米Maxim Integrated Products社は2010年8月、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)などに搭載される大容量の2次電池モジュール向けの電池監視IC「MAX11068」を発表した。100個購入時の参考価格は8.12米ドル。すでに、「日本、アジア、欧州メーカーのHEV/EVへの採用に向けた評価作業も進んでいる」(Maxim社)という。
HEVやEVに搭載されている大容量の2次電池モジュールは、数十個〜100個以上もの2次電池セルから構成されている。MAX11068は、これら2次電池セルの電圧を個別に監視する用途に用いるICである。1個のICで、直列に接続した2〜12個の2次電池セルの電圧を監視することが可能だ。また、独自に開発した多段型2線式シリアルインターフェースを用いたデイジーチェーン方式により、同ICを31個まで接続することができる。これにより、最大372個までの電池セルの電圧を監視できるようになる。Maxim社によれば、「ある2次電池モジュールを監視する回路をMAX11068を用いて構成した場合、個別部品で構成する場合と比べて、回路基板の面積を1/4に削減できた」という。また、その回路の製造コストも、250米ドルから50米ドルまで削減できたとしている。
MAX11068の特徴は3つある。1つ目は、80Vの高耐圧プロセスを用いて製造していることである。これによって、1個のICで直列に接続した2次電池セルを12個まで監視できるだけでなく、数百Aもの大電流を使って充放電を行う大容量の2次電池モジュールにおける電圧変動に対する余裕度を持たせることが可能だという。2つ目は、電池セルの電圧をデジタル信号に変換するA-Dコンバータとして、分解能が12ビットの逐次比較型のものを採用していることである。これによって、ΔΣ変調型A-Dコンバータを搭載する競合他社の製品と比べて、電池セルの電圧の測定をより短時間で完了させることができるという。1個のMAX11068で測定できる12個までの電池セルの電圧測定に要する時間は107μs。使用する同ICが1個増えるごとに、1μsの転送遅延が発生する。また、電圧の測定開始から、測定した電圧データをシリアルインターフェースを介して読み出すまでの時間については、48個の電池セルの場合で約8msかかるという。なお、セルの測定誤差は±0.25%以下となっている。3つ目の特徴は、消費電流が少ないことである。Maxim社は、「通常動作モードで競合他社品の1/10となる100μAを達成した。また、シャットダウン(スリープ)モードについては1μAという低い値に抑えることに成功した」としている。
なお、既存のHEV/EV向けの電池監視ICとしては、米Linear Technology社の「LTC6802」やOKIセミコンダクタの「ML5218」、米Analog Devices社の「AD7280」、スイスSTMicroelectronics社の「T2353A」などがある。また、米National Semiconductor社も2010年末までに製品を市場投入する予定だ。ドイツInfineon Technologies社も、欧州のEV開発プロジェクトE3Carにいて、電池監視ICの技術開発を進めていることを明らかにしている。
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