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中国国内生産・販売における障害とその対策〜クラボウの中国進出 いま知っておくべき中国の製造業事情(2) (3/3 ページ)

日本企業の中国進出を支援してきたベンダ企業が見た中国本土の製造業事情とは? 日本企業、中国企業の違いや市場の変化などを事例を交えて紹介していきます。

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販売面における障害と解消

 次に、中国市場における販売面で、これら日系製造業が直面する問題についても言及しておきます。その際、当社のシステムはあくまでも工場専用のものであるため、販売管理といった点は、前記のクラボウなどの納入先企業へのインタビューによるものとご理解いただきたく思います。

 こうした事情のため、すべての問題をここで把握しているかというと断言できない面もありますが、ある傾向は当社自身の経験からも読み取れると考えています。

 筆者の経験上、最初に聞く「苦労」は、本稿冒頭で言及したシステム会社のように、工場には技術者と生産者は存在するものの、販売部門や営業部門は存在しないということです。対中国製造業向けの部材提供であれば、技術的な交渉と安価な価格が設定できれば、中国企業への販売は実現できるでしょう。

 しかし、完成品を中国のコンシューマに販売しようとすれば、広い販売網やアフターサービス、自社営業体制などの確立が欠かせません。当社の場合も中国市場進出直後は、日本のお客さま自体が製品を日本で購入し、工場の設備投資の一部として中国工場に持ち込むため、当時の北京支店での技術的対応のみで十分でしたが、中国国内での現法人同士の取引が主流になるにつれ、上海に営業拠点を置かざるを得なくなりました。

 この時に重要なポイントは「現地化」です。日系製造業の工場も、次第に生産管理者が中国人となり、販売先が中国企業であればなおさらですが、同じ中国人同士でビジネスをしてもらわないとうまくいかない面もあります。日本人自体は相変わらずコストが高いので、常駐させてしまうと販売単価に影響してしまいます。

 また、先のクラボウさまの回答の中にもあるように、代金回収の難しさや契約書というカルチャーがあまり浸透していない社会、製品の特許や著作権意識が不十分という現地事情の中では、日本と同様の商習慣は成り立ちません。

 購買責任者は、価格交渉よりも「支払わないこと」で評価されるという企業もあるため、日本的な感覚でビジネスを動かすことは至極困難です。基本的な対処としては、販売側の規約を厳格にするとともに、口頭の商談であってもICレコーダなどで録音して記録を残すようにすることになります。

図4 当社ユーザーアンケートによる内部販売シフトにおける障害理由(値:%)
図4 当社ユーザーアンケートによる内部販売シフトにおける障害理由(値:%)

 図4に示した当社の中国ユーザー(日系製造業約50社)に対するアンケートでも、こうした課題を裏付けるように、問題点の大きさが工場内部の問題よりは、価格や販売網といった外部体制の確立に苦労していることが読み取れます。

 また、工場生産の障害理由で一番大きいのは、資材手配です。QCDという日本の製造業では当たり前の意識が、中国ではまだまだ未発達だと感じます。

 筆者が資材担当者にインタビューしても、「とにかく取り引きしてみるしかない。企業の与信管理などの調査機関よりは、同業他社の口コミの方が正確な情報」という意見が多くあります。

今後の中国市場の日系製造業

 以上のように、日本の商習慣に慣れた企業が中国市場に進出していくことは非常に大きな困難を伴います。しかし、困難を伴いながらも、縮小傾向にある日本市場から拡大する中国市場に進出していかなければ、日本の製造業の明日はありません。この事情は、ソフトウェア製造業としての当社にとっても身につまされる現実なのです。

 当社の経験でいえば、市場に合わせるといっても原則は崩さないことです。価格だけで勝負していては、廉価な中国製品には勝てません。

 インタビューの中にもあったように、中国は人口も市場規模も巨大な国です。どの所得ゾーンに合わせて、そのエリアで勝ち組になるのでしょうか?

 上海万博の開催を迎え、すでに中国は今年中に日本を抜き、世界第2位の経済国になろうとしているといいます。中国で生き残るためには、残された時間は多くない。次回は、こうした中国市場の中での日系製造業の特有の問題(アドバンテージとデメリット)を生かした中国生産の方向性について、議論を深めていきたいと思います。


著者略歴

アスプローバ株式会社
上海総経理 藤井賢一郎(ふじい けんいちろう)


日本の半導体工場にて製造管理システムを構築。ユーザーSEの経験を生かして、生産管理パッケージソフトウェアの営業として、一貫して製造業のお客さまに基幹システムを提案。Asprovaでは、パートナーのコンサルタント営業時代に、日本・中国を含む300社のお客さまに生産スケジューラを導入した経験を持つ。




海外の現地法人は? アジアの市場の動向は?:「海外生産」コーナー

大手だけでなく、独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。



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