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ZigBee評価――技適の試験内容ZigBeeで知る物理層測定の基礎(5)(2/2 ページ)

ZigBeeの物理層であるIEEE802.15.4と技適を測定の観点から解説。最終回は技術基準適合証明(技適)の試験内容について説明

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周波数の偏差

 測定器は周波数カウンタかスペクトラム・アナライザを使用します。測定器に要求される測定確度は、「設備規則に規定する許容値の1/10以下」と書いてありますので、「50×10の-7乗」よりもよい確度を持っていることが条件になります。

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図1 周波数の偏差
許容値:50×10の−6乗

 この試験では、被試験デバイスから試験周波数で無変調波を連続送信し、その周波数を測定します。さらに、その結果と元の周波数の偏差を計算し(ppm)、許容値と比較します。スペアナを使用する場合は、スペクトラムの振幅が最大となる点にマーカーを当て、その周波数を読み取ります。このとき、カウンターモードを使うと周波数の読み取り分解能が上がります。

占有周波数帯幅および拡散帯域幅

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図2 OBW
許容値: 占有周波数帯幅 26MHz以下(ZigBeeの場合)
拡散帯域幅 500kHz以上

 スペアナを使用して、試験周波数で出力される変調信号の占有周波数帯域幅(99%帯域幅)と拡散帯域幅(90%帯域幅)を測定します。被試験デバイスは「標準符号化試験信号」、つまりPN信号で変調し連続送信します。別表には、スペアナに表示されるスペクトラムのトレースデータをPCに取り込んで計算する方法が書かれていますが、最近のスペアナにはワンボタンで占有周波数帯域と拡散帯域幅を測定する機能が付いています。こういった機能を使用すると、スペアナ単体で簡単に測定ができます。

スプリアス発射または不要発射の強度

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図3 スプリアス技術基準 
許容値:
2387MHz未満 2.5μW/MHz以下 
2387MHz以上 2400MHz未満  25μW/MHz以下 
2483.5MHz超 2496.5MHz以下 25μW/MHz以下 
2496.5MHz超        2.5μW/MHz以下

 スペアナを使って、30MHz〜搬送波周波数の5倍以上までの周波数の範囲で、スプリアス発射を測定します。よってスペアナは、30MHz〜約13GHzまでの周波数レンジを持ったものが必要です。デバイスはPN信号で変調し連続送信状態にします。上記のように、周波数範囲によって許容値が異なりますので、実際にはいくつかの帯域に分けて下記の手順で測定します。

 (1)広範囲でスプリアス探索

 (2)見つかったスプリアスにズームイン

 (3)ゼロスパンにして1MHz当たりの平均電力を測定

 (1)で許容値を満たしていればここで終わりですが、満たしていなければ(2)、(3)と続けて測定していきます。(2)では、(1)で見つけたスプリアスに対して、徐々にスパンを狭めながらズームインし、より正確なスプリアス周波数を求めます(スペアナは設定しているスパンが狭いほど、周波数読み取り確度が良くなります)。さらに(3)で、(2)で求めたスプリアス周波数においてゼロスパンに設定し、最終的なスプリアスの1MHz当たりの平均電力を取得します。結果は周波数区分ごとに最大のスプリアス1波を、μW/MHz単位で周波数と一緒に表示します。

 (1)(2)(3)の各プロセスでとスペアナの設定変更が必要ですし、特にバースト波の場合はバースト間隔に応じた掃引時間も必要ですので、ほかの項目に比べると時間と手間のかかる試験といえます。

空中線電力の偏差

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図4 空中線電力 
許容値:10mW/MHz 
許容偏差 +20%、-80% 
※偏差はリニアであることに注意!

 ◆◇第3回◆でも説明しましたが、技適準拠の測定には、アナログタイプの掃引型スペアナとアベレージ・パワーメーターを組み合わせて使用します。この場合、あらかじめスペアナのRF入力〜IF出力の経路損失を、標準信号発生器(以下、SG)を使用して構成しておく必要があります。デバイスはPN信号で変調して連続送信状態とし、まずスペアナ単体で変調波のピーク周波数を見つけます。その周波数を中心に、スペアナの内蔵のフィルタを通った1MHz当たりの電力をパワーメーターで測定します。

 空中線電力の事前評価としては、最近の主流であるデジタルタイプのスペアナを単体で使用し、ゼロスパンとマーカー機能で簡易測定を行う方法もあります。この場合は、変調波のピーク周波数に合わせてゼロスパンとして、周波数分解能(RBW)を1MHzに設定し、平均電力を測定します。

副次的に発する電波などの限度

  • 許容値: 1GHz未満 4nW以下
  • 1GHz〜10GHz 20nW以下
  • 10GHz以上 20nW以下

 送信性能を見るほかの項目と違い、副次発射の測定は被試験デバイスを連続受信状態にして行います。つまり、受信状態でも不要な信号を出していないことを証明する試験になります。

 30MHz〜搬送波周波数の5倍(約13GHz)までの範囲を2〜3の帯域に分けて、(スプリアス測定と同じように)スペアナで探索とゼロスパンによる詳細測定を行います。探索で見つかった最大値が、許容値の10分1を超えた場合に、詳細測定が必要になります。

  • 送信空中線絶対利得 許容値: 12.14dBi以下(等価等方輻射電力 
    22.14dBm以下)
  • 送信空中線の主輻射の角度幅 
    許容値:360/A 
    A=等価等方輻射電力/10の(12.14/10)乗(Aが1未満のときはA=1)

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図5 送信空中線絶対利得と主輻射の角度幅

 等価等方輻射電力が12.14dBmを超える場合に、6面吸収電波暗室内で測定します(送信空中線絶対利得はアンテナ端子付き設備のみの試験です)。アンテナ、スペアナ(送信空中線絶対利得はSGも)を用意し、1.5m以上の高さ、3mの距離で図5のように向かい合わせます。

※これらの試験は、各空中線を調整しながら行います。詳しいセットアップや手順は別表を参照してください。

 被試験デバイスは、送信空中線絶対利得の場合はPN信号で変調、送信空中線の主輻射の角度幅の場合は無変調、といった連続送信状態にします。スペアナはゼロスパンにして信号を待ち受けます。

 送信空中線絶対利得では、まずデバイスと対向させたときにスペアナが表示した電力の最大値と一致するよう、置換用空中線(SGの信号)の出力を調整します。そのときのSGの表示レベルから、等価等方輻射電力を求めます。

 送信空中線の主輻射の角度幅は、先に測定した等価等方輻射電力を用いて許容される主輻射の角度を算出します。デバイス側を回転、傾斜させ、この角度を除く輻射角で、最大電力から3dB以上受信電力が低下していることを確認します。

まとめ

 さて、全5回でZigBeeの物理層評価について分かりやすく解説し、測定の基本を理解していただくという目的で連載してきましたが、いかがでしたでしょうか。回を重ねるごとに少しずつディープな測定の世界に足を踏み入れてきた気もしますが、今後皆さまがZigBeeの物理層評価に直面したときの参考になれば幸いです。

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