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LED駆動回路設計 〜応用編〜LED照明設計の基礎(4)(2/2 ページ)

パルス幅変調方式でLEDを駆動すれば、LEDの長所を生かすことができる。今回はパルス幅変調方式を用いた駆動回路を解説

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PWM駆動回路例

 前述の降圧回路にコイル/コンデンサ/ダイオードを追加した回路を図7に示します。ここではフィードバック回路を考慮していません。LEDはフィリップスルミレッズ社のLUXEON系LXM3-PW71を使用します。LED(負荷)の前段に挿入したコイルとコンデンサは平滑回路を構成し、スイッチング動作によるパルス出力を平均化して出力します。コイル前段のダイオードは、スイッチがオフになってもコイルに電流を供給し続けるために使用します。降圧コンバータは通常、電圧変換回路として用いることが多いですが、LEDを駆動するには電圧ではなく電流を制御する必要があります。

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図7 PWM駆動回路の降圧コンバータ例

 図7で示した回路構成を確認します。パルス信号がオン、すなわちスイッチデバイスがオンの状態では入力信号→スイッチ→コイル→負荷という順に電流が流れます。また、スイッチデバイスがオフの状態では、ダイオード→コイル→負荷という順に電流が流れます。従って、コイルに流れる電流を制御することと、LEDに流れる電流を制御することは同等と考えられます。

 LXM3-PW71は、アノードとカソード間に3.0Vの電圧を印加すると約350mAの電流が流れることがデータシートから分かっています。入力電圧が12Vの場合は、パルス波のデューティ比を25%(12V×0.25=3V)に設定すれば3Vを得ることができます。スイッチング周波数を100kHzとすると、スイッチング周期は10μsとなり、パルス幅は2.5μsとなります。しかしこれは負荷が順抵抗の場合のみ成り立つ関係で、実際には負荷にLEDを用いると、流れる電流の大きさで負荷特性が変化するため、約350mAの電流を流すためにパルス幅を約3.36μsへ調整しました。回路を検証した結果を図8に示しています。

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図8 PWM駆動回路の検証結果

 LEDに流れる電流が変化すると、コイルに流れる電流にも変化が表れます。コイルを流れる電流の変化をセンサ回路で検知し、スイッチのオン時間を制御すれば、LED負荷へ流れる電流を一定に保つことが可能になります。また、PWMのデューティ比を上げれば、LEDに流れる電流を増やして光度も上げることが可能です。抵抗駆動型回路や定電流源型駆動回路に比べると、抵抗値や回路定数を変えることよりもPWMのデューティ比を変える方が効率的であり、PWM制御の利便性の高さが分かります。

 今回紹介した降圧コンバータは、LEDの駆動に必要な電圧が入力電圧より低い場合に使用します。照明器具など、用途によっては複数個のLEDを同時に駆動することがあり、その際はすべてのLEDの駆動に必要な電圧が入力電圧よりも高いことがあります。このようなケースでは、入力電圧より高い電圧を作ることができる昇圧コンバータを用います。

 LED照明においては、電力の効率利用と同時に小型化が求められています。照明器具では入力電圧をLEDの駆動電圧へ変圧するため変換ロスが発生します。この変換ロスが大きいほど熱の問題を引き起こす可能性があります。また、スイッチング周波数を高くすれば、トランスやコイルを小さくすることができ、基板を全体的に小型化できますが、半面、高いスッチング周波数によるスイッチングロスの問題、高調波の問題が発生します。従って、LEDのPWM駆動回路には高効率で部品点数が少ないことが求められます。

 また、照明器具の光度を一定に保ったり、光度を調節したりするためには、負荷電流をセンサで検知し、制御演算を行い、パルスのデューティ比を調整するフィードバック制御回路が必要です。本稿では、フィードバック制御回路について触れていませんが、電圧制御、ヒステリック制御、疑似ヒステリック制御、電流制御など多くの種類が存在します。それぞれの制御方式に長所と短所がありますが、照明器具の仕様と適用する回路方式に合わせて、適切な制御方式を選択する必要があります。

▼参考情報

 下記サイトでは、LEDチップや、LEDを使った照明機器設計などのシミュレーションについて、熱対策も含めて情報を提供しています。

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