組み込み業界“不断の進化”を再認識:組み込みイベントレポート(1/2 ページ)
下半期最大級の組み込み関連イベント「Embedded Technology 2010」では、2011年以降、花開きそうな技術やソリューションが数多く見られた。
組み込み関連の総合技術展「Embedded Technology 2010(以下、ET2010)」では、358もの企業・団体がさまざまな領域で最新の組み込み技術を披露していた。まずは、すっかりETの“顔”となったインテルとアームの展示で興味深かった点を紹介しよう。
ディスプレイ、デジタルサイネージの次世代コンセプト
インテルブース内には多数のパートナーがコーナーを構え、Core i/Atomプロセッサを活用したコンセプト機や商用製品を展示。特にCore iシリーズのプロセッサパワーを生かしたディスプレイ、デジタルサイネージのコンセプト提案が目立っていた。
例えば、パイオニアソリューションズの「ディスカッションテーブル」は、マルチタッチパネル搭載の大型モニタを内蔵し、表示したコンテンツを指先で自由に移動・回転、拡大・縮小させることができた。プラットフォームは「Core i7」と「Windows Embedded Standard 7」だという。
また、沖電気工業の顔・映像認識技術を生かした「デジタルサイネージソリューション」では、ユーザーが画面にかざした商品に合わせたコンテンツを表示したり、カメラに映ったユーザーの年齢・性別などの属性情報を取得したりしていた。「顔・映像認識エンジンは、インテル コンパイラでマルチコア、マルチスレッドに最適化している」(説明員)とあって、動作はスムーズだった。
インテルブースには、インテルとノキアが共同開発したLinuxベースのオープンソース・モバイルプラットフォーム「MeeGo」のコーナーもあり、MeeGo搭載のタブレット端末「WeTab」(独Neofonie製)や多機能HEMS(Home Energy Management System)端末(インテルのコンセプト機)、携帯情報端末向け開発プラットフォーム(フラットーク製)などが展示されていた。「ETの来場者でもMeeGoの認知度はさほど高くない」(説明員)という声も聞かれたが、コーナーにはかなりの人が集まっていた。インテル・ノキアによる今後の展開に注目したい。
Android開発を支援する開発環境からMCUまで
一方、アームのブースで興味を引かれたのは、アーム純正IDE(Integrated Development Environment)の最新製品「Development Studio 5(以下、DS-5)」である。最近のAndroidアプリケーション開発では、C言語で記述されたLinuxのネイティブコードや既存資産をJNI経由で活用するため、Android NDKを使うことが多いが、その開発をDS-5 Application/Linux版は支援するといわれる(2011年第1四半期リリース予定のDS-5 Pro版は、従来の純正IDE「RealView Development Suite(以下、RVDS)」の後継となるフル機能版)。
実際、パートナーのソフィアシステムズは、同社の「Cortex-A8」搭載評価ボードでAndroid 2.2を実行し、DS-5上でJavaスクリプトとOpenGL ESのC/C++コードの同時デバッグを行ってみせた。Android NDKに代わり、RVDSから受け継ぐ使い勝手のよいC/C++デバッグ機能が使えるのだ。また、「DS-5(Linux版以上)では、Linuxカーネル・ドライバやベタメタルコードもチューニングできるので、Androidデバイスで見られがちな“もっさり感”を解消できる」(説明員)としていた。
もともとAndroidはARMに最適化されているが、DS-5で開発環境がより充実してくると、両者の関係はさらに深まりそうな印象を受けた。
また、アームのブースでは前年に引き続き、「MCU Expo」と銘打ったゾーンが設けられ、MCUベンダがARM関連の製品・ソリューションを競っていた。その中でも富士通セミコンダクターは、アームブースのみならず自社ブースにおいても、「Cortex-M3」を搭載するMCU「FM3ファミリ」を“全面展示”しており、力の入れようがうかがえた。
特に、自社ブースでコンセプトデモを行っていた「グリーンファクトリシステム」は、FM3の優位点を示すものだった。同システムは、農地からセンサで収集した照度や温度、湿度に基づき、散水機や送風機を最適に動作させ、サーバシステムともネットワーク連携する。このコントローラーに32ビット高性能版FM3を使うイメージである。「モータ制御用タイマ、A/Dコンバータ、通信インターフェイスなど自社IPとARMコアを融合させたFM3ならではの用途」(説明員)というわけだ。
2010年第3四半期、アームはMCU向けコアの出荷量を前年同期比で65%も伸ばしているが、MCUベンダの姿勢を見れば、この勢いは2011年も続きそうだ。
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やはり目立っていたAndroid関連の展示デモ
Linux/Androidが幅広いデバイスに採用されるに従い、注目度が増しているのがLinux向け高速起動技術である。
例えば、リネオソリューションズは、Linuxのハイパーネーション技術を拡張した独自技術の最新版「Warp!! 3.1」を披露。Android 2.2を用いたデモシステムでは、通常35.89秒のところわずか1.33秒で起動していた。類似技術はほかにもあるが、「ディスクキャッシュなど不要部分を除いてシステムメモリの状態をスナップショットし、さらに圧縮して2次記憶装置に保存するため、最低限のメモリ容量しか消費しない」(説明員)点がWarp!!の特徴だという。
また、多種の組み込みプロセッサに対応しているのもWarp!!の特徴だが、従来のARM、POWERアーキテクチャ、MIPS、SHに加え、新たにAtomにも対応。Atom Z530上でAndroid 2.2を起動するデモシステムでは、通常22.34秒のところを3.69秒で起動させていた。「Atomの場合、BIOSに手を加えられないので多少時間がかかる」ということだったが、十分に高速な起動だった。
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前年に引き続きET2010でも“Android”の露出はすごかったが、アットマークテクノのブースでは、同社の組み込みCPUボード「Armadillo-440」に搭載可能なソフトウェア基盤として、Androidに並んで、Windows Embedded CEの後継「Windows Embedded Compact 7(以下、WEC7)」、組み込み向けFlash Player「Flash Lite」も訴求されていた。
WEC7については、サムシングプレシャスが開発したBSP「Lilas」により、「Freescale i.MX257(ARM926EJ-S)」を搭載するArmadillo-440上でWEC7を実行可能にする。一方のFlash Liteは、Armadillo-440の試作向け液晶モデル開発セットに無償バンドルされる専用ソフトウェア基盤上で動作し、外部機能とも連携できるイーソル製拡張モジュールも組み込まれる。
Windows、Flashとも開発環境が充実しており、開発者も多い。そのため、アットマークテクノでは「Armadilloは、Linux搭載機器向けの量産デバイスとして実績を積んできたが、Linuxの発展形としてのAndroid、さらにWindowsやFlashに対応することで、量産デバイスとしての可能性をより広げられる」(説明員)としていた。
画像7 Linux/Androidに加え、Windows Embedded Compact 7、Flash Liteにも対応しはじめたArmadillo。Flash Liteの応用例として、リッチなGUIを持つ温度センサーモニターを展示
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