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意思決定力のある“学習する組織”の構築セールス&オペレーションズ・プランニングの方法論(5)(2/3 ページ)

本稿では、日本企業の経営者が直面している重要な経営課題として、在庫をめぐるバリューチェーン内の不協和音と、団塊の世代の退職やグローバル化による組織学習の問題を取り上げ、S&OPプロセスを使ってどのように解決するかについてご紹介します。

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バリューチェーン内の不協和音と組織学習の問題に役立つ2つのチェックリスト

 コミュニケーションの向上による不協和音の解消と学習する組織に向けた方向性を示唆するものとして、2つのチェックリストを見てみることにしましょう。

優柔不断な文化を打破する組織運営メカニズム

「対話の質」の重要性

 まず、ラム・チャランは、対話こそが知識労働者の生産性と育成にとって最も重要な要素であるとして、「対話の質」の重要性を説いています(注)。

 そして、バリューチェーン内の不協和音に代表されるような「優柔不断で意思決定のできない文化」を打破するためのステップとして、

  • オープンで正直、そして意思決定を導く「対話スタイル」の確立
  • 率直な対話が成される「組織運営メカニズム(経営委員会や戦略レビュー会議など)」の確立
  • フォロースルー(計画の実施)とフィードバック

の3つを提案しています。


注:ラム・チャラン(Ram Charan)氏は元ハーバードビジネススクール教授、経営コンサルタント。ここで参照しているのは、参考文献2ラム・チャラン著「意思決定をアクションにつなげるメカニズム:対話が組織の実行力を高める」『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2002年1月号、原著は"Conquering a Culture of Indecision", Harvard Business School Publishing Corp., Apr. 2001。


優柔不断な文化の変革のためのチェックリスト

 チャラン氏はまた、同じ文章の中で、情報を共有し、対立を直視し、さらに対立を解決して意思決定を行うことのできる組織となるために、リーダーは表1のチェックリストを確認するよう提案しています。

チェック 項目 要素(筆者追加)
組織運営メカニズムは、どれほど強固で、どれほど効果的か 効果的
組織運営メカニズムは、相互にどれほど強く結び付いているか 統合
組織運営メカニズムは、正しい人材と適切な頻度で開催されているか メンバーと頻度
組織運営メカニズムには、一定のリズムがあり、一貫性をもって運営されているか フォーマル(公式)
フォロースルーが、組み込まれているか アクション・プラン
報酬とペナルティが意思決定を導く対話の成果と明確に結び付いているか モニタリングとレビュー
表1 優柔不断な文化を変革するためのチェックリスト
(参考文献2を基に、筆者が加工、編集した)

 読者の組織は、表1の要件を満たす、バリューチェーンの不協和音を解消し、製造業の破滅への負のスパイラルを回避することにできる組織運営メカニズムが確立されているでしょうか。

「学習する組織」に求められる要件

学習する組織の3つの要件

 次に、D. A. ガービンらによれば、組織が、学習したり、環境適応したりするうえで欠かせない要因として、次の3つを挙げています(注)。

組織学習を支える環境 気軽に意見をいえる、反対意見や異なる価値観を認める、新たなアイデアを受け入れる、内省の時間を持ち得る環境

学習プロセスと学習行動 学習プロセスには、情報の生成、収集、解釈、そして普及を含む

学習を増進するリーダー行動 積極的に質問し、耳を傾け、対話や議論を促すリーダー


注:参考文献3。D. A. ガービン(David A. Garvin)氏はハーバードビジネススクールの教授


組織学習の成熟度診断のためのチェックリスト

 ガービンらが設計した「組織学習の成熟度を評価する診断チェックリスト」の中の、「(2)学習プロセスと学習行動」の部分を、筆者が抜粋、要約したものが、表2です。

チェック チェック項目 学習プロセスと学習行動
新製品やサービスを頻繁に実験している 実験
マーケットや外部環境に関する情報を体系的に収集する 情報収集
物事の検討に当たって、建設的な対立と議論を好み、反対意見を歓迎する 分析
重要な意思決定に関する基本的な前提を頻繁に議論する
組織は研修を重視している 教育と訓練
他部門のメンバーと出会い学び、定期的に情報交換をする場が用意させている 情報の移転
重要な意思決定者に、新たな知識を迅速に伝えている
定期的にモニタリングを実施している
表2 組織学習の成熟度診断チェックリスト(「学習プロセスと学習行動」の部分)(注)

注:D. A. ガービンほか「環境、プロセス、リーダー行動から判定する学習する組織の成熟度診断法」(『ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー』2008年8月号)を参照して筆者が加工、編集したもの


 読者の皆さんの組織の学習プロセスと学習行動の成熟度はどうでしょうか?

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