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測定/キャリブレーションプロトコルとは?測定/キャリブレーションプロトコルXCP入門(1)(1/3 ページ)

自動車をはじめとする“制御”を伴う製品開発の測定/キャリブレーション段階で使われる汎用プロトコル「XCP」を解説する。

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 自動車や一般産業機器のような“制御”を伴う製品開発には、「キャリブレーション」、あるいは「適合」「マッチング」と呼ばれる工程が存在します(図1)。

 この工程では、電子化された制御を行う「電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)」と、制御対象であるアクチュエータなどの「コントロールデバイス」や制御の指標を求めるための「センサ」とがつながった状態で、制御全体の最適化を行って要求定義に合わせる作業が行われます。具体的には、最適化を行うためにECUの制御乗数や制御要因パラメータなどを変更したり、変更した結果の確認を行うためにECUへアクセスしたりといった作業です。

 このECUへのアクセスを行うためのプロトコルが、「測定/キャリブレーションプロトコル」と呼ばれるものです。アクセスする側である測定/キャリブレーションツールとアクセスされる側であるECUとの間のプロトコルを規定しておくことで、異なるマイコンや異なる物理アクセス環境であっても、同一のプロトコルを使った統一した測定/キャリブレーションが可能になります。

製品開発の工程とキャリブレーション
図1 製品開発の工程とキャリブレーション
※ベクター・ジャパンの資料を基に作成

 本連載では、測定/キャリブレーションの紹介やキャリブレーションプロトコルの必要性を説明するとともに、測定とキャリブレーションのための汎用プロトコル「XCP(Universal Calibration Protocol)」のメリットやプロトコルの説明を行い、さらにはその動向や具体的な事例としてモデルベース開発およびHV(Hybrid Vehicle)/EV(Electric Vehicle)の開発におけるXCPの利用例について紹介していきます。

 というわけで、連載第1回では「測定/キャリブレーションとは何か?」からはじめ、プロトコル化やその位置付け、メリットおよびネットワーク例について説明したいと思います。

測定/キャリブレーションとは?

 そもそも“測定”とはなんでしょうか。用語の意味としては、「長さ・重さ・速さなど種々の量を器具や装置を用いて測ること」です。そして、“キャリブレーション”ですが、用語の意味としては「条件・状況などに当てはまること」になります。

 まずは、測定/キャリブレーションがどのようなものなのかを理解していただくために、キャリブレーションが機械的に行われている「キャブレーター」を例に挙げ、さらに電子化されているキャリブレーションとそのプロトコル、測定について解説します。

キャブレーターによる機械的キャリブレーション

 キャブレーターとは、内燃機関で“燃焼”を行わせるために、燃料と空気を混合させる装置のことで、適切な混合気を作り出す制御を行っています。この制御は、機械的に行われており、アクセルの入力に応じてキャブレーターが混合気の燃料と空気の配分を決定します。

 キャブレーターには、混合気の燃料と空気の配分を決めるための「ネジ」が複数付いています。それぞれのネジにより、アイドリング時やアクセル中開、全開時の混合気の配分を決定できるほか、エンジンやマフラーなどに合わせた適切な混合気を作り出すための調整が行えます。

 この調整行為そのものがキャリブレーションになります。つまり、機械的な制御装置であるキャブレーターにおいて、接続しているエンジンやマフラーなどの物理的な条件・状況に混合気を当てはめることがキャリブレーションであり、キャリブレーションを行う道具は「ネジ回し」であり、その対象はネジになります(図2)。

キャブレーターのキャリブレーション
図2 キャブレーターのキャリブレーション
※ベクター・ジャパンの資料を基に作成

ECUにおけるキャリブレーション

 前述したキャブレーターによる機械的な混合気制御および燃焼制御は、今日、電子化され、ECU内のソフトウェアによる制御に置き換わっています。かつてネジが行っていたような調整部分は、すべてソフトウェア上の「パラメータ」として扱われています。

 しかしながら、ソフトウェアによる制御に置き換わったとしても、物理的な条件・状況に応じたキャリブレーションが必要である点は変わりありません。そのため、キャリブレーションを行う道具、つまり、機械的なネジ回しの代わりになる道具が必要となります。このキャリブレーションを行うためにECUへアクセスする道具のことを「キャリブレーションツール」と呼びます。

 さらに、キャリブレーションの道具が必要であることと同時に、“道具の統一化”が必要であることも、ネジとネジ回しの機械的キャリブレーションから考えることができます。ネジ回しが、どのような機械的制御装置でも使用できることが理想であるように、異なるECUソフトウェアのパラメータを同一の道具でキャリブレーションできることが求められます。

 このように、機械的制御からECU内のソフトウェア制御に置き換えられたこと、そして、キャリブレーション工程をどのように実現すべきなのかという要求からキャリブレーションプロトコルが生まれたのです。

 表1に、機械的キャリブレーションとECUキャリブレーションの対比を示します。

機械的キャリブレーション ECUキャリブレーション
対象 ネジ ソフトウェア上のパラメータ
道具 ネジ回し キャリブレーションツール
方法 ネジを回す パラメータへのアクセスと変更
統一化 道具の物理的統一 プロトコルによる統一
表1 機械式キャリブレーションとECUのキャリブレーションとの対比表

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