標準スペックで受注できると、モジュールのBOMの組み合わせで、見積もりBOMを作成することができます。BOMがこの時点で作成できているので、長納期部品を特定することが容易になります。
営業・技術・製造の共同会議で、戦略的にどの案件のどの部品を先行手配するかの議論を行うときの有効な情報になります。
c)標準モジュールの活用と、パラメトリックCADによる最小カスタマイズ設計
できるだけ標準スペックで受注することが理想ですが、どうしても案件対応で特注(カスタマイズ)する部分が出てくることがあります。
その場合でも、3次元CADの機能であるパラメトリック機能を利用して、モジュールを流用して設計を推進できるようにします。この方式により、設計工数を削減することができます。2次元図面ベースで設計する場合には、この方式の採用は困難です。
3次元設計を推奨する別の理由には、3次元設計でアセンブリを作成する行為そのものがBOMを作成することと同じであることです。この方式でも設計早期にBOMを作成できます。
d)受注前情報の活用による最適調達・生産
生産プロセスにおけるポイントは、組み立て工程着手日に必要な部品がすべてそろっていることです。1部品でも欠品していると組み立てに着手することができず、出荷や納入遅延が発生する原因になりますので、調達管理や在庫管理は非常に重要なマネジメントプロセスであるといえるでしょう。
長納期部品や品薄部品がこのプロセスのボトルネックになりやすいので、受注前に見積もりBOMから作成したフォーキャスト情報を活用して事前に発注するか、サプライヤに開示することで、これらの部品の入手を早期化し、結果として全体リードタイム短縮を図ります。
3)リードタイム短縮を支援する目的別BOMの連携
個別受注生産における目的別BOMの連携イメージと全体のコンセプトを図7に紹介します。
ここでのポイントは、設計プロセスで作成したオーダー別の設計BOMを、製番別BOMとして生産プロセスで活用している点です。生産プロセスでは、モジュール化・標準化された部分をロット生産管理方式で生産計画を立案します。いわゆるMRPによる計画立案を行い、標準モジュールについては、受注オーダーが確定する前に生産を行い、受注した製番に対してひも付けていく方式で、製造のリードタイムを短縮する取り組みを行います。
世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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