中国リーダー企業と“フォロワー”日系製造業の格差:今知っておくべき中国の製造事情(4)(3/3 ページ)
日本企業の中国進出を支援してきたベンダ企業が見た中国本土の製造業事情とは? 日本企業、中国企業の違いや市場の変化などを事例を交えて紹介していきます。
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筆者は、悲観論ばかりを論じようと意図しているわけではありません。実際の中国の最新の製造現場について共通的な所感を述べてきたつもりです。筆者は、せっかく生産方式や品質管理、生産品の開発設計で中国企業に一目置かれている日本の製造業が、優れた生産システムを導入しようと試みないのかが残念でなりません。
中国の市場は日本と異なる、そんな理由は聞き飽きたというのが正直なところです。当社の上海法人の中では「中国市場だから」という理由を禁句としました。そして、営業活動などの管理形態を日本と同じものにしました。
こうした取り組みを定着させるには、日本人総経理(社長)の強力なリーダーシップが不可欠です。筆者自身も当社上海支店の改革のために、2010年11月から上海支店に常駐するつもりで考えています。日本国内のシェアは落ちてはいないものの、これ以上の伸びは見込めません。今後のソフトウェア製造業としての生き残りを考えた場合、中国を含めたアジア市場での当社製品のシェア拡大は必須の条件だからです。
日本国内の製造業は、国内工場をマザー工場とし、その優れた製品と生産技術を海外に輸出する体制を作りつつあります。今後は、ITシステムに関しても同様の方針が必要となるでしょう。場合によっては、サンテックパワーのように、国内のデータセンターにそれを集約し、海外工場は情報の入力だけにとどめ、システムの維持・運用を日本国内で一括管理する方法も考えられます。
話を最初のサンテックパワーの内容に戻しましょう。
今回会った丘氏は華僑で、これまでいくつものグローバル企業でその職務を果たしてきた人物です。流ちょうな英語を話すことができますが、中国・無錫市の本社で活動する際は中国語以外の言語を使う必要はないといいます。中国国内の有名大学を出た120人もの中国人スタッフで、十分にビジネスがまかなえるようになっているからです。
彼は「ITシステムといっても使用するのは人間であり、システムに人間が使われてはならない。あくまでも品質が良く安価な製品をお客さまの望む土地で望むときに提供し、その後の保守サービスにおいても競合他社より高い評価を得るための人間活動が主体であり、ITシステムはそのための支援ツールにすぎない」といいます。
彼らは、現在、中国国内の需要においてもナンバーワンとなるために、上海万博などで自らの技術をアピールしています。
機会があれば、ぜひ読者の皆さんにも無錫のサンテックパワー本社を訪ねてみてほしいと思います。そこには、世界最大の太陽電池が設置されていて、サンテックパワーの工場自らが、その電力を利用して動いている姿があります。中国市場への製品提供のために、無錫地域においても、新設の広大な工場を建築中といいます。丘氏によれば、「われわれの仕事に終わりはない。ITの改善を継続することは、人間の体に例えれば、血管を通して新鮮な血液を体の末端まで到達させ続けることに等しく、その体の成長は続く」ということになります。
最後に
これまで、当方のつたない文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。連載執筆中はいろいろなご意見や激励をいただきました。
また、本文中でも触れましたが、日本に半分、中国に半分ずつ滞在する中でこの記事を執筆していた筆者も、上海に常駐することとなりました。また、今年、マレーシアに設立したアスプローバアジアの活動としても、中国からタイ、インドネシア、ベトナムなどの日系製造業の工場に伺う予定もあります。従って、これまで以上に、中国に関してはリアルタイムで実感のある報告ができることと思います。
加えて、東南アジア各国の生産状況に関しても、皆さんに情報提供できると思います。またの機会をご期待ください。長い間、ご精読ありがととうございました。
ご質問やご意見がございましたら、藤井 賢一郎(fujii[at]asprova.com)までお願いします(連載第1回へ)。
著者略歴
アスプローバ株式会社
上海総経理 藤井賢一郎(ふじい けんいちろう)
日本の半導体工場にて製造管理システムを構築。ユーザーSEの経験を生かして、生産管理パッケージソフトウェアの営業として、一貫して製造業のお客さまに基幹システムを提案。Asprovaでは、パートナーのコンサルタント営業時代に、日本・中国を含む300社のお客さまに生産スケジューラを導入した経験を持つ。
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