アジア市場で軸足を固め、海外進出支援を狙う:モノづくり最前線レポート(22)(1/2 ページ)
アスプローバは2010年9月1日付で、DCSと共同でAsplova Asiaを設立。本稿では両社の今後の戦略を中心に紹介する
アスプローバは2010年9月1日付で、DATA COLLECTION SYSTEMSと共同でAsplova Asiaを設立した。@IT MONOistでは設立を前に、両社に話を伺う機会を得たので、本稿では両社の今後の戦略を中心に紹介する。
マレーシアを中心にアジアの企業とのビジネスを本格化する
――貴社は中国・上海にオフィスを構えるなど、中国地域でのご活動が盛んでしたが、新たにマレーシアにも拠点を置くのにはどういった理由があったのでしょうか。
アスプローバ 副社長・上海総経理 藤井 賢一郎氏(以降、藤井) もちろん、設立には最近の製造業の東南アジアシフトが盛んなことが第一に挙げられます。
当社ではすでに上海にオフィスを構えており、中国および台湾エリアをカバーしています。しかし、ASEANなど、ほかのアジア地域は個別に対応していましたがオフィスがない状態でしたから、その意味で今回のAsplova Asiaの設立は当社にとっては非常に大きな意味を持っています。今年の6月に開催されたDMS展(東京)に出展しましたが、今年は特にASEAN地域からブースに来訪された方が多く、ASEAN地域からの引き合いが非常に多くなってきている状況です。昨年(2009年)秋のInterPHEX展までは中国国内で生産工場を持っている方のブース来訪が多かったんですが、今年は一気に東南アジア地区の方が増えた印象です。
動きの速い衣料品メーカーでは、例えばファーストリテイリング(ユニクロの運営母体)が、生産拠点を中国以外の、タイやバングラデシュなどに分散する方針を打ち出していますね。自動車メーカーもタイなどへの進出を本格化しています。
藤井 東南アジア地域ではここのところ急に製造業各社の生産量が増加している印象です。こうした状況も、生産現場のシステム化要求の高まりに寄与しているのではないかと思います。
タイやマレーシアは古くから欧米企業が進出していますから、一定程度システム化が進んでいる企業が多いんですが、ベトナムやインドはまだまだこれからという印象です。
――今回のAsplova Asiaはインドもターゲットになっているんでしょうか?
藤井 もちろんインドも今後の対象になっており、必要があればマレーシアの拠点から適宜対応していく予定です。ニーズがさらに増えれば、状況に応じてオフィスを構える可能性もあるでしょう。
しかし、現段階ではインドはまだインフラ整備などが不十分な場合も多く、ITシステムによる生産支援はインフラがある程度安定してから本格的になるとみています。現在も当社の代理店がインドにありますが、今回のAsplova Asiaの業務範囲とは異なります。
DATA COLLECTION SYSTEMS 代表取締役 栗田 巧氏(以降、栗田) 欧米のグローバル企業が拠点を構えるのには、大きな理由があります。東南アジアの一部の地域では、企業誘致に積極的なこともあり、法人税や関税などの企業負担が少ないのです。超大手以外の日本企業は、以前なら、こうした海外のグローバル企業の動きにはあまり追随しなかったかもしれません。
しかし、いまや中小・中堅企業であっても、国内市場だけに閉じた生産〜販売体制では競争できなくなりつつあります。今後は、大手だけでなく、本当に小さな部品メーカーの方々であっても各国・地域ごとのメリット・デメリットを考慮していく必要に迫られるはずです。そうしたときに、マレーシアなどの東南アジア地域は、生産拠点としても、市場としても魅力的な条件がそろっていますから、今後はさらに日本企業の進出が進むと考えています。
もちろん、大手メーカーが各地域で現地調達・生産体制を強化していることも、部品メーカーや関連メーカーの海外進出を後押しすることになるでしょう。
――東南アジア地域の拠点としては、シンガポールやインドネシア、タイなどにも注目が集まっています。立地としてマレーシアを選択した理由はどこにあったのでしょうか。
アスプローバ 代表取締役社長 高橋 邦芳氏(以降、高橋) 1つには、パートナーである栗田氏がマレーシアを拠点としていることもありますが、そもそもマレーシアは海外企業の誘致に積極的で、有利な条件が整っていたこともあります。
栗田 マレーシアは、中華系、ヒンズー系、イスラム系など、複数民族で成り立っている国でもあり、それぞれの文化への理解が深い人材を集めやすい、という利点もあります。また、英国領だった歴史的経緯もあり、ビジネスルールや法規には、いわゆるCommon Lawの文化があります。また、外資系企業に対しても(国外資本への制約ルールなどがなく)フェアな対応をする印象です。公用語が英語ですから、コミュニケーションの面でも利点があります。わたし自身もマレーシアを拠点に、現地工場のIT化を手伝っていたこともあり、地の利も生かせます。
もちろん、わたし自身のいままでの活動では、マレーシアを中心にタイやベトナムなどの案件にも対応してきましたから、同じスキームがAsplova Asiaでも生かせると考えています。
――今回は完全に50%ずつの出資で設立されるそうですね。
高橋 そのとおりです。対等な出資比率にこだわったのは、どちらかが主となる関係ではなく、あくまでも互いにパートナーとして活動していきたい、という考えからです。
――Asplova Asiaは具体的にどのようなビジネスを行っていくのでしょうか?
栗田 アジア地域では、従来代理店を経由して製品を提供していました。引き合いが順調に伸びたこともあり、より地理的に近いところから、代理店とのやりとりやサポートなどを行える体制を整えようという流れになったのです。Asplova Asiaでは、アジア地域に複数ある各国の代理店とのやりとりやマネジメントを統括することになります。また、今後さらに各地のパートナーを増やすべく、活動を行っていく予定です。
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