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目指せETロボコン!! ライントレースとシステム制御ETロボコンではじめるシステム制御(1)(3/3 ページ)

ETロボコン2009参戦チームが実体験を交えながら、やさしく教えるシステム制御の基礎知識。目指せETロボコン優勝!?

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システム制御の話

 システム制御の中身の話をする前に、まずはシステム制御の定義について簡単に説明します。

 システムとは、いくつかの要素で有機的に構成され、自分以外の要素に影響を与えるものといえます。制御とは「制して御する」の言葉どおり、対象に対して入力を与え、期待どおりの状態に変化させようとすることです。これらのことから、システム制御とはいくつかの要素で有機的に構成された対象に対して入力を与え、期待どおりの状態に変化させ、自分以外の要素に期待どおりの影響を与えようとすることであるといえます。

 さて、システム制御と一言でいっても、「古典制御」「現代制御」「ポスト現代制御」と、さまざまなシステム制御理論があります。まずは、以下でそれぞれのシステム制御理論を簡単に説明していきます。

古典制御

 古典制御とは、ある入力値に対する結果としての出力値という線形のシステム制御で、制御対象からの応答を評価しながら、目標値に近づけるシステム制御理論です。代表的な制御技術として、「オンオフ制御」「PID制御」があります。

現代制御

 古典制御では、入力値に対する出力値のみでシステムを制御するため、制御対象自体の“揺らぎ”による出力値の変化が考慮できません。そのため、この揺らぎが大きいものであると、システムの制御そのものが行えません。一方、現代制御は、この制御対象自体の揺らぎを「内部状態(内部変数)」としてモデル化し、このモデルを用いてシステムを制御することで、制御対象に揺らぎがあったとしても、精度良く目標値に近づけるために用意された理論です。

ポスト現代制御

 現代制御では、制御対象自体の揺らぎを考慮したシステムの制御を行いますが、それはあくまでも揺らぎを含め、すべてモデル化できる場合に限ります。しかし、実世界ではすべての制御対象の揺らぎをモデル化できるわけではなく、制御対象のパラメータの変動、構造的変化など、“不確かさ”が存在することが多いため、実際の制御対象とモデルの間に差が存在し、目標値に近づけることができない場合があります。ポスト現代制御は、このような差を考慮し、目標値に近づけるために用意された理論です。

 以上、3つのシステム制御理論について説明しましたが、特に現代制御とポスト現代制御はイメージしづらいと思います。そこで、以下に、少し具体的な例を紹介します。

 現代制御は、アポロ計画をはじめとする航空宇宙産業に適用され、成功を収めました。しかし、それを地上のほかの産業に適用したところ、なかなかうまくいきませんでした。その要因はなんでしょう? そうです、大気の流れであったり、振動であったりといった予期できない環境の変化、この不確かさが要因です。これらもまったくモデル化できないわけではありませんが、すべてを完全にモデル化することは、やはり困難でした。この現代制御だけでは補うことのできない部分を解決するために登場したシステム制御理論が、ポスト現代制御なのです。

 なお、古典制御、現代制御、ポスト現代制御という名前から、古典制御よりも現代制御、現代制御よりもポスト現代制御の方が新しく、優れたシステム制御理論だという印象を受けるかもしれませんが、それぞれのシステム制御理論に優劣はありません。制御対象の状況や制御の目的に応じて、それぞれの特性を加味しながら使い分けることが、より良い制御につながるといえます。

 さて、ここまでシステム制御理論の話をしてきましたが、システム制御理論以外の観点として、「開ループ制御」「閉ループ制御」といったシステム制御方式もあります。以降でこれらについて簡単に説明します。

開ループ制御

 開ループ制御とは、操作量(注1)に対する制御対象の状態を観測せず、目標値と制御対象の状態の偏差を操作量にフィードバックしないシステム制御手法です。具体的にイメージするために、ヒータの設定温度を25度にしたケースを考えてみてください。室温が25度を超えるまでヒータは動作し続け、室温が25度を超えるとヒータは消えます。そして、室温が25度よりも下がると、再びヒータは動作を開始します。この場合、目標値(設定温度)と制御対象の状態(室温)の偏差を、操作量(ヒータのオン/オフ)に反映・調整しません。

※注1:操作量とは、目標値と制御対象の状態との偏差を縮めるために与える入力量のこと。


閉ループ制御

 閉ループ制御とは、操作量に対する制御対象の状態を観測し、目標値と制御対象の状態の偏差を操作量にフィードバックするシステム制御手法です。具体的にイメージするために、エアコンの設定温度を25度にしたケースを考えてみてください。室温が0度だと、風量、送風の温度ともに最大になりますが、室温が25度に近づくにつれ、風量、送風の温度ともに弱まり、後は、室温を保つように制御していきます。この場合、目標値(設定温度)と制御対象の状態(室温)の偏差を、操作量(風量、送風の温度)に反映・調整します。

 私たちは以上の前提を踏まえ、ライントレースに採用するシステム制御理論を古典制御に決めました。古典制御に決めた主たる理由は、システム制御というものにまったく携わっていなかった私たちが、いきなり現代制御やポスト現代制御に取り組むには、ハードルが高過ぎると判断したためですが、ライントレースのためのシステム制御において「揺らぎがどれくらい発生するか?」が未知数であったため、まずは古典制御を用いたシステム制御で、どの程度効果があるかを見極めてみようと考えたことも理由の1つです。

 また、システム制御方式については、せっかくシステム制御を学ぶのであれば、開ループ制御、閉ループ制御のどちらにも触れてみたいと考え、古典制御における開ループ制御、閉ループ制御のそれぞれの代表的な制御技術である、オンオフ制御とPID制御を試みることにしました。連載第2回以降で、これらシステム制御について、実際の体験談を交えながら説明していきます。お楽しみに!(次回に続く)

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