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加速するITSの進化プローブ情報とEVで“エコシフト”(4/4 ページ)

ITSとは、ITを自動車に適用することにより、自動車の安全性や利便性、環境性能を高めるシステムの総称である。本稿では、まず、国内、米国、欧州におけるITSに関する取り組みについて、無線通信技術の規格化の状況を中心にまとめる。そして、今後ITSが進化していく上で重要な役割を果たすであろう、プローブ情報と電気自動車との関係性について紹介する。

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パブリックセンターに集約

 現在、上述したプローブ情報を用いた渋滞予測による燃費向上の効果を、日本全体に広げようという動きが出始めている。

 ITS Japanは、自動車メーカーのサービスによって得られるプローブ情報(マイカープローブ)に加えて、タクシーなどの事業者や日本道路交通情報センター(JARTIC)などの公共事業者のプローブ情報を、公的な「パブリックセンター(仮称)」に統合するプロジェクトを進めている(図2)。


図2 プローブ情報を集約するパブリックセンター(提供:ITS Japan)
図2 プローブ情報を集約するパブリックセンター(提供:ITS Japan) 

 同センターで集約されたプローブ情報は、プローブ情報を提供した企業/団体に渡される。そして、個々のユーザーは、集約されたプローブ情報を使った、より精度の高い渋滞予測の情報などを手に入れられるようになり、最終的に燃費向上の効果が日本全体に広がるという寸法である。プローブ情報による燃費向上の効果については、以下のような試算もある。現在、東京都内を走行する自動車の平均時速は、渋滞などの影響によって20km/h程度となっている。これを、渋滞予測情報を活用することによって30km/hに向上できれば、東京都内の自動車が排出するCO2の量を30%削減できるという。

 プローブ情報の集約実現に向けての課題は多い。まず、プローブ情報は個人情報であるため、その利用法についてユーザー、ひいては国民全体にその意義を理解してもらう必要がある。パブリックセンターについても、すでに交通情報を扱っているJARTICなどが候補になるものの、まだ検討の余地がある。そして、個別の自動車からプローブ情報を取得する際の通信費の負担については、さまざまな議論を呼ぶ可能性がある。

EVの課題を解決

 プローブ情報と同じように、環境への対応という観点からITSの活用が見込まれている用途がある。対象となるのは、2009年から量産車の販売が始まった電気自動車(EV)である。

 EVの課題の1つは、1回の充電による走行距離が最大でも160km程度しか得られないことだ。また、設置されている充電スタンドの数が少なく、それらの充電スタンドがどこにあるのかわからないことも、実際にEVを利用する上で問題になる可能性が高い。

 これらの課題を解決する手段となるのがITSである。具体的には、EVに搭載するカーナビなどを使って、最寄りの充電スタンドの場所を示すなどのサービスが考えられる。実際に、日産自動車は、2010年12月に発売するEV「リーフ」に、この機能を備えたカーナビを標準で搭載する予定である。同カーナビでは、携帯電話ネットワークによる通信接続を常時行うことが可能で、その通信費は無料となる見込み。

 最寄りの充電スタンドの場所を示すサービスには、充電スタンドの情報を組み込んだ地図データが必要になる。国土交通省の国土技術政策総合研究所は、2010年度から2年間のプロジェクトで、充電スタンドに関する地図データの形式を標準化するとともに、それらのデータを一元的に管理する仕組みを構築するための取り組みを開始した。

 同研究所は、2010年度に、充電スタンドの情報に関する標準フォーマットの策定を行う。例えば、現在、地図データ上における施設の位置情報は、住所ベースや緯度/経度ベースなど、各地図ベンダーによって異なる方法で管理されている。充電スタンドの情報を共有するには、まずこの位置情報の仕様を統一しなければならない。さらに、今後設置数が急激に増えていく充電スタンドの情報を共有化するための仕組みについても検討を進める。2011年度には、これらの標準フォーマットや情報共有の仕組みを利用した実証実験を行う予定だ。

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