グローバル化を「当たり前」にするためのリコーの実践:モノづくり最前線レポート(23)(1/3 ページ)
グローバル化を支援する「7つのプラットフォーム」と、リコーが取り組んできたグローバル化の方策とその実践事例を紹介する
2010年10月14〜15日、「スマートな『ものコト』づくりへの変革 製造業のグローバル成長戦略を考える」をテーマに「第41回 IBM インダストリアル・フォーラム京都 2010」が京都で開催された。
イベントテーマにある「『ものコト』づくり」は、同社が製造業向けソリューションで掲げるキーコンセプト。単なるモノづくりではなく、サービスやソリューションといったモノによってもたらされる付加価値(=コト)を考慮したモノづくりを示す同社の造語だ。
41回目となる同イベントの、今年のもう1つのキーワードは「グローバル化」が挙げられるだろう。セッションではグローバル化先進企業の実践的な取り組みの数々が披露された。
グローバル人材育成の時間を日本企業は待てるのか
日本IBM 取締役専務執行役員 ポール 与那嶺氏は、イベント開会に際し、自身の米国での経験から、日本の製造業界に対してのメッセージを示した。2010年5月に日本IBMに参画する以前、企業コンサルタントとして日米のグローバル企業を見続けてきた与那嶺氏は、グローバル展開で先行する米国企業が、どのような道筋で発展してきたかについての話題から話を始めた。
「2000年問題が話題となった際、米国企業の中では手組みシステムのリスクがあらためて注目されることになりました(注1)。このタイミングで、システムの標準化や統合(集約)の必要性がいち早く認識され、パッケージソフトウェアへの転換が図られたのです。その後、エンロン事件を契機としてSOX法が施行された際には、システムだけでなく企業の制度そのものの改革が強く推し進められていきました」。
当時、コンサルタントとして米国で活躍していた与那嶺氏は、日本企業の担当者らと面談する際、ビジネスプロセスの標準化や統合、グローバル展開について、「まだまだ、これから」という声が多かった、と当時のことを振り返った。
この段階で日本企業の多くが、グローバル戦略で米国企業に後れを取っていたことになるが、それでも、2008年前後には危機意識を持ってグローバル化に取り組む兆しが見えてきたという。しかし、「いわゆる『リーマンショック』により、一時的にそうした機運が停滞してしまった企業が少なくなかった」と、経済状況から足踏みをせざるを得ない企業が多く存在していたことにも言及した。
ここで、「IBM Global CEO Study 2010」(注2)の調査内容を紹介し、全世界/日本企業の対比から、日本企業トップの意識と世界の動向が示された。
与那嶺氏は、この調査で日本企業のCEOの41%が「今後3年間で自社に与える重要な課題」は「グローバル化への適応」であるとの回答を寄せている一方で、全世界の集計では同様の回答は23%に留まっている点を指摘、ワールドワイドではすでにグローバル化は課題ではなく当然のことになりつつあることを示した。
「(グローバル戦略への意識が高まりつつある日本企業では)いままで以上にグローバル人材が必要になってくる。しかし、人材育成には10年オーダーの時間がかかってしまう」。
では、いまから遅れを取り戻すために、日本企業はどのような取り組みをしていけばいいのか。与那嶺氏はIBMが考える「グローバル化のための7つのプラットフォーム」による戦略を提案した。
7つのプラットフォームとは、1. Global Accounting(財務・経理)/2. Global IT/3. Global Teaming(コミュニケーション)/4. Global Outsourcing(アウトソース)/5. Global Chain(サプライチェーン)/6. Global Sales(セールス・マーケティング)/7. Global People(人材)の7つだ。これらを、ITソリューションを活用していち早く実現することで、世界標準のグローバル企業化が実現するというのが、IBMの掲げるグローバル経営のための支援のビジョンだ。
IBMが示した「グローバル化のための7つのプラットフォーム」
新興国市場の拡大、IFRSへの対応、FTA/EPA戦略の加速など、世界全体の動向が複雑化するなかで必要となるのは、グローバルで通用する人材の育成だ。しかし、人材育成を待つ猶予はない。企業はいち早くITソリューションを活用したグローバル化への取り組みを進めていくべきであり、それを可能とする環境は整いつつあるという(当日の講演資料より)
注1:古いオフコンなどで作られたシステムは、その仕様上の問題として「西暦2000年」を処理できず、場合によっては重要な基幹システムがダウンする可能性があった。多くの企業が2000年を前に膨大な工数を掛けてシステム改修を行う必要に迫られたが、当時のシステムは、企業ごとに独自の「手組み」プログラムで運用されているものがほとんどであったため、改修手法を都度検討する必要があったり、詳細な仕様が不明であったりと、非常に困難を極めるものだった。こうしたシステムの担当者だけでなく経営陣も2000年の新年は緊張の中で過ごすことになったという。
注2:IBMが2010年5月に独自に実施した調査。売り上げ高5億ドル以上(新興国では2.5億ドル以上)の民間企業と1000人以上の職員を有する公的機関を対象に、1541人のCEOに直接インタビューして行われた(世界60カ国、33業種)。回答は2008年の実質GDPを基に重み付けを行ったうえで集計したもの。資料はWebサイト上からダウンロードできる(要登録)。
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