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PLMの投資対効果と課題解決シナリオPLM導入プロジェクト、検討前に読むコラム(6)(2/3 ページ)

製品ライフサイクル全体を管理するためにはPLMを基軸としたシステム作りが急務。PLM導入・改善プロジェクトを担当する際に事前に知っておくべき話題を、毎回さまざまな切り口から紹介していきます。

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PLMシステムが解決すべき課題とその効果

 PLMシステムの効果は、製品開発活動のアクティビティ支援から、製品開発プロセスを支援するビジネスモデルへと役割が進化してきています。

 よって、PLMシステムを製品開発プロセスに対して効果的なシステムとして構築するには、設計部門だけが主体となって構築・活用するのではなく、製品のライフサイクル(少なくとも企画から量産開始まで)にかかわる関係部門も巻き込み、製品開発業務を可視化して付加価値を増大させるマネジメントを実現するのがベストです。

 そこでPLMシステムの効果を理解するために、まずは製品のライフサイクルで発生する課題を3つのシナリオに分けて考えてみたいと思います。

PLM課題解決シナリオ1:期間短縮による開発現場の混乱の解消

 製品のライフサイクルは年々短くなってきています。今日では従来の取り組みのように設計期間を2〜3割削減するだけでは収まらず、設計期間を半分から3分の1にすることを目標にするプロジェクトも珍しくありません。また設計期間が短くなったからといって品質を落とすことは許されません。

 そこで流用設計や設計の標準化および試作回数を減らしたりといった対策が検討されます。

 これらの対策はルールを作っても実際に運用を定着させることが難しいため、何らかの仕掛けを作って自動化するとともに、例外処理を少なくするための制約を設ける必要があります。

 また、短い納期を達成するにはミスや非効率な作業の削減とともに、作業の手戻りによる工数の増加を抑えなければいけません。特に設計変更プロセスは各工程の検討結果を製品仕様として反映させるため、効率の悪いプロセスを運用すると途端に工数を消費してしまいます。

 そこで、設計変更管理や過去のノウハウの流用を効率化するために、PLMシステムを導入し業務の効率化を図るわけですが、設計期間の短縮と作業の効率化に関しては、下記のような形で効果を把握することができます。

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PLM課題解決シナリオ2:製品の複雑化に比例する品質の低下の改善

 製品や部品は年々スペックが向上するとともに、製品は薄く・小さくまた複雑になってきています。製品の仕様が高度化するのに比例して品質管理項目も増加し、それがまた設計者の負荷を高めています。

 しかし、品質問題をおろそかにすることはできません。ひとたび品質問題が発生すると一利用ユーザーに対する問題でとどまらず、市場や企業および国家の産業レベルにまで品質問題が影響を及ぼすこともあります。

 そこで品質管理メソッドや手法が導入されたり、教育や監査を頻繁に行い品質管理の徹底が図られますが、膨大なチェック項目を短い開発期間の中ですべてやり切るには、何らかの仕掛けを構築しなくては相当な工数と時間がかかってしまいます。

 そこで下記に挙げた課題を解決し、設計時に品質を作り込む設計プロセスを構築し、高いレベルの品質を維持しつつ設計工数を維持・低減するような施策が実施されています。

 PLMではすべてのデータが履歴を持って管理できるとともに、リレーションシップを用いてデータ間を関連付けて管理することができるため、自分以外の作業の成果をリレーションシップを経由して簡単に見つけることができたり、履歴をたどって作業者の設計意図を把握することが可能となります。

 また、PLMシステムには構成データや入力データの差分表示機能が備わっているため、過去リビジョンとのデータを比較することで設計内容の変更点や変化点を簡単に把握できます。

 このようなPLMの機能を活用して、品質管理の効率化を実現しているプロジェクトでは、下記のような形で効果を把握することができます。

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PLM課題解決シナリオ3:激しくなるコスト競争への対応

 モノづくりの移転が容易になってきた今日では、従来であれば競合と見なしていなかった企業や国から、より安価な製品が提供され市場を奪われることも珍しくなくなってきました。

 自社の製品に価格競争力を持たせるためには、製造の人件費を抑えるだけでなく製品コストの80%が決定される設計段階で、戦略的なコスト構造を決定しておく必要があります。

 そのためには設計の早い段階で、調達やサプライチェーンを巻き込んだ価格戦略の立案や、製品原価情報を一元化してコストの遷移と予測・実績の見える化を実現したり、設計手戻りやリワークおよび廃棄を低減できるようにするのはもちろんのこと、製品開発にかかわる管理工数も削減して、製品原価の低減に取り組む必要があります。

 PLMを使うと、PLMで管理している部品表を中心に、開発にかかわる人件費や調査コスト、加工コストなどを集計することが簡単にできるため、設計段階でも設計担当者が簡単に製品にかかわる原価を把握することが実現できます。

 また、PLMシステムを使って複雑な業務を自動化することで、手戻りやリワークなどの工数を削減するとともに、管理工数を大幅に低減させることが可能です。

 このようなコスト面に関するテーマに対しては、下記のような形で効果を把握することができます。

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 Aberdeen Groupの調査では、PLMシステムを構築してフロントローディングを実現することで、17.5%のコストカット、10〜20%の品質向上、20%の設計期間短縮および上市までの期間を10〜15%削減できるといわれています。

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