ZigBee評価で欠かせない電波法の試験:ZigBeeで知る物理層測定の基礎(2)(2/2 ページ)
ZigBeeの物理層であるIEEE802.15.4と技適を測定の観点から解説。第2回は無線通信で欠かせない電波法の試験について紹介
技術基準適合証明を受けた無線設備には、「技適マーク」(画像1)が付与されます。身近な無線機器や携帯電話の裏側を確認して見てください。日本国内で使用される無線機器は、基本的にこの技適マークが付いていなければいけません。
少し脱線しますが、ここで1つクイズです。技適を受けていない(=技適マークのない)無線機を使ったらどうなるでしょうか?
答えは……「電波法違反で罰せられる」です(一部の無線機を除く)。たとえ試作機であっても、また屋内であってもアンテナを付けて空中に電波を飛ばして試験をするのはNGです。ケーブル接続での評価であれば問題ありませんが、アンテナを使用する場合は、きちんと技適証明を受けるか、シールドルーム内で試験を行うようにしてください。技適証明を受けた機器やモジュールを改造した場合も同様です。
技適は、使用する周波数帯ごとに「特定無線設備の種別」という名前でカテゴリ分けされています。2.4GHz帯を使用するZigBeeに絞って話をしますと、特定無線設備の種別は「2.4GHz帯高度化小電力データ通信システム(2,400〜2,483.5MHz)」に該当します。技適の見方や測定方法などについては別の回で紹介しますので、ここでは技適の試験内容を簡単に紹介します。
技適は、パワーと周波数の試験です。ほかの無線機器に混信や妨害を与えないことを証明しますので、主に送信機としての動作を見ることになります。信号の出力パワーや搬送波周波数のずれ、変調信号の帯域幅が規定内に収まっているか、ほかの無線に影響を与えるような不要信号が発せられていないか(スプリアス発射)、などを見ていきます。
物理層試験のまとめ
さて、ここまでのIEEE規格試験と日本の電波法・技適について整理してみますと、
IEEE802.15.4-2003――
ZigBeeのベースとなる物理層の要件
802.15.4-2003(ZigBee)の送信機および受信機としての評価
技術基準適合証明(技適)――
日本で使用するための技術基準に適合していることの証明
2.4GHz帯を使用する、(主に)送信機としての試験
ということになります。技適の部分は、使用する国によってはFCCやETSIを参照することになるでしょう。これら2つの違いは理解できましたでしょうか。
物理層測定には何が必要?
物理層の試験を行うには、下記のような測定器が必要です。
IEEEの送信機試験や技適試験には、まずスペクトラムアナライザが必須です。スペクトラムアナライザ1台で、技適の周波数の偏差、占有周波数帯幅、スプリアス測定など、またIEEEのスペクトラムマスク測定を行うことができますし、何よりも被試験デバイスから出力されている信号の状態を確認するためには欠かせません。技適の空中線電力(出力パワー)を厳密に測定するにはパワーメーターも必要です。
また、IEEEのEVMや搬送波周波数の偏差を測定するには、スペクトラムアナライザなどと併せて、O-QPSK信号を復調可能な変調解析ツールを使用します。こうした変調解析ツールは、スペクトラムアナライザ内蔵型のものや、PC上で動作するソフトウェア型のものなどがあります。ソフトウェア型の場合は、ハードウェア(スペクトラムアナライザなど)とGPIBやLANで接続して使用します。
IEEEの受信感度試験には、ZigBeeのパケット信号を出力できるベクトル信号発生器が必要です。パケット信号の中身を自由に設定できるソフトウェアがあると便利です。
次の回では、これらの測定器の基本を理解し、評価に必要なものを選別できるようになりましょう。
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