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LED照明の光学設計LED照明設計の基礎(5)(3/3 ページ)

照明機器の機能は「照らす」こと。LED照明ではLEDから出た光の方向を制御し、目的とする光を得るための光学設計が重要だ

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照明機器設計と最適化

 もう少し難しい例を考えてみましょう。LED単体では図12の上図のような照度分布が得られているとします。中心から離れるにつれて次第に照度が弱くなっていく回転対称な照度分布です。中心付近の長方形領域内の照度分布を表示したものが図12の下図です。この領域内に入る光束を増やし、領域内の照度をなるべく一様にするようなレンズを考えましょう。

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図12 LEDのみの照度分布。下図は上図の中心付近の長方形領域で、この領域内の光束を増やし、領域内の照度分布を一様にする

 このような場合には、照明光学設計ソフトの最適化機能を使うのが便利です。まず、LED、レンズの初期形状、照射面をモデリングします。次に、レンズ形状のパラメータを最適化変数とし、入射光束が指定値以上になるように、また、照度が一様になるように指定し、最適化を実行します。図13は最適化後のレンズで、図14のような照度分布が得られます。長方形領域内の照度分布はほぼ一様になりました。また、領域内に入る効率(領域内に入る光束をLEDから出た光束で割った値)は、68%から83%に上昇しています。このような設計も最適化を使用すれば難しくはありません。

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図13 最適化後のレンズ形状
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図14 LEDとレンズを組み合わせた照度分布
長方形領域内の照度分布はほぼ一様で、領域外への光束は減少している

 初期モデルやパラメータなどを適切に設定し、最適化を実行すればほぼ自動的に設計解を得ることができます。また、夜間や休日などの時間を使って最適化を行えば、設計期間を短縮することもできます。このように、照明機器設計を行ううえで照明光学設計ソフトとその最適化機能は非常に有効なものです。

 照明光学設計ソフトと呼ばれる製品にはいくつかありますが、良いソフトを選択するためには以下の点に考慮するべきです。

操作性

 照明光学設計ソフトでは、形状の作成、光源、材質、面の光学特性、評価などの設定を行う必要があります。設計ではこれらのパラメータを何度も変更することが多くあります。そのため、パラメータの変更しやすさなどの操作性は設計しやすさに大きく影響します。では、ソフトを購入する前に、そのソフトの操作性を知るにはどうしたらよいでしょうか。それには、試用版を借りて実際に操作してみるのが一番良い方法です。購入を検討しているものと同機能の試用版を使って操作性や自分がやりたいシミュレーションができるのか確認してください。試用しないで導入したら結局使いにくくて無駄になってしまったという話も聞きます。

導入容易性

 これまで使ったことがないソフトを導入してすぐに使いこなせるのか不安に思う人も多いでしょう。ほとんどの照明光学設計ソフトは海外製のため余計とっつきにくく感じると思います。導入のハードルを下げるために、ソフトの日本語化、日本語マニュアルの提供、日本語でのサポートなどが役に立ちます。サポートは回答の質、回答までの時間のどちらも重要です。

高速性

 ほとんどの照明光学設計ソフトはモンテカルロ法によって照度などの値を算出します。モンテカルロ法では計算精度は光線本数に依存するため、非常に大量の光線追跡を行う必要があります。そのため、1回のシミュレーション時間が数分のものから数時間かかるようなものまであります。このような理由から、高速にシミュレーションできることも重要です。最近のPCには複数のCPU(コア)が搭載されているので、複数のCPUを同時に使って計算すれば、そのCPU数にほぼ比例したシミュレーションスピードが得られます。

安定性

 設計ではパラメータを少し変える→シミュレーション→評価→パラメータに反映というサイクルを何度も繰り返します。そのため、長時間安定してソフトが動く必要があります。

最適化

 上で述べたように最適化機能は照明機器設計においてとても有効なものです。しかし、最適化機能搭載と銘打っていても、その機能はソフトによって千差万別です。以下の点に注意する必要があります。

  • 収束性

 1回のシミュレーションに時間がかかるため、なるべく少ない試行回数で最適解を見つける必要があります。最適化エンジンの出来の違いが最も表れるところです。

  • 統計誤差

 モンテカルロ法で評価を行うため、評価結果には統計誤差が含まれます。そのため、本当に改善しているのか、統計誤差のせいでたまたまそう見えるのかが分かりません。統計誤差の影響が大きくなったら自動的に最適化を停止する仕組みが必要です。

おわりに

 これまでの連載で、LED照明機器設計を行うに当たって考慮すべきことについて、熱対策、回路設計、光学設計の3つのテーマについて解説してきました。LED照明機器を設計するにはLEDに適した設計を行うこと、その設計にはシミュレーションソフトが有効であることがお分かりいただけたでしょうか。

 やみくもに試作を繰り返すのではなく、シミュレーションで原因を探りながら効率的に設計を行えば、試作回数を減らすことができ、試作費用の低減、設計期間の短縮につながります。ぜひ、シミュレーションを使いこなして、よりよいLED照明機器を設計してください。

▼参考情報

 下記サイトでは、LEDチップや、LEDを使った照明機器設計などのシミュレーションについて、熱対策も含めて情報を提供しています。

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