失敗企業5つの類型、成功企業7つの法則:モノづくり最前線レポート(24)(2/2 ページ)
製造業向けERP導入プロジェクトを見守ってきた大澤氏が語る、プロジェクト失敗の症例集と成功のための7つのポイント。あなたの会社の症状は?
成功する企業に共通する7つのポイント
一方で、成功事例にも共通するポイントがあるという。同社が手掛けた成功事例としてアイジー工業を筆頭に、石巻合板工業、天竜丸沢などを紹介し、成功した各社に共通する7つのポイントを示した。
- 目的が明確である
- 関係者が目的を共有できている
- 現状と「あるべき(目指すべき)姿」の違いを明確にしている
- 小さく入れて大きく育てる姿勢を持っている
- 経営とITの一体化について意識している
- 導入プロジェクト担当者が専任であり、パッケージの利点を生かす意識を持っている
- ERPやICTは道具であるという割り切った認識を持っている
「あるべき姿と現状を比較し、ギャップを見出したとしても、そこからひと足飛びにICT導入に動いてしまうのは大きな間違いです。ギャップ解消のための課題は何かを見つけ、テーマを明確にし、どこにどうICTを導入するかを整理してから導入しなくてはなりません。成功の第一ステップとして、まずは課題を整理し、解決すべき問題や目的を共有することで組織内の人材を育てていくことが導入成功の近道。また、最初から意気込んで大規模なシステムを想定してしまうのではなく、最小構成で導入し、きちんと定着する工程をへてから徐々に導入するようにしなくてはなりません(小さく入れて大きく育てる)」。
ここでは「ポイントを踏まえた成功事例」として例に挙がったアイジー工業のケースを紹介しておこう。
アイジー工業は住宅などの外装に用いる金属サイディングなどを提供する企業。同社ではただ単にERPを導入するのではなく、まずERP導入の本質的な部分である業務フロー改革に取り組み、5年の期間をかけて社内プロセスをERP導入に向けて整備、組織変更を含む大胆な改革を定着させることから始めたという。
同社ではトップダウンでプロジェクトが進められたことも特徴だ。プロジェクトを推進するトップが明確なメッセージを社内に行きわたらせ、目指すものを共有、それに向けた体制づくりを先行して実施したうえで、目的に至るための「道具」であるシステムを導入したものだ。同社ではシステム導入から1年で原価が見える仕組みが定着、その成果は数字として見える形で示されている。
「5つの症状のいずれかが当てはまるケースでは、いくら立派なシステムを導入しても効果は見込めません。効果が出ない原因をシステム側に求めるのは間違いです。成功のポイントをよく理解いただくことでよりよい結果を得られるようにしていただきたいと考えます」。
富士通グループのクラウドの特徴とは?
富士通は国内ITベンダ各社同様、グループを挙げてクラウドサービス提供を推進している。 イベントでは本文で紹介した大澤氏ら富士通マーケティングの登壇者のほか、富士通からは同社執行役員 クラウドコンピューティンググループ 副グループ長 廣野 充俊氏が富士通グループ全体のクラウドコンピューティングへの取り組みを語った。
現在、国内ベンダに先行してクラウドサービスで大きなシェアを持っているのがSalesforceなどの企業だろう。エコポイント申請用のシステムがSalesforceによって構築された話題などは記憶に新しい。富士通ではいち早くSalesforceとの提携を発表、積極的にソリューション展開を行ってきたが、いまは同社自身もクラウド・SaaS環境の提供に取り組んでいる。また、SaaS/PaaS領域では、NECや、Azureを中心としたクラウドシステムを提供しているマイクロソフトなどと協業する一方で、ハードウェアは自社のPRIMECLUSTERシリーズなどで展開していく方針をとっている。
「米国パトリオット法のように、国外にデータセンターがある場合のリスクは十分に考えておかなくてはなりません。日本企業の不安を払しょくするには国内にデータセンターがあるべきだと考えます」(富士通 執行役員 クラウドコンピューティンググループ 副グループ長 廣野 充俊氏)。
従来のクラウドサービスでは日本以外の拠点にデータセンターを置く運用を想定しているものが多かったが、データセンターが日本の法規の及ばない海外にある場合、データを利用する企業がたとえ日本を拠点としていたとしても、データセンター拠点の法規が適用される。このため、ある企業が相手国側の利益と衝突した場合には機密情報が漏れてしまう可能性が否定できない。このことが企業システムのクラウド運用の障壁となっていた。富士通グループが提供するクラウドサービスではこの懸念点を払しょくすべく、国内の同社データセンターを利用することを念頭としたサービスになっている。
富士通ではすでに静岡県沼津市にクラウドセンターを設立しているが、これとは別に千葉県館林市でもCADデータ活用のためのクラウド環境を用意しており、2011年3月から一般向けに提供を開始するとしている(下記記事参照)。
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本文で紹介したイベントを主催した富士通マーケティングは富士通グループの中堅企業向けクラウドサービス展開をけん引する存在だ。2011年にはGLOVIA smart 製造 PRONESのクラウドサービス化も予定されており、日本の製造業の基幹システムの在り方を変えていく存在としてますます注目を集めそうだ。
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