測定/キャリブレーションプロトコルとは?:測定/キャリブレーションプロトコルXCP入門(1)(3/3 ページ)
自動車をはじめとする“制御”を伴う製品開発の測定/キャリブレーション段階で使われる汎用プロトコル「XCP」を解説する。
ASAMとは?
CCPおよびXCPは、「ASAM(Association for Standardisation of Automation and Measuring Systems)」という団体によって規格されています。このASAMは、自動車および産業機器に関する開発プラットフォームの規格化を行っております。なお、規格化された内容はASAMのWebサイトで確認できます。
CCPおよびXCPは、ASAMの持つ「AE(Automotive Electronics)」というワーキンググループの活動によって規格化されたもので「MCD」という領域に割り当てられています。このMCDという名称は“Measuremant”“Caribration”“Diagnostic”の頭文字が由来です。
ASAMにおけるCCP/XCPの位置付け
ASAMの標準規格書のStandardのAEカテゴリ中に「ASAM MCD-1 XCP」という規格書が存在しますが、これがXCPの規格書になります。CCPも同じように「ASAM MCD-1 CCP」として存在します。MCDの規格全体におけるCCP/XCPの位置付けを図5に示します。
CCP/XCPは、測定/キャリブレーションシステムであるツール側とECUとの通信プロトコルを定めたものになり、「ASAM MCD-2 MC」が以下3つの内容を持つデータベースファイルの規格になります。
- CCP/XCPの通信設定情報
CANを使う場合のCANのボーレートやメッセージIDなど - 測定値情報
測定対象のアドレス、サイズや物理値変換係数など - パラメータ情報
キャリブレーションするパラメータのアドレス、サイズや物理変換係数など
つまり、CCP/XCPはプロトコルそのものを規定し、そのプロトコルの設定や測定/キャリブレーションする対象の情報は、別途データベースファイルがあり、ツールはデータベースファイルを基にECUに対して、CCP/XCPを使ってアクセスを行います。
XCPのメリット
続いて、XCPの持つ主なメリットについて紹介します。
(1)すべてのECUを統合的に測定/キャリブレーション可能
XCPは、おのおののECUで使用するマイコンのバイトオーダー(エンディアン)や、使用できるROM/RAM容量の違いを吸収できるように考えられており、ネットワークとして使用する通信媒体が異なっていても同一のプロトコルが使用できます。これにより、すべてのECUをXCPだけで測定/キャリブレーションすることが可能です。
(2)実績のあるプロトコルを測定/キャリブレーションですぐに使える
XCPは、CCPの実績をベースに、ECUに対する測定/キャリブレーションへの要求仕様が盛り込まれています。また、プロトコルのすべてがASAMのWebサイトで公開されており、誰でも使うことができます。また、ECU側のプロトコル処理を行うソフトウェア・ドライバは、ツールメーカーによっては無償で提供されているケースもあります。
(3)ECUの動作に同期した測定が可能
一般的なECUは、センサなどの外部情報や別の処理からの入力を基に処理を行い、別の処理や外部デバイスへ出力するという決められた制御周期で繰り返す、もしくは入力の要因となる事象をトリガにして処理を行うことになります。XCPにより、この入力/出力のデータを、これら処理に同期して測定することが可能です(図6)。
測定/キャリブレーションを行うだけなら、車載ネットワーク上にあるほかのプロトコル、例えば車両診断に使われるプロトコルでも可能ですが、キャリブレーション工程において、制御に同期した測定は不可欠です。この制御に同期した測定も可能にするのがXCPというわけです。
XCPの各ネットワーク例
XCPは、ネットワークが異なっていても同じプロトコルが使用されますが、実はネットワークごとにパケット構成などが規格化されています。これを「トランスポートレイヤ規格」といい、
XCP + “on”+ ネットワーク名
というルールで、各ネットワークで動くXCPに名前が付けられています。例えば、CANで動くXCPは「XCP on CAN」となります。
最後に、XCPのネットワーク例を挙げます(表2)。
XCPのネットワーク名 | 機械的キャリブレーション |
---|---|
XCP on CAN | CANを使ったXCPとなり、CCPの機能をすべて踏襲した新しいバージョンのCCPと見なすことができます |
XCP on FlexRay | FlexRayを使ったXCPの最大の特徴としては、ネットワークにつながるECU間でLPDU(Logical Protocol Data Unit)を共用する仕様「Dynamic Band Width Management」が盛り込まれている点です |
XCP on Ethernet | 名称としてはEthernetとなりますが、Ethernetパケットを使用するのではなくTCP/IP、またはUDP/IPを使用します。実際の運用としては、直接ECUにつなぐというケースよりもECUの専用インターフェイスをXCP on Ethernetに変換して使用するケースが多くなります |
表2 XCPのネットワーク例 |
さて、今回は測定/キャリブレーションとは何か? からはじめ、プロトコル化の歴史やプロトコルの位置付け・メリット、ネットワーク例について解説しました。次回は、実際のXCPのプロトコルの概要や代表的な機能について説明します。お楽しみに!(次回に続く)
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